神様? 挿絵の説明文まで使わないでくれますか?
あまりにも強烈な夢で目が覚めた。時計を見る。朝3時。朝早く起きよう、って言っていたけれど……いくらなんでも早すぎる。私が飛び起きるように起きてしまったから、その拍子でセシリアさんも起きてしまった。
「ミコちゃん、大丈夫? 顔が真っ青よ?」
「大丈夫です……神託が、物凄く濃かっただけなので。」
「本当にまたきたの? 昨日も来たって言ったのに、連日?」
「……それはそうなんですよ。昨日の今日なんですよ。わかってたとしても連日は結構きついです……」
「そう、今日は、休む?」
その優しい申し出に首を振った。いや、この夢の内容はきちんと考察しないといけない。私1人で考えなければいけないこともある。だけど、セシリアさんと相談した方が良いこともある。
「そういうわけにはいかないです! それに……その。」
「どうしたの? とりあえずそういうことなら朝ごはんにする? 報告したいこともあるしね。」
「すみません。そうしましょう?」
そういえばそうだ。報告しなければならないことがあるのはセシリアさんの方だった。その話が終わってからでも、と考えながら私とセシリアさんで手分けをして朝食の準備をする。セシリアさんが……いや、だから何でセシリアさんはいつの間にかパンを持ってきているのだろう……
「あ、これ? これはね、買い出しの帰りにもらったのよ?」
にこりと笑って出所を説明してくれるセシリアさん。あの。毎日何か貰っていませんか、セシリアさん。お返しとかしてるんですか?
「今日のこれはね、貴方を森で見つける前日だったわね……10番地のジェディさんが畑の収穫物を荷台に沢山乗せて帰ろうとしていたから、帰り道も一緒だったし、私が訓練ついでに引きますって変わってあげたのだけど、その時のお礼だって。」
ナチュラルに人助け……流石女神……
「あ、ジュース切れちゃってたわね。どうしようかしら? コーヒーでいい?」
そう言ってインスタントコーヒーのスティックを取り出そうとするセシリアさんを止めるように声を掛けた。
「大丈夫ですよ! それぐらい自分で作れますから!」
しかし、セシリアさんは私の声など聞かなかったかのようにスティックの端を切ってさーっと陶器のコップに入れて熱湯を入れてかきまぜた。
「いいからいいから。私がこういうのが好きなの。それに貴方、大分酷い顔だし……顔を洗ってきた方がいいわよ。」
そんなに酷い顔してたのか……とセシリアさんの言葉に甘えて、洗面所で顔を洗って戻ってくるとテーブルにはきちんとコーヒーとパンが置かれていた。
「それで、神託、どうだったの?」
当然のように神託があるものとして聞いてくるセシリアさん。もはやこの人疑ってないんだよね……私の『神託』。まあ、自分の内容を当てられた上、自分が手にしていたはずのダイスが消えている経験まであるならそうなるよね……でも今日のはどう説明したら……うーん……
全てを話せる内容ではない。今回のは大きくまとめるとリディアさんの心の問題。だからこそ私は慎重に言葉を選びながらぽつりぽつりと口を開いた。
「えーっと……物凄く簡単に言いますと……リディアさんが、殺したい人、じゃなくて、守りたい人だった、ってことがわかったんだけど、これをそのまま本人に伝えたらそれこそ殺されかねないってところ……ですかね……? 解釈は……その、いろいろできると思うんですけど……」
これ以上は要約ができない。リディアさんの感情の一部がゲルド支部長によって強化人間とされる際に植え付けられた可能性がある、なんて話をしたらそれこそゼーレンに傾きかけてるセシリアさんの感情が一気にゼーレンから離れてしまう。ゲルド支部長の事を恨んでいないリディアさんの感情とは裏腹に事が進んでしまう。これは、避けないといけない。それにしても、『唯一守らなくてもいいもの』に私が似ているってどういうことなんだろう……? これは、聞くべきなのかな……?
「……」
私が長考し、ここまでセシリアさんが納得できたかを確認するため顔をあげると、セシリアさんが何か考えていた。私は何か引っかかることを言ったのかな? そう思い声をかけた。
「あの、セシリアさんどうしました?」
「本当に貴方のそれって『神託』よね。知ってた? 昨日の夜、リディア様は偵察を終えて戻ってきたけど調子が悪いって話なのよ。」
「!」
正直、驚いた。今回の夢は特に戦況打開につながりそうな情報は見当たらなかった。いや、私が気が付いていないだけかもしれないけれど……だけど、タイミング的にリディアさんが不調のタイミングでリディアさんの夢だったから、リディアさんに何かがあった『神託』としてセシリアさんの中では処理されたのだ。こんな偶然ってある?
