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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
開戦の狼煙

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神様! このやり方なら補正くれますよね!?

 セシリアさんが私の目を真っすぐ見つめてくる。檻越しではあるんだけど。

 セシリアさんの言い分は真っ当だ。私は私の事を話してなさすぎる。だからこそ、昨日みたいなこともあるし、私を檻から出せないのはしょうがないけど、それでも。何の根拠もなくずっとこんなことしてたら疑われちゃうんだよね。セシリアさんが。

 セシリアさんにも立場がある。ルルブ(※ルールブックの略)には王国のスパイって書いてあるけど、今、この世界ではこのゼーレンで騎士として働いてる。あまり立場も高くない……よね? そういえばあまり聞いてない。でも昨日の状況を見るとゼーレンの中でも相当上のリディアさんに目をつけられちゃった。その状況で、不審人物を確保した、という名目で実質保護しておくなんて長くは続けられない。



「……」


 私、信じたいんだよね。NPCとして、じゃなくて人として。セシリアさんの事。そりゃルルブのテキストにはスパイって書いてあるよ? でもさ。この人は私の身なりを見て疑いながら、もちろん自分が危なくないように対応しつつも、私の状態のことも見ていてくれたんだよね。ここに来るまでの森の中。思い出してみれば、何だかんだで私よりも前に立って周りを警戒するようにきちんと動いててくれた。あれは捕虜だから、だけでやる行動じゃないと思うんだよね。この世界の構造を知っていればなおさら。一応、人を襲う動物、魔物って概念はあるからね。

 それだけじゃない昨日のリディアさんの襲来の時もそう。確かに私はセシリアさんの情報を人質にはしてるよ? それでもリディアさんの言い分の方が実際正しいよ。こんな奴、殺しておけばいいって。でもそれを必死に否定して庇って。テキストで庇ってくれそうだなって打算があったのは事実。だけどそれ以上のことを、セシリアさんはしてくれた。だから、テキストじゃなくて今、ここで感じたことを優先したい。


「ミコちゃん……」


 でも、異世界から来たことって信じてくれるのかな? 流石に無理だよ、って思うんだよね。私がいきなり言われても無理。むしろ信じてくれる人いたら怖い。……いや、でも昨日の感触だと下手したらリディアさんなら笑いながら一旦信じてはくれそう? いや、流石に楽観視? いずれにしても今回はセシリアさん。どう考えても一般常識の範疇で考えちゃいけないリディアさんは除外! だから……うーん……何か、何か私が情報を知っていてもおかしくないようないい話ってないかな……


「やっぱり、話せない?」


 ああ! すみません、すみません! 長考しすぎました! そうですよね、早く聞きたいですよね。片膝までついて。いいんですよ、見下ろしてくれて! 私、そういう立場ですから! わかりますよ! 私も早く言いたいんです! でもいい言い訳がないんです! 誠実にかつ、信用してもらえるような内容で話すのが難しいんです! ……いや、待てよ。昨日のやり取りをよく思い出してみよう……


「じゃあ、『鮮血の処刑人』。この単語はセシリア、貴方はどう解釈するの?」


「これもまた、帝国での活動で得た情報から、推察したのではないかと思われます!」


 そうだよ、忘れてた! この人、情報の穴埋め勝手にやるタイプのスパイさんだ!! そうだ、そうだよ! あの時、私の今までの行動からセシリアさんは、セシリアさんなりに多分こうじゃないかな? って穴埋めして、擁護してくれた! そうだ、頼ろう! それに頼ろう! 私が今この状況で出せる情報を出すだけ出して、セシリアさんにそれとなく埋めてもらおう!! そのためにはまずは私の出所をセシリアさんの中で固めてもらう!


「えっと。ちょっと持ってる情報が断片的なので。どこから話そうかなって思って。」


「記憶喪失の話は昨日も言った通り。嘘だってわかってるのよ?」


「あれ、完全な嘘ではないんですよ。私、このあたりの情報は断片的にしかないからああやって誤魔化したんです。」


 うん。このあたり、の定義がこの世界のこの時代、って大規模だけど嘘にはなってないよね!


