『王の招集』と、見えない階段
村長との対談を控えたその朝、キラはレオを伴って『猫の学校』へ向かっていた。
これから行う人間との交渉、そしてこれからの国の防衛を考えれば、まずは自分たちの後ろ盾である『猫の国』の結束を、改めて確固たるものにする必要がある。
校庭の中央に立ったキラは、目を閉じ、周囲の大気を制御し始めた。
喉の奥から放たれたのは、威嚇でも要求でもない、どこまでも深く、澄み渡るような——『王の鳴き声』だった。
キラは周囲の空気の密度を瞬時に操作し、音の波を空へと直進させる「音の道」を作り出す。大気を震わせるその音は、キラの意図を乗せて空中で増幅され、村中を包み込むような見えない共鳴となって広がった。
猫の魂に直接触れるような低周波の振動が、村の隅々にまで行き渡る。
(集え。俺の旗の下へ。我らの安寧を脅かすものに備えるのだ)
その響きが村を駆け抜けた瞬間、木の上から、屋根の隙間から、窓辺の昼寝から、数千匹の猫たちが一斉に顔を上げ、校庭へと吸い込まれていった。
整然と隊列を組み、地面に音も立てずに着地する猫たちの静寂は、この国が既にキラの完全な統治下にあることをレオに見せつけるには十分すぎた。
「レオ、これが我が国の実力だ。村長に見せる前に、まずは我々だけで『獲物』を狩りに行き、その圧倒的な連携を見せつけてやろう。あれを見れば、村長も俺たちをただの猫とは認識できなくなるはずだ」
キラの冷徹な、しかし確かな信頼を宿した言葉に、レオは力強く頷いた。
数千の猫たちが一斉にレオに向かって敬礼するように頭を下げたその瞬間、キラは再び空気を震わせ、獲物が潜む森へと向かう合図を送る。
最高にして最強の布陣。レオとキラは、数千の猫たちを従え、村長を圧倒するための「獲物」を狩るべく、森の深淵へと足を踏み入れた——。




