路地裏の隅の小さな影にゃ!
人間たちが設置した大型罠を完璧に作動させて装甲ネズミを仕留め、街の裏社会の「総大将」となったキラの元に、ネットワークの末端から小さな報告が入った。
「総大将、北通りのゴミ捨て場の隙間にさ……妙に弱々しい黒猫のガキが紛れ込んでるんです。体が小さくて、他の野良猫にいつもエサを横取りされて、もう何日もまともにもふもふの毛並みを維持できてねえみたいで……」
(自分より小さくて、弱々しい黒猫……)
その報告を聞いた瞬間、キラの胸の奥――一人の人間として生きたあの『不屈の原点』がトクンと微かに疼いた。
前世の過酷な社会の片隅で、自分が必死にやりくりして守り抜こうとしていた、あの愛おしい小さな命の記憶がどうしようもなく重なったのだ。
「にゃ〜お(ボス、案内しろ。俺が直接行く)」
キラはレオが用意してくれた極上の干し肉を器用に肉球で咥え、夜の路地裏へとトコトコと向かった。
木箱の狭い隙間。そこに、小さな黒い塊が縮こまっていた。
四肢の先だけが雪のように白い、小さな黒猫――『りな』だ。
まだ子猫の面影を残す彼女は、冷たい夜風にガタガタと震え、キラの気配を察知すると、怯えたようにさらに体を丸めて「みぃ……」と細い声で鳴いた。
キラはそれ以上近づかず、自らの眼で彼女の健康状態を静かに観察した。
(ひどい栄養失調だ。胃腸が弱り切っている。……よし、まずはこれだ)
キラは咥えていた干し肉の切れ端を、彼女の目の前へそっと優しく転がした。