「それがよくわからないのよね。どうしてゼーレンの森にいたの?」


「実は本当にそれはわからないんですよ。連れてこられて気づいたらあそこにいたんです!」


「誰かに攫われてきたってこと?」


「それは間違いないです。」


「そうだったの……わかったわ、一旦、どういう状況で、かは置いておくことにするわ。先に聞かないといけないことがあるから。」



 うん。これも嘘じゃない。神様にこの世界に連れてこられたって意味で。


「それで、このあたりの情報は断片的って言うのはやっぱり帝国や王国で勉強とかして?」


 ……流石スパイ。何だかんだでここで誘導入れてるよね? 少し、声のトーン落ちたし。でも引っ掛からないよ。昨日は引っ掛かったけど。ルルブでこの世界の文化はきちんと知ってる。学校とか勉強って基本上流階級しかできないから、勉強した、はアウト。だから……


「あの、私、その。お父さんとお母さんの国が違って、国籍取れなくて放浪してる身だったんです。だから公国にこっそり山越えして入ろうかなと思って……山登ったあたりから記憶がなくて。」


 そう。この世界。国籍は基本的に王国と帝国どっちかもってたらどっちかに敵視される。でも商売の関係でまったく交流がないわけじゃなくって、その交流で恋愛して結婚して子供ができるととっても厄介。だから家族のために国籍を手放したり、そもそも国籍とらない人が結構いる。かといってやっぱり必要になった時に国籍とりやすい公国って森や山だから、結果、国境には公国で国境越えしようとした人たち狙ってる族がいるんだよね。だからこの言い方をすれば。


「なるほど。それなら帝国の情報を伝え聞くぐらいはありそうだし、連れ去られてきた状況も見えるわね。あそこの山賊どもが奇襲でもしたんでしょうね。貴方の身なりなら変わった物を持っていると思って襲うのは割と筋は通るし。」


 こうやって補足してくれるってわけ。


「そうなんです! だからほら、私、何も持ってなかったでしょう!? 情報はその。ここに来る前に帝国に立ち寄って、なんか物々しい雰囲気の現場に居合わせちゃって。こっそり聞いたら10万の兵を揃えてる所なのに妙な事件が起きたとか何とかで。」


 苦しいかな~? これは昨日リディアさんが筋は通るって言ってくれたことを言語化しただけなんだけど……実際。あの反応はリディアさんは帝国領内に入って事件は起こしてるだろうし。


「でもそれはおかしくないかしら? 10万、なんて数字をただの兵士たちが知っているものかしら?」


 ですよね。その疑問は残る。でもこれはゼーレン事変の記述を使えば解決できる。


「帝国の権威がどうのって結構大きく言ってましたよ? まあ最近の話なんですけど。でも最近の話って、多分この状況じゃ公国は手に入れれないですよね? 帝国との国境は事実上封鎖状態でしょう?」


「それはそう。だけど」


「その情報をリディアさんが持ち帰ってないのは変。ですよね。」


 ここ。セシリアさんのリディアさんへの反応でおかしいなと思ったのは。セシリアさんはスパイ。リディアさんのあの言い回し。リディアさんは表向きはただの上の方の騎士のはずなんだよね。でもセシリアさんは何処か、リディアさんがそれ以外の顔を持っていることを知っている風な立ち回りをしていた。これって何故か。……これはテキストを読み解けばいける。

 セシリアさんはザメック博士を探していた人。そしてその当のザメック博士。


『ザメック博士』

 ゼーレンの軍事を支える研究家。元々王国軍に所属していたが、脱走中に帝国軍に拉致されそうになったところをゲルドに救われ、お抱えとなった。ゼーレンの最新装備は全て彼が研究開発している。基本的にゼーレンはザメックが試作武具をゼーレン防衛隊が試用した上で、実戦配備をする形式であるためその功績は大きい。


 このテキスト通りなら、セシリアさんが公国にきて一番最初に調べたのはゼーレン防衛隊の事のはず。そうなると、エリアーナ、リディア、カイという面々はセシリアさんは詳細を調査済み。何なら私の知らない追加サプリ情報までもってる可能性がある。むしろそっちの方が高い。


「……そこまで私のことは知っているって事。ええ。そうよ。その通り。遊撃や暗殺といった潜入捜査までやってるリディア様が10万という兵力で攻め入る情報を仕入れてこれていない。なのに貴方は知っていた。タイムラグだけで説明はつかない。」


 よし。セシリアさんの中では私はセシリアさんがスパイとして潜入しどこまで知っているかわかっている、情報通な放浪者、の方向でイメージが固まりつつある……はず! あと一息!


「だから昨日みたいなことになっちゃったんですよ。もしかして最近出ている『鮮血の処刑人』の仕業か、みたいな。帝国の噂。」


「リディア様が処理したつもりになっているだけで完全に消しきれてない……まあ。あるわね。」


 あとはここは何で、よりも大丈夫の理由を言って誤魔化せば……


「いずれにしても大丈夫です。10万の兵力をもってしても、ゼーレンは破られることはないです。ゼーレン防衛隊の、エリアーナさん、カイさん、リディアさんがいれば勝てます!」


「? 3人?」


「え? 何か間違ってました?」


「トーマス様は? あとはバルドとサイラス、ディオンについては貴方は何も知らないの?」



 ……はい? え? 待って。なんですかそのお名前。


「エリアーナ様とリディア様の戦力を期待する、はわかるわ。強化人間だし。でもそれを言い出したらトーマス様とバルド、サイラス、ディオンについても戦力評価しないといけないと思うの。ああ、あとはゲルド支部長もね。」


