表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら子猫だった  作者: こっちのあっきー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
109/112

最強の荷車と 海の導き手たち にゃ!

木炭による火力の深化が完成したことで、ヤマトの青銅を鍛える技術はかつてない高みに達していた。影の総大将キラの瞳には、常に村の未来という壮大な絵図が描かれている。火力が安定したことで、青銅器の品質は飛躍的に向上した。しかし、キラの野望はそこでは止まらない。村の基盤をより強固にし、何よりも村人たちの体を内側から強くし、健やかな未来を約束するために必要な【海から得られる恵み】の獲得こそが、今のヤマトに課せられた最大の課題であった。

いつもの集まりで、キラはレオ、町長、そして村一番の腕を持つ職人の親方【ゴロウ】を集め、次なる企てを話した。「この国の北側から北西にかけては、常に深いモヤに覆われており、地理的に未知の領域が多い。かつてヤマトの村人も、霧の向こう側に広がる資源を求めて海辺への開拓を試みたことはあったが、あまりに苛烈な季節風や、台風がもたらす容赦ない高波にさらされ、人間が暮らすには過酷すぎる地として撤退した歴史がある。だが、今、我がヤマトにはその障壁を越える知恵と技術がある。霧の裏側には、まだ見ぬ資源が眠っているはずだ」

この国では古くから、山奥の鉱山で採れる「岩塩」を砕いて塩を確保してきた。淡いピンク色をしたその岩塩は、確かに旨味が強く食卓に欠かせないものだ。しかし、キラは冷静に未来を見据えていた。ある日の集まりで、キラは村人たちに語りかける。

「みんな、この岩塩は素晴らしい恵みだ。だが、考えてみてくれ。大昔、海が陸地に閉じ込められ、干上がってできたのがこの岩塩なんだ。つまり、地面に埋まっている分しかなく、掘り続ければいつかは尽きてしまう有限の資源なんだよ。それに比べ、海は広い。海から塩を取り出す技術さえあれば、それは尽きることのない、子や孫の代まで残せる贈り物になるんだ。岩塩は先祖からの恵みだが、これからのヤマトは海と共に生き、海から恵みを生み出す技術を確立しなければならない」

村人たちはざわめいた。岩塩こそが唯一の塩だと信じて疑わなかったからだ。しかし、レオが深く頷く。「キラの言う通りだ。岩塩の枯渇を懸念していたが、尽きることのない海から塩を得る術を確立すべきだ」

「海を治めるには、まず荷を運ぶための丈夫な足回りが必要だ。青銅の部品を組み込み、二頭の馬の力を無駄なく車輪に伝える『二頭立ての大型荷車』をこしらえる」

ゴロウはキラの構想に感激し、ニッコニコの笑顔で青銅の鎚を叩き始めた。彼は車輪が受ける衝撃を和らげるための工夫を金属で形にし、どんな荒地でも荷物を揺らさない、頑丈でしなやかな『高速大型荷車』を組み上げていった。「総大将、これなら岩山でも豆腐を運べるぜ!」とゴロウは自信満々に胸を叩く。彼はキラの指示通り、荷車の車軸に青銅の潤滑機構を組み込み、馬の推進力を一滴も逃さない驚異的な移動機材を作り上げた。

「ゴロウ、いいか。海辺で塩を作るために、できるだけ大きな平鍋を作ってくれ。さらに、塩を成形するための木枠や、持ち運びに便利なノブのついたパーツも荷車に積み込む。重い海水を運ぶのは効率が悪い。現地で加工した塩だけを積み込んで帰るんだ」

ゴロウは「なるほど、これなら村への戻りも軽快だな!」と合点し、鍛え上げた鍋や塩作りの道具一式を、頑丈な荷台に完璧にパッキングしていった。

荷車が完成し、次は海へ向かう仲間集めだ。

トコトコと名乗りを上げたのは、川での罠猟や魚捕りを得意とする野生児のような青年【カイ】。彼は大河の幅広な水の流れを誰よりも知っており、気配の変化を読む才があった。「海の風、俺にはまだ馴染みがないが、魚の泳ぐ道なら必ず見つけてやる!」とカイは意気込む。

続いて現れたのは、褐色の肌を持つナミであった。ナミは、ヤマトとは反対側、険しい山脈を隔てた西南の地で海と共に生きる『海の一族』の出身だ。過去の高波で故郷を失い、押し寄せる荒波の中で意識を失い、死の淵を彷徨いながら流木にしがみついていた末に、ヤマトの開拓隊に救い上げられた彼女には、かつて故郷の海で作っていた塩の記憶と、海そのものへの深い愛着だけが残っていた。ナミは自信を持って言った。「岩塩もいいけど、海から作る塩は煮詰め方ひとつで味を変えられる。ミネラルたっぷりで、工夫次第でどんな料理も化けるよ。あたしが海への道を案内する」

(職人のゴロウ、猟師のカイ、ナミか。ナミの記憶にある海の風景と知識があれば、未知の海も必ずやヤマトの糧にできる)

キラは髭を揺らし、新メンバーたちの内に秘めた高い志と才覚を冷静に捉え、その可能性に確かな手応えを感じていた。ゴロウが鍛え上げた馬車の頑丈さと、精鋭たちが組み合わさることで、ヤマトの物流網は盤石なものになると確信していた。一行は数日分の食料と寝具を荷車に積み込み、霧の向こう側に広がる未知の地へと旅立つ覚悟を固めたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