第二の飢餓?『栄養バランス』の危機 にゃ!
さらに問題は住居だけに留まらなかった。
大豆と魚の供給量は足りていたが、流れ込んでくる猫の数が多すぎるあまり、今度は「特定の微量栄養素(カリウムやカルシウムなど、生体回路を維持するための栄養素)」が局所的に不足し始める。
(ふむ……ただお腹を満たすだけでは足りないな。このまま猫密度が上がり続ければ、体内の電解質バランスが崩れ、魔力回路が赤に染まって体調を崩してしまう子たちが出てくる。
栄養は単体で摂っても体に吸収されにくいけれど、大豆の成分と魚の骨のカルシウムを正しい比率で【食べ合わせる】ことで、その吸収率は飛躍的に跳ね上がる。この組み合わせの相乗効果を使って、みんなの体の調和を整え直す。……これこそが、前世で培った『掛け算の栄養学』だね)
キラが窓辺でそんな難しいことを考えながら、ちょっと険しい顔で外をにらみつけていると、トコトコと歩み寄ってきたりなが、キラの小さな白い体にそっと寄り添った。
「みゃう、お兄ちゃん、新しい子たちがみんな、お腹を空かせて寒そうにしてますの……。私、お兄ちゃんを信じてますの」
弱々しい新参の猫たちを心配そうに見つめる、りなの純粋な金色の瞳。
りなに真っ直ぐ見つめられると、キラの尖っていた気持ちが、一瞬でふんわりと丸くなってしまう。
(悪い気はしないな。この子がそう言うなら、この町を丸ごと『猫のための特別な楽園』へ作り替えてやるまでだ)
キラはフッと髭を揺らし、大人の知恵を持つ後ろ盾としての静かな決意を固めながらも、りなの頭を「なでなで」しようとして、短い前足で上手にバランスを取るのに必死になるのだった。




