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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
『仮面』

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神様! 自宅っていいですね!

「トーマス! ゲルド支部長はいるか! 第一区画で先日起きた崖崩れの件の報告書が仕上がったんだ!」


「ああ、それぐらいなら僕が預かっておく。支部長は忙しい。問題がないならもう行きなよ。」


「トーマス隊長! 第四区画の城壁上から、敵軍が見えたという報告が!」


「ああ、それならリディアが詳しい情報を持ってる。明日には指示を出す。相手がおかしな動きをしないかは確認しておけ。ただ、こちらが気付いていることは悟られるな。」


「トーマス様! リディア隊長から言われた陽光果の品種改良で、さらに甘くて濃厚な味の品種が完成したらしいですけど食べますか!」


「なんでリディアじゃなくて僕に食べさせようとしてるんだ!? まったく、あいつは部下の管理もできてないのか! おいていけ、後でリディアに届けておく!」



 ゼーレンの第四区画でトーマスが一人孤軍奮闘を繰り広げ、とうとう日が傾き始めた頃。

 進軍を続けていた帝国軍の兵士たちはゼーレンの城壁が見える、『レンゴク谷』と呼ばれる場所までようやく歩を進めていた。

 しかしそこに突然の来訪者が現れた。


 突如、木の上から降って、進軍を遮ったのは2メートルの巨体に大きな大剣を背負う、ファルシア公国騎士団ゼーレン支部の青いラインの入った軍服を着た……ゼーレン支部を束ねる支部長、ゲルドだ。


「報告通り、徹夜の強行軍か……警戒する相手がいないならそれでもいい。舐めすぎだ。」


 突然、敵軍の長が単騎で現れる。その異常事態に帝国軍は大きく慌てふためいた。


「な、ななな!? げ、ゲルドだ! ゼーレンの長の、ゲルドだ!」


「なんだってこんなところに!? おい、グレイブ隊長に報告を! 前線にゲルドが!」


 あるものは後ずさりし、あるものは後方へ報告をとばしと、乱れ切ったその戦列にゲルドは苦笑する。


「貴様らは本当、個人個人の練度がなってないな!」


 そういい、ゲルドは構えた大剣を一振りするとまるで人形のように何人もの人間の体が真っ二つに切り裂かれた。

 そこへさらに森の中から巨大な人のような何かが現れ、帝国兵たちを投げ飛ばした。


「た、大変だ! こっちから化け物が! うわあああああ!」


「刺せ! 槍で刺すんだ! 武器は持ってないぞ!」


 必死に槍で応戦する帝国兵たち。しかし、バルドの肉体に刺さることなくぷよんと、弾かれてしまう。


「ダメだ、槍が弾かれる……! こんなバケモノがゼーレンにいたなんて!」


「バケモノ。ドッチ? りたヲ、りなヲ、ウバッタノ、オマエラ!」


 バルドは激昂すると帝国兵の頭をつかみ、握りつぶした。


「そ、そんな、人の頭が、トマトみたいに……」


 混乱した戦況の中、ゲルドが腰にぶら下げた筒を口に当てて指示を出す。


「ディオン。剣の魔力出力をあげる。西方5kmの地点だ。放出しろ。もう少しだけ暴れてやる。」


『了解……』


 次の瞬間、ゲルドが持つ公国式魔道大剣弐式の刃が大きく開き、光の刃が形成される。


「安心しろ。怖かっただろう。これで帰ってやる。」


 それはただの薙ぎ払いだった。しかし、その閃光が薙ぎ払った後には、血の跡一つ残っていなかった。


「お前らの帰る先はあの世だがな。」


 そういい、再び剣を構えるゲルド。その様子を見た残りの帝国兵たちは武器を捨てて足早に後退していった。


「ふんっ。バルバレスめ。後進の育成をしっかりできていないか。これはいいな。数を揃えてもしっかり育成が出来ていなければ負けるということを刻み付けてから消してやる。待っていろ。」


 そう言いゲルドは大剣を背中の鞘に納めた。ゲルドが武器をしまったのを確認してからバルドがゆっくりと口を開いた。


「ゲルド。オレ、チクチク、カユイ。」


「ああ。悪かったな。盾にしてしまって。帰ったら薬を塗ってやる。」


 ゲルドはバルドの背中をぽんぽんと叩くと、2人仲良く要塞へと引き返していった。



 同時刻。戦乱の足音が間近まで迫り始めた事を知ることはなく、ゼーレンの市街地ではいつもと同じゆったりとした空気が流れていた。


 セシリアさんが帰ってくるまで私はまだ解明できていなかった謎に挑んでいた。

 それは陽光果。リディアさんがゼーレンの特産品にした果物の謎。何故リディアさんは陽光果をゼーレンの特産品として他国に販売することを思いついたのか。何でそんなことをする必要があったのか……データを調べたら、解明できるかもしれないからだ。


