神様! 秘匿開示は任意ですよね!
あれ? セシリアさんが固まってる。というよりなんか、都合が悪そうな顔をしていらっしゃる?
「帝国は魔力を武器に転用することには抵抗はないわ。でも、その技術は……」
あっ! そういう事か! セシリアさんはこれが事実だと困るんだ! きちんと説明しないとね!
「はい。王国の物ですよね。」
そう。これ。王国のもの。この世界で魔力って力を魔石ってものに封じ込める、もしくは抽出する技術を開発したのは王国だから、王国が魔力技術の最先端。だけど武器への転用をすぐに考えるのは戦争がしたい帝国側。だから。
「でも私、言いましたよね。帝国式火薬銃V1、の魔力バージョンって。」
セシリアさんの中では辻褄はあってくるはず。セシリアさんが、今もきちんと王国のスパイをしてるなら。
「ええ。帝国が火薬銃を作った。火薬は取り扱いが難しくて使えれば強い武器が作れるかもしれない、とはされていた。それをようやく、帝国は完成させた。これは王国も握っている情報。火薬を使用した銃は完成させていたとしてもおかしくはない。何なら王国ではリボルバー銃を作ってるしね。試作段階ではあるけれど。」
そう。試作段階の武器がちょうど今の時期、あるんだよね。
「ええ。王国式リボルバー銃120型のことですよね。でもそれって機構が火薬じゃなくて魔石だし、魔石に込めた魔力の消費量の問題でどうしようかな~ って感じだったはず!」
「え、ええ……どうして、その技術を知っているのか、は一旦置いておくことにするわ。」
これは引かれてもしょうがないよね。この情報って軍事機密レベルの話かもしれないからね。でもこれぐらいは持ってる、ってのを見せないと、これから続ける話に信憑性がなくなっちゃうし、断片的に情報を持っている証明にもならない。
しかもこの情報って、私にとっては出したところで何も起きない安全な情報だから出せる。私が一番警戒しないといけないのは『ゼーレン事変が帝国勝利で終わる』こと。神様が常人なら(?)公式設定を歪めるようなシナリオにはしないはず。TRPGの基本は公式設定の世界で冒険だもん。現時点でのアルバーン戦記TRPG2.0の舞台は126年。それを改変するようなことはTRPG民はしない。きっと。シナリオ改変はしても公式設定を歪めることはしないはず。多分。そもそもまったく違う舞台でシステム流用して、ならアルバーン戦記の舞台であるゼーレンなんて場所にはPC配置、いや、今回はPL配置だけど、する理由がない。おそらく。その上で、この武器情報は、戦局に大きく関わらない!
「それで。どうして、火薬銃、ではなくて魔力バージョンが使われる、なの? 根拠があるわよね?」
「それはですね……帝国はゼーレンの森が貴重だと考えているからです。」
「え?」
意外だなぁ……セシリアさん、帝国軍の利益、とかはあまり考えたことないのかな? まあ、王国の人で、公国軍に所属してる、って立場だとどうしてもそうなるかな?
私がこの情報が帝国通の裏付けにできると考えた最大の理由! これ、帝国軍の考え方にあるんだよね。実は公国を攻める理由は領土。これはがっつり、ルルブに書いてあることで天然要塞になる領土欲しさに攻めてるんだよね。普通の場所を占領しても守りを気にして固めなくちゃいけない。帝国は王国から占領した領土を固めながら勢力を拡大している側。でも、大陸の半分近くを占領した現在、大分無理が出てる。だから占領したら即、資源調達ができて防衛もできる「使える」領土は貴重。森を焼いてしまったら資源がなくなる上、相手の進軍を遮る障害物もなくなってしまう。だから慎重に慎重に公国を攻めてた。これを端的にすると……
「だって占領した領地が使えない場所だったら、今の帝国苦しいでしょ? ただでさえ、王国とやり合ってて苦しいのに。だから森ごと欲しいってのはおかしくないですよね?」
「確かに、言われてみれば、そうね。森で火薬……引火しやすい物質を使えば焼失リスクがある。森も手に入れたい。それであれば、火薬使用を控えたい気持ちはすごくよくわかるわ。」
うんうん。根拠を伝えればセシリアさんでもこう考えるぐらいには筋通ってるよね。さらに私はこれを裏付ける記述があることを知ってる。ゼーレンの森での交戦時に、森の保全のために火薬を使用を避けるために王国の技術を利用したこともある。というものがあったんだよね。でも、今、帝国に関する情報整理してみると帝国と公国が「森」で大規模な戦いしてるのって、少なくともルルブ年表では『第二次ゼーレン事変』しかない。
