神様! 幸運判定だけダイスでやるのはやめませんか?
カチャッ
ええっ!? リディアさん! なんで!? なんで牢屋の中に入って……ん?
ザクッ シュッ
……あ、はい。ナイフ。ナイフの回収ですね? そうですね。確かにそうです。ナイフ、私に投げ、牢屋の壁に刺したまま、置きっぱなしでしたもんね。私が拾ってお返しするべきでした? あ、いらない。そんな、少し動こうとしただけでこちらを見ないでください。目で訴えなくてもいいです。リディアさん。
……あれ? 今度はどうしました? どうしてそんなにじろじろ見るんですか? 見てるの、私の顔じゃないような……あっ! もしかして、そんなにこのセーラー服気になりますか? わかります! すっごくよくわかります! 変ですよね、この空間にこの衣装。しかもこのセーラー服ですね。かなり昔のアニメで最近復刻したアニメのコスプレにも使えるって人気なんですよ! ベースが白で襟とスカートが赤なんてなかなかおしゃれですよね? でもそれ考えるとお二人は軍服なのに私、物凄く浮いてますよね! いや、お似合いですよ、その露出度高めな改造軍服。明るめの紫色がポイントポイントに入ってるって、無邪気さとセクシーさを兼ねててリディアさんによくお似合いです! 前線にでる兵士としてはどうなのかですけど。
「っと。そうだ、セシリア。」
あの。リディアさん。まだセシリアさんとお話することがあるんですか? もうお帰り願えませんか? 流石にこれ以上は辛いです。
「ま、まだ何か?」
うん。そうだよね。セシリアさんももうお疲れだよね。寝たいよね。私も同じ。
「いや、やっぱり殺しちゃった方がよくないって思ってさ?」
はいいいいいいいいいい!? いや、さっき、好きに飼えといったのはなんでした!? あっ、もしかして私の心の声聞こえちゃいました!? いえ、その、前線に出られるにしてもきっと貴方なら大丈夫ですよ、はい。多分ほら。鮮血の処刑人でしょう? 血とか肌で感じたいヤバい感じの人ですよね? 文句付けた私が悪かったです!
「ですから私が困るんですって!」
そうそうそうそう!! セシリアさんからも言ってあげて!! 訳も分からず異国の、いや、異世界の地で流石に死にたくありません!!
「でもね~ 私のやってることが一般兵に流布されるのは困るわけ。私は可愛くて無邪気なリディア様じゃないとダメなわけで~ さっきみたいなやり取りができる女って評価は、いらないんだよね~? わかるよねぇ、セシリア。」
こっわ! うわこっわ! 目が全然笑ってない。ここまで典型的な裏ボスタイプのNPCって初めて見た。いや、そりゃ現実世界にこういうタイプがいないかって言われたら多分いるんだろうけど。それが武力持ちって時点で私が今感じてる恐怖って多分これからの一生で絶対感じることがない貴重体験!
「わ、わかっております……」
「うん。セシリアはそういうと思ってるから、私はまあいいやと思って見せたけど。そっちの子は私信用してないし。」
「だからこれで決めようよ。運頼みとか面白くない?」
……あのぉ……待ってください。リディアさん。その手に持っているのは10面ダイスではございませんか? 何であなたはそれをお持ちで?
「あはっ! 気になる? やっぱり珍しいよね、これ! この小屋の前に落ちてたんだよ! 普通のサイコロって6面でしょ? これ、10面あるんだよ! で、2つもある! そこで、そこでだよ! 面白い遊びを思いついちゃってさ!」
えっと。10面ダイスを2つ使って、面白い遊びとはまさかと思いますが。
「こっちの赤いダイスを10の桁、こっちの青いダイスを1の桁ってことにするとさ、0~99まで数字作れるじゃん? 0を100ってことにすれば1~100じゃん? これでさ、55より大きい数字が出たら私の勝ち、それ以下だったらこの子の勝ちにして、この子が生き残れるかどうかを判定するの。どうだろ!」
それって1D100じゃないですかああああああ!!! 何でナチュラルに1D100を提案されるんですか貴方は!!! TRPGじゃないんですよ、TRPGじゃ! あ、いや。ここTRPGの世界ですけども!!
