神様! もしかしてこれはシステム説明の時間だったんですか!?
「さて、ミコ。さっきの118年の神託の話。貴方は何処まで本当に見たのかを教えてくれる? どうせ、リディアが何か吹き込んだことを上手く神託って言って織り交ぜただけでしょう?」
ですよねぇ……ばればれですよね。そう思って口を開こうとした次の瞬間。リディアさんが私に肩を組んできた。
「そうだよ。ゲルド支部長の強化人間としての能力をそれとなーくミコちゃんに教えてでっち上げてもらったよ。ザメックおじさんならたぶんできると思ったしね。」
「そう。きちんと話す気があったならいいの。それで確認が2つ。」
「なにかな?」
「1つ目は作戦自体。私は3日というのはかなりギリギリの話だと思っている。貴方は?」
「実際ギリギリじゃないかな? ザメックおじさん徹夜とか言ってるけど、徹夜でミスがあっても困るし、第二区画の遊撃部隊をザメックおじさんのお手伝いに回すのは無難だと思う。その上で、ザメックおじさんが徹夜しないようにザメックおじさんが指示した内容を遊撃部隊が実行してる間にザメックおじさんが寝るように仕向ける誰かが必要だと思うよ。」
「そうね。正面の方は?」
「それは私も出る。というか、エリアーナも出るつもりでいたでしょ? 私とエリアーナ、カイとトーマス。4人でいいじゃん。主力は主力だし。相手も4人にこっぴどくやられた上で、指揮官……といってもこっちはカイだけどさ。向こうの隊長さんとカイが一騎打ちでもして、しっかりと決着付けて、相手の隊長さんに1日でいいから時間稼ぎしてもらう。これが一番丸いんじゃない?」
「そうね。2つ目。何故撃たせるの?」
そういえばそう。撃たせる必要性があまりないような……
「エリアーナはゼーレンを守りたいんだよね? 今回の侵攻から? それともずっと?」
「ずっと。」
「じゃあ、向かってきたやつら全部返り討ちにすれば守れる?」
「守れない。元を断たなければ。」
「だよね。だからだよ。だから撃たせて、どんな兵器を持ってきてもゼーレンの内部に侵入して中枢を壊さないとダメだって思わせないとダメ。そのために撃たせるの。」
……え? 待って。そこまで考えて撃たせる前提で話を進めてたんですか、リディアさん!?
「その考えは悪くない。貴方には考えがあると思った。だから貴方の作戦に乗った。だけど、これからは一言ぐらい教えて欲しい。貴方の発想に、私も時々ついていけない。」
「ああ、ごめん。ごめんって~ そんなに困った顔しないでって!」
ちょっと嬉しそうなリディアさん。
「まあ確かに、貴方に外で色々動かれるよりは、中で掃除をしていてもらった方が把握もしやすいし私も安心はできる。」
「でしょ?」
あの、ナチュラルにエリアーナさんも帝国軍の事を『ゴミ』だと判断してませんか、その言い方……
……あ、そうだ。私、どうしてもわかってないことが1つあるんだよね。聞いてみよう。
「あの、すみません。1つハッキリさせておきたいことがあるんです。カイさんは、強化人間じゃないんですよね?」
「ええ。そうよ。」
「カイがそうなってたら、か……そんな未来あったとしたら、今頃ゼーレンは強化人間だらけじゃない? うっわ、気持ちわるっ。」
「貴方にしては否定的な意見なのね。」
あ、あれ? エリアーナさん……? もしかして、戦力として強化人間をきちんと数えて……あ、いや。これってもしかして薬のせい……?
「どちらかというとエリアーナの方が強化人間の数いた方がいい派だろうねぇ。特に『今は』そう思ってるでしょ。」
「戦力は多い方が計算はしやすい。」
「だよね。薬が強く効いてる時のエリアーナの意見はそうだもんね。だから苦しい。……だからさ、今まではあまり私も表立っていってこなかったんだよ。ごめんね。」
今までの中で一番、悲しい感じのリディアさんの笑顔。本当は話せなくて苦しかったんだね……
「貴方の意図はわかったからもういいわ。」
「私はさ、周りの人がさ、楽しくないのも嫌なんだよ。わかりやすく言うとね。だからさ、強化人間作りまくって守りましょう、なんてのは反対なんだ。私達だけでいいよ。こんなの。だからカイはやめてって私達が強く言ってあげないとダメなんだよ。あいつ、本当にダメになったら踏み越えてくる奴だから。」
「それは本当に最後の方法。現状は必要ない。それはそうと、正面から戦って、カイは勝てる見込みがあるの?」
「勝つよ。カイだもん。ああ、相手が一騎打ち嫌がっても、そうなる様に仕込んであげるからさ、そこの点は心配しなくていいよ。エリアーナはエリアーナで、もしも一騎打ちで上手くいかなかったら、の心配して敵兵ぶった切ってればいいよ。」
「そう。じゃあそこは貴方に甘えておくわ。」
「まあそんなわけだからさ、ミコちゃん。帝国軍と正面衝突するのは私達がしっかりやるからさ。ザメックおじさん見ていてあげてくれないかな?」
えっ!
「なるほど。最初に貴方がザメックの話を持ち出したのはそういう事。確かに、これだけの情報を知ってしまったミコをそのまま市街地に戻していいのか、と考えていたけれど。ザメックを支えるという名目でここに居てもらうのはアリね。」
……あれ? あの……実質、それは軟禁では……?
