『りな』の特等席と、キラの庇護欲にゃ!
キラが毎日トコトコと運ぶ『乗算スープ』のおかげで、弱々しかった小さな黒猫りなの体調は劇的に改善されつつあった。それでも相変わらず他の野良猫たちより一回り小さく、儚げな雰囲気はそのままだ。
今や、キラが路地裏の隠れ家に顔を出すと、りなは小さな白い手足をパタパタと動かして、本当に嬉しそうにトコトコと駆け寄ってくる。
「み、みゃうっ!」
りなはキラの目の前に来ると、コロンと仰向けに転がって、細い尻尾をパタパタと振った。それは「絶対に敵意はありません、お兄ちゃん大好きです」という、無条件の信頼のサインだった。
キラはそのもふもふの体をもみもみとマッサージしてやりながら、前世でただ孤独に戦い抜いていた時の、あの張り詰めた感覚がほどけていくのを感じていた。
(前世の俺は、誰にも頼れず這いずり回っていた……。だが、異世界でこの小さな命に頼られるのは、不思議と悪い気がしない。ただ頼れる後ろ盾として、俺がこの子を見ていてやるのも悪くないな)
りなはマッサージが気持ちいいのか、目を細めてゴロゴロと喉を鳴らし、キラのフワフワな白い胸毛のなかにぐいぐいと頭を押し込んできた。キラの大きな体が、りなにとっての「世界で一番安全な特等席」になっていた。
(よしよし、いい子だ。お前がその気なら、この街の誰も、どんな魔獣もお前に指一本触れさせやしない。俺が完璧な後ろ盾になって遊ぶからな)
白猫は少し誇らしげに胸を張り、りなの小さな耳の後ろを優しく毛繕いしてやるのだった。