「だけど、調子が悪い、の意味は多分、綺麗に隠すためにそう言わざる得なかったのだと思うの。昨日崖上の偵察をしに行ったときにリディア様も見つけたの。だけど、その時のリディア様はまるで血に飢えた獣のような感じで……だけど、私に気付いたら私にお礼を言って、その場を離れていったのよね。」
……昨日の夢通りなら。リディアさんは殺戮衝動を抱えてる。発作的に出ちゃってるのに気が付いて、慌てて偵察を切り上げた、あたりかな……それだとゼーレン防衛隊は隠すよね。これは、強化人間化の代償だから……セシリアさんが強化人間について知っている、なんて知らないし。
「リディア様は帝国兵と、帝国兵が作ってる変なものを見ていたわ。一応、私もそのことはトーマス様を通してエリアーナ様とカイ様には報告したけれど……あれって何だったのかしら? そう。私は貴方とこの話の共有をしたかったのよ。トーマス様には防衛隊のメンバーに通達するまで待っててほしいって口止めされたけどね。」
なるほど……変わったものを見つけて構造とかはわかるけど使い方がわからない時は、もう私に頼る方が良さそうって思ってるんだ。情報の使い方とかはセシリアさん物凄く上手いのに、不思議だなぁ……以前やったリディアさんとのやり取りの効果が出てるのかな? まあ、でも気にはなるし……絵とかに描けるのかな? 聞いてみよう。
「どんなものだったんですか? 絵に描いたりできますか?」
「ええ、できるわよ。えーっと。こんな感じ?」
そういうとさらさらとセシリアさんがペンで書き出す……
って、は? え? ちょっと。セシリアさん? 簡潔ではありますが凄く特徴を押さえたいい絵をお書きで……もしかしてこれ、訓練されてますか……?
でもこれって見たこと……ルルブだ!! ルルブのどっかの挿絵! これにそっくりなのあった! えっと。どこの挿絵……こういうものは武器? 兵器? それとも……
『帝国軍の移動砲台』(P.311)
帝国軍は基本的に物量で押す作戦を好む為、大まかな方向を固定できる砲台をその場で作って火薬で飛ばす、という雑な戦い方をすることがある。
……あの、神様。そろそろ、いい加減にしませんか? こんな挿絵につけられた説明文を拾い集めないとダメなシナリオって異常ですからね? こういうのは上級者向けでしっかり難易度の説明とか事前説明してからスタート……いや、PLのまま放り投げてる時点でダメなんだけど!
それにしても……
「どうしたの? 見覚えでもあるの?」
「あの、まったく同じものの見覚えあったら怖くないですか? 絵ですよ?」
「あらばれた?」
セシリアさん。さりげなく私がどこまで帝国の事を知っているかのチェックしないでください。気づいているんですからね。貴方が私の事をじっと見てたこと。見覚えでもあるのの一言がちょっといつもの言い方と違ったこと……本当、こういう所は抜け目ないんですから……
それはさておき、見覚え自体はあるし素直に言おう。挿絵の説明文通りなら帝国軍の現地での土木作業は一般的っぽいし問題はないはず。
「でも、近いものは見たことある気がするんですよ。具体的にはえーっと。そう、ほら、えっと……弓の弦みたいな所? があるやつなら見たことあるなって。」
そう言いながら絵に書かれた台座の後方部分を指さす。
「ああ、帝国軍が大好きな現場組み立ての移動砲台ね。あれ、結構原理的にはよくできていて、荷車に木箱とかそういったものを……ああ。確かに、今回もそれはできそうよね。リディア様の夜襲が成功してるなら。実際、言われてみれば荷車は解体していたし……」
「ですよね。でもこれ、砲台じゃないんですよね。発射機構がないから。ただの台なんですよ……」
ただの台、という言葉を聞き、セシリアさんがはっと顔をあげた。
「……もしも、発射する予定の物が、元々飛ぶものだったらどうかしら?」
元々、飛ぶもの……そう言われて思い出したのは、カタパルトだった。戦闘機を発射するようにビューンと加速させるようなタイプの。そうなると……棒の部分を指さしながら言う。
「……待ってください。この棒みたいなものってレール……? 航空ユニットをセットして、このレールで方向を制御して発射するための台ってこと?」
セシリアさんも頷きながらいう。
「帝国軍、相当追い詰められてはいるけれど……厄介なことをしようとしてそうね。どうしましょうか、これ。あくまで予想だけど、報告入れる?」
「もちろんですよ!」
それに、どうしても確認したいことが1つある……
リディアさんの夢の中に出てきた『レオン』……
私の、記憶違いでなければこの人は……
『レオン』
ファルシア公国諜報部長官
ファルシア公国の若き諜報部長官。軍備計画だけでなく、外交計画にも影響力を持ち、さらには公国の技術力を生かし、王国軍の魔力兵器開発やその方向性にも口を出すため、王国軍部の一部には少々煙たがれている。その一方で勇者マルクレスに対し、最も支援に積極的な人物でもある。
ルルブ記載の公式シナリオにしてアルバーン戦記TRPG2.0のメインストーリー、キャンペーンシナリオ『帝国が犯した罪』で主人公である勇者マルクレスに毎回支援物資を供給していたNPC。ここで、メインストーリーが関わってくる? どういうことなの?