「人の生死を遊びにしないでください……」
そうですよね、セシリアさん。人の生死を遊びにしていいのは架空のゲームだけですよね。まあここTRPGの世界なんですけども。
「え~? でもこの子、スパイかもしれないし? 本当だったら殺しちゃいたいんだよね。帝国に関わる人間全部。これでも大分温情だよ? じゃあ、やろっか?」
嘘でしょ……神様、あの。なんですかこれ? 幸運判定か何かですかこれ? 55%って割と平均値っぽい数字ですよね。いや、確かにこの状況になってる時点で私のステータスがあるとしたら幸運値が高いわけがないわけで。ここまで生き残ってるから55%はあるだろうってことですか? いやでも、生死をかけたダイスロールを他人任せは良くないですよ!!
「セシリアさん!!!」
「どうしたの、ミコちゃん?」
「疑われるのは仕方がないです、だから、それ、受けます!」
「本気で言ってるの!?」
「あはっ! いい度胸してるじゃない! じゃあ」
「でも! 一つお願いが!」
「うん? 何かな?」
「自分の運命を決めるダイスぐらい、自分で振らせてください!!」
「あ~ ……なるほどね。確かに、それぐらいはいっか。はい。」
……ああ、咄嗟に言っちゃった……でも、でも。自分の運命ぐらい自分で決めたい……例えそれが運だとしても。まさか、まさかダイスで生死が決まるなんて……TRPGって、理不尽……神様。私が悪かったです。これからは真面目に生きますから。どうか、どうかセシリアさんが気を背負わなくてもいいような数字をお願いします……
コロコロコロッ……ピシッ……コロコロ……
うん? なんか変な音聞こえませんでした?
「あ、止まったね。04……だね。」
えええええ!? クリティカル!? この場面で!? 引き強くない私!
「あはっ! 死、だって。」
シャキン!
その発言だと殺しにきませんか、リディアさん!! お約束と違います!! ナイフ、ナイフ構えないでください! ギラギラ光ってるじゃないですかぁ!! いや、まだ死にたくない!!
「なんちゃって! 身構えたね? そりゃ怖いか! でもね、私は意外と約束は守る方だよ。安心してね?」
シュンッ!
こ、この人……じょ、冗談が、きつすぎる……
「それにしてもいい数字でたね~ 良かったじゃん。4はね、確かに死とも読むけど、幸せっていう意味もあるんだよね。だからまあ、とりあえず今日は見逃してあげる。ただ、あまり目障りなことしないでね? わかったよね?」
「は、はい……大人しく、してます~……」
はぁ……よかった……ようやく。ようやく一難去ったよ……しかも。大人しくしてればとりあえず安全な場所に居させてもらえる許可も取れたから……帰る方法、探せるね……とりあえず今日はもう寝たいなぁ……
「……リディア様、本当は殺す気なかったでしょう……あの時、ダイスに……」
「セシリアさん何か言った?」
「あ、いえ、今日は疲れたでしょう? ベッドはありませんけど、ゆっくり休んでください。でもさすがに明日は色々話してくださいね?」
あ。そうだよね。セシリアさんも私のこと色々知りたいよね。うん。これだけ頑張ってくれたんだもん。私もその信頼に応えないとね。TRPGってNPCとの信頼関係を作ったりするのも楽しみの一つだし。まあ、PCが一番目立つべきだって理論はあるけど。
今回、PCいないしさ……まあとりあえず。
「はーい! じゃあ、セシリアさん、おやすみなさい!」
第一章転移初日編はここまでとなります。
次回より第二章となります。
ようやくダークファンタジータグとシリアスタグが仕事を始めます。




