山からのSOSと、りなの耳ピコにゃ!
王都との条約も無事に結ばれ、ヤマトの村がさらなる活気に沸いていたある日のこと。
村の養殖場では、手塩にかけて育てた魚たちが驚くほど元気に育ち、池からあふれんばかりに跳ね回っていた。
「今日は特別だ。裏山で採れたマッシュルームとトマトでソースを作った。魚のフィッシュフライには、村のじゃがいもを細切りにして揚げたフライドポテトを添える」
キラはレオたちにそう告げた。調理場ではニナが、パン屋で余ったパンを砕いた特製パン粉を丁寧に衣へまぶし、魚をカリッと揚げている。
「いいか、よく聞け。魚の『イノシン酸』、トマトの『グルタミン酸』、そしてマッシュルームの『グアニル酸』。この三つが出会った時、旨味は劇的な掛け算となって舌を支配する。さらにポテトの炭水化物が合わさることで、エネルギーの持続力が段違いになるんだ」
キラは説明を続け、ニナは慣れた手つきで、揚げたてのフィッシュとポテトを、パン屋で焼いた薄切りパンの間に挟んでいく。
「レオ、そのまま食うのもいいが、パンに挟んでサンドイッチにするのが一番だ。ニナ、レオにハーブを添えてやってくれ」
ニナはニッコリと微笑み、ハーブを散らしたばかりのサンドイッチをレオに手渡した。
「はい、レオさん。キラちゃんが教えてくれた通り、栄養たっぷりに仕上げましたよ。いっぱい食べて、しっかり力をつけてくださいね」
レオたちは、トマトの酸味、魚の旨味、マッシュルームのコク、そしてパンの甘みが絡み合う至高のサンドイッチを口に含み、全身に圧倒的なエネルギーが満ち溢れるのを感じていた。
その時、キラの隣にいた漆黒のお姫様・りなが、ピコピコと耳を動かして山の方角をじっと見つめた。
「お兄ちゃん、山の奥の方から、とってもフワフワで、でもちょっぴり寒がっている新しい植物さんの声が聞こえます」
りなが感知したのは、これまで誰も足を踏み入れたことのない未知のエリアからの信号だった。
(ほう、養殖場の魚と、旨味を極めたフィッシュ・アンド・チップスサンドでエネルギーは十分だ。りながそこまで言うなら、ただの雑草ではなさそうだな。少年、プロテイン騎士団を動かすぞ。山の奥へ調査に向かう)
キラの冷静な達人の目が光り、ニナに見送られながら、キラとりな、そしてレオたちは、手入れの行き届いた養殖場を横目に、馬を引いて山の奥深くへと向かった。