「でもどうして貴方は帝国が王国の技術を利用すると考えるの? 他国の技術を試験もしないまま導入するリスク。帝国が考慮していないわけがないと思うのだけど。」
「それは流石にわからないよ。公国の人全部知らなかったのと一緒。私は断片的にしか知らないから。」
そう。理由は私もわかってない。でも、技術を使う事だけは私の中では確定事項。ちょっと突飛かもしれないけどこの第二次ゼーレン事変の121年って年が大事なんだよね。これは帝国の武器の名前を思い出す時に一緒に思い出したんだけど、王国の武具の命名規則は年号を取り入れる形式をとってる。他の国のはいつ作られたのかはわからないけど王国だけははっきり作られた時期が武器名でわかるんだよね。で。リボルバー銃が120型。つまり。120年に作られたものってこと。ここで戻ってゼーレンの森での交戦、って記述に戻ると。帝国が森を燃やさないため、王国の技術を使ってどうやって火薬を使わない方法で攻めたのか。……魔力で発射するこのリボルバー銃の技術を利用した、しかありえない! ってわけ!
「王国の最新技術を知った上で、帝国が利用すると考えている……いや、帝国が盗んだことを知っているから帝国通なだけに王国技術を知っている、なら……」
そうそう! この情報の出し方ならセシリアさんはそう組み立ててくれるって思ったよ! セシリアさんの真剣なまなざし素敵。惚れる。じゃなかった。スパイならではの発想力で私の正体を作り上げて。
でも。我ながらちょっと突飛だったかな? これが当たってれば『第二次ゼーレン事変』で10万の兵を使ったのに勝てなかった理由にはなるんだよね。『この新兵器は失敗だったからこそ、帝国軍は第二次ゼーレン事変で負けた』ってオチが用意できるから。実際、TRPGとして使える武器一覧に『帝国式火薬銃V1』とその亜種は全部、火薬を使うって記述があって、帝国製の銃は他にはない。公国はそもそも銃を採用していないみたいで、残る銃は王国製でここでようやく魔力動力武器。だからデータ上は帝国軍は魔力動力の銃の開発には失敗してるはずなんだよ。だから事情はどうあれ、技術開発を導入する理由があって導入して失敗して負けた。私はそう思ってる情報通、で通すのが正解!
「……わかったわ。貴方が帝国について詳しい、放浪民、で、一旦は納得しておくわ。何で、についても結果的に必要性は低いから同じくよ。でも……」
「わかってますよ。怪しい侵入者には違いないから監視は外せない、ですよね。それで充分です! 私、セシリアさんの事を信頼してます! だからその判断に従います!」
でも多分、この情報開示ってちょっとまずいんだよね。私がどうしてここに居るのかって最大の謎が解けてないのにこれを出してもし正体がばれたらどうなるのか、っていうのが全然考慮できてない。いわゆる秘匿開示? みたいな状態なんだよね。どういうリスクがあるか書いてないから開示してもいい秘匿かもわからないし?
それに、歴史に与える影響的にも問題はあるかもしれない。辻褄あうように情報出しはしたけど、これがあっていてもいなくっても、セシリアさんから王国に情報が渡る可能性ができたことで、帝国と公国が争う中に王国が介入する余地を与えてしまった、みたいなところがある。
だけど、これって私が考えなくちゃいけないことなのかな? そもそも『第二次ゼーレン事変』がどういうオチで終わったのか私は全然知らないから、完全に歴史通りの形に終わらせるのが目標だったら無理ゲーなんだよ。神様。それしたいんならそもそも私は存在していちゃいけないじゃん。存在しちゃう限り、私だって死にたくない。だからさ、介入によって変化しちゃう部分については神様が悪いよ。PCだったらRPとして知らないふりして進めるのが正規。それなのにさ、PCじゃなくてPLぶち込んでNPC依存で生き延びなさいってシナリオ構成・進行してるわけでしょ? これさ、どう考えても神様(GM)が悪い。
そうだよ! 私、ここで死んだらどうなるかって条件とかも一切聞いてない。だったら生き延びることがシナリオ目標でその目標のために場合によっては異世界から来ましたって秘匿開示だってできるはずなんだよね。秘匿はあくまで秘匿であって目標じゃないもん。どこからどこまで秘匿情報で、どこからどこまでが公開情報なのか! 事前説明しない神様がぜーんぶ悪い!
