総大将の『警告』にゃ!
嵐が止んだとき、先ほどまで大地を揺らしていた大型魔獣の群れは、残骸すら残さず霧散していた。戦場には、武器を失い、恐怖で腰を抜かした兵士たちが立ち尽くすだけ。
静まり返った戦場に、一匹のフワフワとした純白の子猫――キラが、りなを従えてトコトコと歩み出てくる。
その瞬間、りなが小さな前足を力強く地面に踏みしだいた。
ズズズズッ! という音と共に、地面から突如として湧き出した強靭な植物の蔓が、逃げ惑おうとした兵士たち、そして指揮官の足首から胴体までを一瞬で絡め取り、大地に縫い付けた。誰も、指一本動かすことはできない。
完全なる沈黙の中、キラは指揮官の目の前に座ると、先ほどまでの愛らしさを消し去り、表情一つ変えない『真顔』で彼を射抜いた。
その瞬間、敵の指揮官の脳裏に、鼓膜を震わせるような、おそろしく冷徹で重厚な大人の男の声が直接叩き込まれる。
(……隣国の主へ告げよ。これが我が『猫の国』の、最初の、そして最後の『警告』だ)
指揮官は、あまりの威圧感に呼吸すら忘れ、ただ涙を流して震える。
(今回は誠意に免じて兵の命だけは返してやる。だが、次に対価を払わずに我が聖域の豆や魚、そして愛おしい猫たちに手を伸ばそうとするならば――その時は、お前たちの国に災いをもたらし、城を真空の塵へと変えてやろう。分かったな?)
「ひ、ひぃぃぃっ! も、申し訳ありませんでしたぁぁ!!」
キラがスッと視線を外すと、蔓は音もなく大地へと溶けて消えた。指揮官は狂ったように何度も地面に頭を打ち付け、動ける兵士たちを回収して、一目散にクモの子を散らすように逃げ帰っていった。
完璧な撃退。それは武力でねじ伏せるだけでなく、心の底から逆らう気を失わせる、絶対的な恐怖の植え付けが完了した瞬間だった。