「というわけで、ミコちゃん。ゼーレンに奇襲が入る恐れがなくなるまでの間、ミコちゃんは要塞にいてもらうことにするってことはセシリアに言っておくよ。もし帰れない場合もきちんと伝えられるようにしておくから安心して。」
「ここにずっと置いておくわけではなく?」
「それだと軟禁じゃん。ザメックおじさんがきちんと寝たのを確認できた時点でお家に帰るのぐらいは許可してあげようよ。どうせ夜だよ。誰もいないし誰にも伝えられない。情報漏洩関係は問題ないじゃん。帰り道はきちんと保護者してるセシリアが一緒だろうからその辺も問題なくない?」
「……なるほど。確かに。」
よ、よかった……え、よかった? 結局私、あの家のことをきちんと家だと認識してるんだ……いいのかな、本当に。いや、だから今はそういうことを考えてる場合じゃない。ゼーレンを守るのが先!
「だからミコちゃん。しばらくザメックおじさんよろしくね? あ、他のメンバーとも仲良くしていいよ。バルドとディオンっていうね、お兄ちゃんたちがいるからね。」
お兄ちゃん達って何!?
「リディア。貴方にとってはゼーレンにきてから新しくできた家族かもしれない。でもそれをお兄ちゃんというのは少し語弊があるわ。」
「え~ いいじゃん。実際私はそう思ってるし。あ、自分がお姉ちゃんって言ってもらえないの拗ねてる?」
「拗ねてない。」
……そういえば、聞きたい事、それもあったなぁ……リディアさんの夢はリディアさんの感情がはっきりわかる、映像としてはわかり辛いけど感情的にはわかりやすい夢だった。でもそれを受けて実際どうなったか、は本当に分かり辛かった。……一番最初、エリアーナさんを守るって言ってたの、どういう意味なのか。言葉のあやってやつだろうけど直接聞いちゃえるチャンスだし。
「えっと。お姉ちゃんなんですか? エリアーナさんって、リディアさんの。」
「ん~ 書類上はそう。私の感情的にと言われればそう。でもエリアーナはどう思ってるかわからないかな~ 私は、そうであってほしいって思ってるけどな~」
「戸籍上は姉妹で正しい。孤児だったリディアを私の両親が引き取ったから妹であっている。だけど年齢的に見るなら大差はないし、私はリディアのことを妹としてではなく対等に見ている。」
「うーん、今のエリアーナだとその回答が正解か~ でもそれでもそう言ってもらえると嬉しいね! そうなんだよ~ エリアーナは私のお姉ちゃんなんだよ~ ただ人前でははっきり言わないけどさ~」
本当にそうなの!? あの、同じ環境で生活したにしてはあまりにリディアさんが開放的すぎやしませんかね!?
「貴方が戸惑う気持ちはわかる。同じように生活してどうしてこうなったのかはたぶん誰にも分らない。多分、リディアだから、でしか説明できない。」
それ、説明を諦めた人の言葉ですよね!? この状態のエリアーナさんにこの言葉を言わせるの!?
「とりあえず、貴方のことを支部長やカッセルに説明するわ。安心していい。リディアも貴方のことを認めているのなら、支部長は多分、納得する。あの人、最近はリディアには甘い。」
「そりゃ支部長は私のご主人様だし。」
ご主人様?? え、どういうこと? そういえば夢で見た時もなんか、特に後半、ゲルド支部長が出てくるあたりの時のリディアさんのテンションがおかしかったような気がするし……なんかちょっと嫌な感じが……
「リディア。大人の事情は詳しく話す必要性はない。」
「そうだね、あまり生々しいのは心の健康に良くないしね。さっきの忘れちゃおっか?」
そんな気軽に忘れられません、普通の人は!! 私の反応を見てエリアーナさんが少し頭を押さえてため息をつく。あの、すみません。もしかして頭が痛いんですか? 副作用ですよね? 薬を使った直後なのに本当すみません……
「リディア。貴方さえよければ少しだけ話してあげるべき。」
リディアさんもそのエリアーナさんの反応を見てやっちゃった、という感じのちょっと苦い顔をして私の方を見た。珍しいな、リディアさんがこういう顔するの。
「あ~ ……まあ、ご主人様の意味はねぇ……ちょっと複雑だからね。大人の事情は大人の事情もあるっちゃあるけど、『ご主人様』って単語は私が使いやすいっていう話でね。」
少し困ったような表情をしながら説明を始めるリディアさん。
リディアさんが、ご主人様を、使いやすい?
「そのね、エリアーナの家に引き取られるまではちょっとした街でね、奴隷として扱われてたことあるんだよね、私。ま、そんな昔のこと覚えてないけど。けど、多分体が覚えてるんだろうね。『ご主人様』って単語に抵抗感はないんだよね。きちんとご飯くれる人ってぐらいの認識でしかないからさ?」
待ってください……それはとても重いのですが……?
私が飲み切る前にエリアーナさんが軽く頷く。えっと。もしかしてこの2人の中ではこれで説明は十分っていう判断ですか!? 時間があればもっといろいろ聞きたいですよ!?
「それが事実。さて、支部長は相手を追い払う、1日稼いでくると言って出ていったから。もう第一研究室に戻ってると思う。時間的にも。ミコ。ついてきなさい。」
「いいのかな~ エリアーナ。昼まではここで待機は支部長の指示だよ~?」
「事態が動いている。薬はもう打った。貴方もある程度は安定した。次の工程を動かす必要性があるのなら、『支部長の所へ行き指示を仰ぐ』こと自体は待機指示に強く反しないと判断できる。」
「なるほどね。そうやって解釈して動けるんならいっか。じゃ、ミコちゃん。いこっか!」
いや、ですからあああああ! お2人ともなんだかんだ言って姉妹なんですね!? それだけはよーーーくわかりましたよ!!