「貴方は、どうしてほしい?」
え? セシリアさん? 突然どうしました!? 何で微笑んでいるんですか? その女神のような美しい顔でそんな微笑みを見せられたら私、死んじゃいます!
「貴方の話した情報は、私が本国……アルバーン王国ね。そこに報告するべき内容。特に、既に帝国軍が王国軍の技術を奪取し、試作段階に入っていること。これは今すぐにでも送らなければいけない。でも。貴方はここで話した。……貴方の話通りだとすれば……貴方は『奪取された技術』の価値を大分、下に見ていることになる。それは何故か……戦力換算しなかったのは何故か……それを考えさせてもらったわ。」
うん? 私、そんなに奪取された技術を下にみたような発言してました? 全部ルルブからの考察なんですけど?
「貴方、帝国軍が王国軍から奪取した技術が不完全だから失敗に終わる。そう、思ったんでしょう?」
おおおおおお!? セシリアさん、その結論なんですか!? 私に対する信頼度高くないですか!? それ、私が帝国軍の程度を把握してる人って評価が固まってないとできない結論ですよ! そもそも私は失敗すると思ってはいるんですけど、奪取した技術自体が不完全、なんて一言も言ってない気がするんですけど!!
「貴方の見解通りなら、ちょっとした帝国通にすら不完全だって思われる技術だから早々に撤退するか、改善を行うべきと進言するために報告を入れるべき事案よ。」
あ。そっか! 王国側からしてみれば技術自体の練度問題になるから報告必須なのか!! でも、あれ。どうしたの、セシリアさん。困った顔で。
「でも正直、今の状況で王国へ報告を飛ばすのは至難の業。それでも報告をすべきかどうか。……本来であれば、飛ばすのが正解。でも貴方を信頼するのであれば、それを使った帝国は失敗に終わる……つまり、奪われた情報を使われていたけど、帝国が不完全であることを証明してくれたからこれを見て進めるべき、といっても問題はない情報にはなってるのよ。」
な、なるほど? 確かに。今報告して、何が悪いか探るのは大事だけど、別に被害が出るわけじゃないのなら帝国がどう失敗するのか見て、その失敗ごと報告してしまっても問題はない話なのね。スパイとして誠実に動くかどうか、だけの話って事。
「だからね、私は今、こう考えているの。今、公国にばれる危険を冒して報告するよりも安全に飛ばせるようになってから、事後報告でもよい。事後報告で何が起きたかまで含めて報告した方が価値がある。……でもこれは、貴方がどれだけ、この情報に自信があるかに掛かってる。」
ああ、そうか……これ、仮に帝国が成功しちゃった場合、セシリアさんは責任を問われちゃう……セシリアさんも死んじゃう可能性があるんだ……だから私が、この情報をどれだけ信頼しているか。をどうしても聞きたいんだ。
うん。わかったよ。セシリアさん。私、セシリアさんのためにできること、するよ。
何で神様が私をここに連れてきたのかは正直よくわからない。けど、少なくとも私はセシリアさんを巻き込んだ。だって、私がいなければセシリアさんって多分、このゼーレン事変に深く関わるような事、なかったんじゃないかって思うんだ。私がいたからリディアさんに目をつけられて、関わらざる得なくなってしまった。それは、責任取った方がいいと思う。この世界は今、間違いなく私にとっては現実で、そして存在してる。そこで出会ったセシリアさんは私にとって、間違いなく友達だって思える存在。そんな人を困らせたくないし、一緒に生き延びたい。何で連れてこられたかとかは後で考える。今は、一緒に生きよう。セシリアさん。だからちょっと難しい事、言うよ。
「事後報告でいいと思う。失敗に終わるから。ううん。絶対にそうなるようにするから!」
「絶対に、そうなるようにする?」
いつものセシリアさんの顔に戻った! うんうん。ちょっと困り顔ぐらいが安心する! でもこれ、話したら多分セシリアさん仰天するよね。びっくりしちゃうよね。でも、でもこの作戦できそうなのってこの人しかいないんだ。
「そう! そのために……改めてリディアさんを連れてきて!」
「…………えええええ!?」




