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転生したら子猫だった  作者: こっちのあっきー


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世界を「観る」目と、地味すぎる属性にゃ!

見習い騎士レオの部屋という、安全極まりない「拠点」と極上の飯を確保してから数週間。キラの肉体は劇的な進化を遂げていた。


泥まみれだった面影はどこにもない。今や、通りかかる誰もが思わず足を止め、そのあまりの愛らしさに息を呑むような、「完全なるふわっふわ・もっふもふの白猫」へと仕上がっていた。


だが、進化したのは外見だけではない。

至高の栄養を効率よく吸収し続けたことで、ついに子猫の脳スペックが完全に覚醒したのだ。前世の記憶や知識が、何一つノイズを起こすことなく、クリアに引き出せるようになっていた。


(……素晴らしいな。世界が、驚くほどクリアに『観える』)


駐屯地の訓練場を見下ろす高い塀の上で、キラは静かに佇んでいた。

彼は一点を凝視していない。空間全体をぼーっと眺めるように広く、ぼんやりと捉える「遠山の目」で世界を俯瞰していた。


すると、訓練をしている騎士たちの動きが、まるでコマ送りのスローモーションのように脳内に流れ込んでくる。

あの大男の重心がわずかに右に傾いた、次の瞬間に左足を踏み込み、呼吸を「吸った」――ミリ単位の未来予測が、ノータイムで完璧に演算されていく。


(前世の武道理論と、解放された脳の力。これなら、この小さな猫の体でも十分に人間を圧倒できる。……さて、問題は俺の内に宿る『魔力属性』だが)


精霊猫の幼体として目覚めた、この世界の理を操る魔力。

キラが自身の体内のエネルギー回路に意識を向けると、世界のシステムからの回答が脳内に直接響いた。


【個体名:キラ(シロ)の固有魔力属性を判定】

【属性:空気の密度、および温度の管理(大気への干渉)】


(空気の……密度と温度?)


キラは片方の肉球を持ち上げ、目の前の空間を軽くパシッと叩いてみた。

一瞬、大気がかすかに歪んだような気がしたが、派手な火柱が上がるわけでも、水球が飛び出すわけでもない。ただの空気弄り。一見すれば、あまりにも地味で、ハズレに見える属性。


だが――前世のシングルファザー時代、生き抜くためにあらゆる「科学の知恵」や物理法則を叩き込んでいたキラの頭脳が、その真価に気づいた瞬間、世界のシステムが異常な駆動音を立てた。


【――警告。個体脳内の『物理法則データ』と『魔力回路』の異常共鳴を検知】

【これより固有属性の『再定義』および『真の姿』を解放します】


ドクン、と心臓が跳ね上がる。

脳内で、前世の熱力学・流体力学の数式と、この世界の魔力回路がバチバチと凄まじい音を立てて完全に融合していく。


空気を極限まで圧縮すれば、それは鋼をも断つ「不可視の刃」となる。

温度を限界まで奪えば、あらゆる分子の運動を停止させる「絶対零度の結界」となる。

気圧の差を意図的に生み出せば、天候すら支配する「大嵐」をその手で生み出せる――。


これは現象の『結果』を起こす生ぬるい魔法ではない。すべての物理現象の『原因』そのものを直接コントロールし、世界の空間そのものを支配する神のバグ属性。


その瞬間、キラの美しい両眼が、カッと怪しく、底知れない知性の輝きを放った。


【固有特性:世界の理と大気の熱量を完全に紐解く『解明の魔眼』が覚醒しました】


さっきまでの愛らしい子猫の瞳ではない。

キラの瞳は、世界の空気の密度の歪み、熱の移動、魔力の流れ、武技の軌跡、そしてその背景にあるすべての物理法則を完璧に見通し、手玉に取るための【解明の魔眼まがん】へと変貌を遂げていた。


小さな肉球をぐっと握りしめると、魔眼の視界に映る周囲の空気がピキピキと音を立てて歪み、圧倒的な圧力が空間を支配する。


「みゃーお(なるほど。この世界、俺の勝ちだ)」


見た目は最高峰の癒やしもふもふ。しかしその双眸に宿るは、世界の理をすべて見通し、文字通り「解明」してみせる絶対的な瞳。

一人の父親だった男が、その真の力で世界の常識をひっくり返すサバイバルが、

今ここに幕を開ける。

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