 セシリアさんが最初に持ってきてくれた資料を再び書斎の机に広げる。陽光果の販売記録は119年からある……ということは。特産品みたいにして売り始めたのは119年。リディアさんは強化人間になってからゼーレン防衛に組み込まれてる、ってことを考えるとリディアさんが推し進めた、というのはデータからも硬い……

 ではなぜ、リディアさんが推し進めたのか……データからはちょっとわからない。

 けど……


 ここで頭を少し抱える。簡単な表計算ソフトを使ったグラフ作りぐらいは、学校の授業でやったからできる。んだけど……そんなものはない。自分で書くしかない。これがまた面倒臭い! パソコンって、便利だったんだね……! 一目瞭然にできるあのグラフ……あれが作れないって、とっても不便! 本当にデータからわからないかどうか! これを確かめるのにグラフって便利なのに! 手描きって何!? そもそも方眼用紙から自分で作らなくちゃだめって何!? うっわ、手作業面倒!


 いや、もうこの方向から攻めるのはやめよう! 相手はリディアさん! あの人が本当に細かく数字見てやってると思う、私? いやない。多分感覚! あるいは大まかな数字の動き! 特産品として売る理由? お金がいるからに決まってるじゃん。そう、これは単純にそうだと思う! そうだよ……相手はリディアさん……今まで見てきたリディアさんは……だめだ、あの人複雑だ……一言じゃ無理……無理だけど……多分、ジュースの反応から……無邪気でありたい人……これ、かな……


 だとすると……純粋にゼーレンの特産品でお金を稼ぎたかった。自分が好きなものだし、いっぱいあれば自分も美味しいから一石二鳥だしね。あ、これいける! でも何でお金が稼ぎたかったのか? ……これが探すべきデータなんじゃないかな……そうだ、そうだよ! 今まで足りてなかったものを補うために! これなら辻褄合うかも! この辺の資料は……


 ピンポーン!


 あれ、チャイムだ。私は急いで1階に降りて玄関のインターホンのモニターを確認する。セシリアさんだ。……うん? 今までセシリアさん、チャイム鳴らしてないよね……? 合鍵があるもんね? 突然どうしたの?


 ガチャリと鍵を開けて扉を開くとそこには両手に荷物を抱えたセシリアさんが立っていた。

 ……何故?


「ご、ごめんなさいね、ミコちゃん。一人で扉を開けられる気がしなくて……何とか、チャイムだけは押せたの……!」


 な、なるほど。確かにその量では無理ですね……いったい何を持ってきたのですか。貴方は。

 セシリアさんの視界を塞ぐような箱だけ奪い取る。なんか、少し重い……鉄とか重量物ってわけじゃないけど、瓶とかそういう……? 不思議に思いながら、セシリアさんを家の中に招き入れると、セシリアさんは玄関にどさっと荷物を置いた。


「えっと、セシリアさん、これは……?」


 私が不思議そうに聞くとセシリアさんはちょっと頬を赤らめながら少し早口に事情を説明してくれた。


「実は、報告はできたんだけど立て込んでたみたいで情報がきちんと行き届く明日までは伏せておいてほしいって言われちゃったのよ。相当状況が悪いのかもって思って、しばらくミコちゃんだけでも家が管理できる状態にしなくちゃって思って、生活用品と食料を少し、ね。」


 ……少し? あの、セシリアさん? 両手にいっぱいの荷物をさして、少し? それは少しと言わないんです! 戦争前の買いだめ行為です!!


「とりあえず、荷物を片付けて、ご飯にして、早めに寝ましょう。明日ならいいって言われてるから、朝早く起きてもらえれば話せるし、ね?」


 ……うん? あの、セシリアさん? 明日なら話していいというのは、日付が変わってすぐならOKという許可を貰った……というわけではなくないですか? 普通、明日もう一度、報告するか何かしてからではないですか? ついため息をついてしまった。


「なるほど……流石悪い大人ですね。明日ならいいから明日早く起きて伝えちゃおう、ですか……」


 私のこの反応を見て、ふふっ、といたずらっぽく笑ってから


「もう、そう言わないで。ほら。手伝って。」


 と少しずつ荷物を片付けようとするセシリアさんの様子を見て自然と私は返事をした。


「はーい。」


 この日一体何があったのか。私は深く知ることなく、眠りにつくこととなった。


 ……今日の朝、神託のダイスを振ったという、その事実を忘れて。


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