 ……強化、人間? 強化人間ですとおおおおおおお!? 知ってる! 私は、知ってるぞおおおおお! 強化人間それは!! キャラクタークリエイト段階で選択できる種族の一つ!! といっても選べるの人間と強化人間と魔族の3択だけど! アルバーン戦記TRPG2.0において、キャラクターを作成する場合! 基本的には人間で作るけど比較的帝国側のシナリオで王国の悪事を暴く、みたいな感じの時だけ初期選択として強化人間が選べる! って乃華ちゃんが言ってた。テキスト的にはこう!


『強化人間』

 魔力の力に目をつけた王国が、人間が地力で魔力を使えるように、薬物や手術などの方法で魔力を自力で生み出せるように改造した人間の事。この種族を選ぶ場合、薬や手術による副作用として次の効果の内、2つ以上を選択して作成しなければならない。


 ルルブには一応、ステータスあったけど滅茶苦茶初期ステータスが高いんだよね! でもデメリットが精神の不安定化で毎ターンダイスを振って行動できるかチェックしたり、感情の喪失でNPCと仲良くなれなかったりするとか、普通に遊ぶ上で楽しめなくなっちゃうものを2つも選ばないといけないから作りたくないなぁ……NPC用だよなぁ……って思ってたんだよね。リディアさんそれ!? そりゃヤバくもなるよ!! でもそこじゃない。そこじゃないんだ! 名前! 名前の数がオカシイ! ゲルド支部長は確かあった。トーマス? サイラス? バルド? ディオン? なんですかそのお名前? ルルブには載っていません! え? 実はこの人たち死ぬの? それだと防衛隊もヤバくないですか!?


『ファルシア公国紀ってね。ファルシア公国の裏側を徹底解剖! ってのが売りのサプリでね。歴史もそうなんだけど、キャラクターの描写がすっごい細かいんだよね。ルルブに全員載せとけ! って言いたいぐらい!』


 いや、待て待て……そうだ。我が友、乃華ちゃんはこう言ってた。ルルブには載っていないキャラクターがいると。その名前、サプリには載っているかもしれない。落ち着け。少なくとも3人とゲルド支部長は間違いなくルルブにも乗ってる存在でザメック博士も載っていることから。ザメック博士が無事ならば。おそらく護衛しているゼーレン防衛隊が壊滅ないし半壊なんてことにはならない。だってそうじゃないとセシリアさんが第二次ゼーレン事変が終わってから5年もずっとゼーレンで騎士なんてやる必要性がなくなる。だから。これについて、セシリアさんの疑問に答える方法は一つ!


「流石セシリアさん! 私はそこまで情報持ってないんですよ! 私はどちらかというと帝国通? みたいなところあるので、公国主力の人しか知らなかったんですよ~!」


「なるほど? 確かに帝国側の戦力を知っていて、かつ公国の主力を知っていればどちらが勝ちそうか、はさしが付きそうね。でもその言い分だと。私の素性をどうして知っていたのか、になるけどいいのかしら?」



 あ、セシリアさん、まだ私が嘘をついてると疑ってる。まあ実際そうだけど、この世界における立場的なものは一切嘘はついてないんだけどな……でも異世界なんて絶対に口にできないし、ごめんね。これは謝りつつもきちんと補足を入れよう……


「そうですよね。色々無理がありますよね。でも、どこの国にも所属してないことだけは信じてください! セシリアさんが王国軍のスパイだって言うのも、ザメック博士が王国から逃げようとした時に帝国に捕まって、公国に助けられた話を知っていたからですし!」


 あ、セシリアさん、真剣な顔して考えこみ始めた……整合性が取れるかのチェックかな? 色々疑問があってもとりあえず置いておく方がいいか、それとも私を放り出すかどうかとか考えてるのかな……後者ではないと考えたいけど……あ。ため息ついた。結論を出した、というよりなんか、考え込んでも仕方がないって感じ? ちょっと困ってるし。


「確かにそれなら私の素性を知っていても不思議ではないといえるわ。でも。帝国通だって言うんなら、もう1つぐらいそれらしい情報を出して見てくれる? そうすればとりあえず、信じてみることにするわ。」


 これは……そっか。私が公国が帝国に勝てる根拠は他にあるから、公国側に取り入ろうとしてる、という形にもできるから自分を納得させるために提示してくれてるんだ! いいですよ。私の記憶力、今こそ見せますよ!


「わかりました! それに合致する情報は持ってます! ズバリ! 帝国式火薬銃V1 ……の魔力バージョンです!」


「帝国式火薬銃V1……の魔力バージョン!?」


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