熱源の革命、最強インフラの完成にゃ!
綿花による衣服革命と、川向こうの防衛拠点の構築が進む中、キラはレオと町長を連れて、村の外れにある「焼き物や青銅器を鋳造するための窯」の視察へと歩を進めていた。
そこでキラが目にしたのは、地面に穴を掘っただけの原始的な炉と、集められた薪をただそのままくべて、黒い煙をモクモクと上げながら燃やしている職人たちの姿だった。
「総大将、これが我が村が誇る最高の窯でございます! これで兵士たちの青銅の剣や、お皿を焼いているのですよ!」
自慢げな町長だったが、キラはすぐにその熱効率の悪さを理解した。ただの薪をそのまま燃やすだけでは不完全燃焼を起こして熱が外に逃げ放題だ。これでは温度が上がらず、青銅を溶かすのが精一杯である。
キラはレオの肩の上から職人たちへ語りかけた。
「職人たちよ、そして町長。我が国の次のステップのために、熱のインフラを根本から変える。まずは、火の力を何倍にも跳ね上げる『聖なる黒き薪』――【木炭】を自前で作るぞ」
「聖なる黒き薪……? 薪をわざわざ一度黒焦げにするのですか!? そんなことをしたら、燃え尽きて灰になってしまうのでは……」
職人たちは首を傾げたが、キラは冷静に説明する。
「ただ燃やすのではない。空気を遮断した密閉空間で、木の中の水分や不純物だけをじっくりと追い出すのだ。これが『炭焼き』の仕組みだ」
キラは地面に石と泥を緻密に積み上げさせ、空気の流れをコントロールするための通気口を計算して配置した、特製の炭焼き窯を構築させた。数日後、窯を開けると――そこには、煙も出さず、叩くと金属のような高い音を立てる、美しく引き締まった『漆黒の木炭』が大量に出来上がっていた。
職人たちが恐る恐るその炭に火をつけると、煙が一切出ないばかりか、薪とは比べ物にならないほどの強烈な熱気が一瞬で周囲を支配した。
さらにキラは、「炉」そのものの構造にも手を加えた。炉の形を『縦型の筒状』に変更し、内側を耐火性の高い粘土で固めさせ、下から手動の送風機で強制的に酸素を送り込む仕組みを構築した。
すると、これまでは赤く燻るだけだった火柱が、送風の音と共に凄まじい熱の炎へと変貌を遂げた。その温度は一瞬にして高まり、青銅のインゴットが驚くべきスピードでドロドロの液体へと変わっていく。
この木炭と新型炉の完成により、青銅器の生産効率は爆発的に跳ね上がり、川向こうの防衛拠点を固めるための罠や、農業用の強固な道具が、信じられないスピードで量産され始めた。
夕暮れ時。新しく稼働した炭焼き窯の余熱の残る広場で、井戸端会議が開かれていた。
「いやぁ、シロ様! この『聖なる黒き薪』は本当に凄いですな! 煮炊きに使っても鍋の底が黒く汚れませんし、何より部屋が驚くほど暖かくなります!」
町長は新しいコットンの服を纏い、炭火で温められたスープを飲みながら、ニッコニコの笑顔を浮かべている。さらに、炭火で焼かれた魚と肉を口にした瞬間、その表情は驚愕に染まった。
「なんと……! 直火だとどうしても火の調整が難しく、すぐに焦げてしまっていたのに、これだと中までじっくりと火が通り、驚くほど美味しいではないか! ……まるで、食材そのものの旨味が閉じ込められているようだ!」
キラは小さく笑みを浮かべる。遠赤外線によるじっくりとした加熱は、素材の味を極限まで引き出すのだ。
「これなら、川向こうの砦を守る兵士たちの夜間警備も、炭火で暖を取れるからスタミナが全く落ちないぞ!」
レオも青銅の剣を磨きながら、頼もしい笑顔を見せた。そんな男たちの横で、真っ赤なリボンを揺らす小さなりなが、キラの胸毛にすりすりと甘えていた。
(よし、まずは木炭という基礎はクリアだ。だが、この大地のどこかには、もっと強力な……火を食らう『罪の黒き薪』が眠っているはず。次にそれを掘り当てた時こそ、ヤマトの真の鉄器革命が始まる)
愛おしい妹の頭を優しく撫でてやりながら、キラは至高の満足感と共に、これ以上ないほどのニッコニコの笑顔を浮かべていた。




