白い奇跡と、ヤマトの生活革命にゃ!
山の険しい崖を登った先、そこには人の背丈ほどの植物に、まるで雪が積もったかのような「真っ白でフワフワした丸い塊」が、見渡す限りに自生していた。
りなが無邪気に駆け寄り、その綿毛に触れた瞬間、まばゆい緑の力が弾け、綿花は一斉に輝き出した。この大地の恵み『綿花』が、ヤマトの地に劇的な変化をもたらすことになる。
綿の活用は、生活を根底から変えた。
第一に、衛生と医療の向上である。これまでは汚れた麻布を巻くしかなかった傷口に、清潔で吸水性の高い綿の包帯を当てることで、感染症を防ぎ、生存率を大きく引き上げた。これは産まれてくるニナの赤ちゃんの肌着としても、最高の贈り物となった。
第二に、確実な防寒である。布の間にたっぷりと綿を詰め込んだ布団や防寒着は、冬の凍えるような寒さを一掃した。これによって、住民たちは凍死の恐怖から解放されたのである。
完成したコットンの服に袖を通した町長は、その圧倒的な軽さと暖かさに涙を流した。「これが本当に、あの山に生えていた草からできたのですか……!」と、町長は狂喜乱舞する。シルクが貴族用の外交資産なら、コットンは全住民の命を救う、国そのものの宝であった。
村も大きくなり、今やヤマトはただの村と呼ぶには広大になっていた。そのため、おじいちゃんである町長は、この地の更なる発展と誇りを胸に、堂々とそう名乗りを上げているのだった。
そのお祝いの席で、キラは町長とレオを見つめ、静かながらも重い口調で語りかけた。
「町長、喜ぶのはここまでだ。これほどの富を抱え込んだ以上、外の世界の連中が必ず目を向けてくる。我がヤマトは大河に守られているが、これからは川の手前で待つのではない。対岸の防御を固め、敵を川に一歩も近づけさせない砦を築くぞ」
キラの先制防衛の進言に、レオは力強く頷いた。「確かに、川を渡らせる前に叩く備えが必要だな。すぐに騎士団を出して、対岸に守りの拠点を築く」
さらにキラは、産業についても次なる手を打っていた。
「今までは服を作るために多くの羊を飼っていたが、綿花がある今、その必要はなくなった。羊の牧畜を肉や乳製品へ切り替え、全体の栄養状態を底上げしよう。そしてレオ、これからは『鶏の養殖』を推奨する」
「鶏を養殖するのか?」
「ああ。鶏は狭い土地でも卵や肉を効率よく増やせる。安価で上質なタンパク質を確保することで、我がヤマトの戦力はより盤石なものになる」
夕暮れ時、対岸ではレオ率いる騎士団が、青銅の道具を使って頑丈な防衛拠点を築き上げていた。中では、コットンの服を着た子供たちが走り回り、養鶏場からは元気な鳴き声が響いている。
「シロちゃん、りなちゃん、本当にありがとう。お腹の子も、この暖かい布団で安心して眠れるわ」
ニナが太陽のような笑顔で、りなを優しく撫でる。りなは胸を張り、「お腹の赤ちゃん、私が守ってあげますの!」と喉を鳴らした。
鉄壁の防御、そして完璧な自給自足の基盤。ヤマトは今、世界で最も豊かで、最も攻め落とせない聖域へと進化を遂げた。
キラは腕の中で幸せそうに丸くなるりなを包み込みながら、至高の満足感と共に、穏やかな笑顔で目を細めるのだった。




