猫耳ネットワーク、王都の影を捉えるにゃ!
キラの肉体が『掛け算の栄養学』で至高のフワフワへと至る一方、彼が構築した【猫耳ネットワーク】は、すでに街の全域を網羅する巨大な情報機関へと成長していた。
ある夜、キラの元に、相棒である耳欠けのボス猫が緊迫した様子で駆け込んできた。
「アニキ、大変だ。王宮から来たっていう、妙にキナ臭い人間の魔術師どもが、夜中に変な魔法陣を街の地下にある洞穴に描いてやがる。カラスの奴らが、不穏な言葉を聞き出した」
ボス猫の報告、そして中継されたカラスたちの記憶を、キラは解放された脳スペックで瞬時に統合・マッピングしていく。
(……間違いない。これはただの魔術じゃない。『街全体の生命力を一網打尽に刈り取る』ための、大規模な犠牲呪詛の回路だ)
王都の裏で蠢く、ドス黒い大人の陰謀。
普通の猫なら、あるいは前世の碧地獄で絶望し、世界を呪って引きこもっていた頃のキラなら、関わらずに逃げ出していただろう。
しかし――目の前で行われようとしている理不尽な犠牲を前に、キラの魂の最深部、一人の「人間」としての誇りが激しく警報を鳴らした。
脳裏を過るのは、前世のあの冷たくて深い絶望の記憶。そして今、自分の視界の中には、自分を信じて極上の飯をくれるレオや、慕ってくれる路地裏の猫たちがいる。
(前世の俺は無力だった。社会の底辺で、理不尽に怯えることしかできなかった)
白猫は静かに立ち上がり、夜風に長い髭を揺らした。
その双眸――すべての理を紐解く【解明の魔眼】に、かつてない冷徹で鋭い光が宿る。
(だが、今の俺には『力』がある。世界の物理法則すら支配する、最強の回路がな。……俺のテリトリーで、好き勝手やらせるかよ)
「にゃ〜お(ボス、ネットワークの総力を挙げろ。ネズミ一匹、大気の一片の動きすら逃すな)」
静かに下された白猫の絶対命令に、ボス猫は身震いしながら「御意、アニキ!」と深く頭を下げ、闇へと消えていった。最弱だった子猫が、街の命運を握る「影の支配者」として、静かに牙を研ぎ始めた。




