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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
『仮面』

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神様! 選択の時間ですが早すぎます!

 カイさんとエリアーナさんの2人が第四区画の方へ向かって歩いて行って見えなくなったのを確認してから私はひとまず家に入ることにした。このままセシリアさんが戻ってくるまで立っているわけにもいかないし。かといって何をするか決めているわけでもないけれど。


 玄関で靴を脱いで、靴を下駄箱にしまおうと思ったその時だった。異変に気付いたのは。


 私が靴を置くと決めていた場所に、6面ダイスがおかれていたのだ。まるで、私が手に取り、振られるのを待っているかのように。


 今までは、ダイスは突然現れて私の選択など待つこともなく、ある時は受け取って振り、ある時は蹴る様に振ってしまい、そしてある時はやはり振られてしまっていた。でも今回は振るかどうかを選択するように迫られている。そんな気がした。


 言うなればこうだ。


 貴方は、このダイスを振ることもできるし、振らないこともできる。


 TRPGではよく使われる構文だ。

『~することもできるし、~しないこともできる。』

 TRPGは選択の連続だ。だからこそ、よく使われるこの構文。まさか、現実でこんな形で、自分の言葉で聞くことになるなんてと笑ってしまった。


 ……神様。私は、自分の運命は自分で決めます。


 私は下駄箱に鎮座する6面ダイスを、少し震えながらも手に取り、一度握りしめた後、廊下に放った。自分から見えない所へ。すぐに出目が確認できてしまうなんてつまらないじゃない。


 コロコロ……


 まずは靴をしまう。そして、放ったダイスを追いかけるようにゆっくりと廊下を曲がる。


 2。


 今まで6面ダイスが振られた時のことを考える。今のところ全て、夜に夢を見ている。つまりこれはきっと、夢の内容を決めるダイスだ。夢を見るかどうかを決めるのであれば、もっと別の方法をとる。例えば、コイントスを模した、1D2とか。

 でも、この数字の意味するところは私もまだわかっていない。5で、トーマスさんの視点の夢を見た。6で、サイラスさんの視点の夢を見た。共通点は私が名前しか知らない人ぐらい。これだけで予想するのは無理だ。

 今回の2。

 前回と前々回より数字が小さくて離れている。数字が大きいほど内容が濃い。これは違うと思う。内容の濃さだけだったらむしろ5のトーマスさんの方が濃かった。内容のキツさ。これもどちらかというとトーマスさん。間近な人が死んでいる。

 つまり、夢がどんな内容なのかを数字で決定はしているものの、数字が小さければいいとか大きければいいとかは関係ない可能性が高い。それ以外のルールがある可能性は否定できないものの、数字が離れていることから、それが解明できる可能性があって、期待ができる。


 多分、この時の私はリディアさんみたいに悪戯っぽい表情になっていたんだろうな。


「……ミコちゃん?」


 帰ってきたセシリアさんが、驚いた様子で私の方を見て、心配そうに声をかけてきたから。


「お帰りなさい、セシリアさん。えっと。これがあって。」


 そういって、多分、いつもの笑顔でセシリアさんにダイスを見せる。すると、セシリアさんもほっとして表情を緩めた。


「そうだったの。また、神託? 早いのね。」


「はい……そちらはどうだったんですか?」


「ああ。ごめんなさいね。まだ報告してないの。報告が終わってから、それを伝えていいって許可を貰ってからの方がいいかなって思ってるの。」


 どうやら、偵察で想定外の物を見てしまった、って感じがする。そうでなければ私に隠そうとはしない。いや、今回は出ていく際に立場を物凄く言及されていたから、というのもあるんだろうけど。


「私が帰ってきた理由はこれよ。」


 そういってセシリアさんは手に持っていた袋を見せてくれた。心なしか、袋の中からパンの匂いがするかも……もしかして、ご飯!?


「一緒に、食べましょう?」


 にこりと笑って促してくれたセシリアさんの言葉をありがたく受け取って、私は昼食の準備をしたのだった。




 そんな未子宅で和やかな昼食タイムが開かれていたちょうどその頃、ゼーレンの第四区画の内部は大騒ぎになっていた。


 カイに連れられてエリアーナが作戦会議室のソファーに横たわる様子を見てゲルドが苦笑した。


「エリアーナ。自分のことを気にしろといったはずだが。」


「すみません、支部長……少し休めば大丈夫ですので。」


 淡々と返答するエリアーナの近くにはザメックがあわただしく近寄って行き、脈や熱などをそそくさと調べていた。やがて彼の顔は少し赤くなって、早口に話し出した。


「ああもう、エリアーナ殿。貴殿に施した処置は、自分自身の自我を極力眠らせ、2人目のシステムとして動く自分自身を表面上動かすことで感情エネルギーから生み出される魔力を最大化するものですぞ! 無理に自我を起こしては、自分で自分を殺すことになるといってるのですぞ! いい加減にするですぞ!」


「……わかってる。貴方の声は、頭に響くの……頭が痛い。お願い。抑制剤を、打って……」


 痛みに耐えかねエリアーナが薬を要求するとザメックがさらに騒ぎ出した。


「薬に頼りすぎては寿命を縮めるだけですぞ! せっかく、せっかくバルドやディオンを人に戻せる研究に目途が付き始めて貴殿たちという所まで来たのに、困るのですぞ!」


 ザメックが地団駄を踏む様子を見てカイが咄嗟に宥めた。


「ああ、わかってる。わかってるって。落ち着けって。俺も薬は使って欲しくないって思ってるし。おい、エリアーナ。ザメックの言う通りだ。薬は良くない。ちょっと長引くかもしれないけど、さっきも言ったけど戦争中だ。今、休める時に休んで体調を整えろ。な?」


 表情を見せないように腕で顔を隠すエリアーナの様子を見かねて、ゲルドが口を開いた。


「カイの言う通りだ。もしも、気になるというのであれば、いいだろう。接近している相手は一度、私が払おう。」


「支部長!?」


 その時だった。作戦会議室にある裏口からドサッ、と倒れるような音がしたのは。


「む……誰だ?」


 そういい、ゲルドが裏口を見るとそこにはリディアが倒れていた。傷は一切見当たらない。


「リディア! お前、我慢していたのか? おい、ザメック。エリアーナの薬は後だ。まずはリディアの処置をする。鎮静剤を持ってこい!」


 ゲルドは即座にリディアを子供を抱え上げるように大切そうに持ち上げて、足早に運んでいく。リディアはうつろな表情でぼそりと語り始める。


「支部長……とりあえず、さきに、報告……」


「黙れ。調整が欲しかったのならなんで我慢していた?」


「……我慢してたわけじゃないもん。邪魔だったんだもん。楽しむのに。それで……その邪魔者が、結構近い所まで、きてたから。それだけでも……」


 大きくため息をつくゲルド。


「……わかった。カッセル!」


「はっ、なんでしょうか、支部長。」


「今すぐ出る。バルドにも準備をさせろ。あくまで、この2人の体調が持ち直すまでの時間稼ぎだ。1日。1日進軍を遅らせる。バルドにもそう伝えろ。」


「かしこまりました。」


 そういうとカッセルは作戦会議室から足早に去っていった。

 それを見送るとゲルドはリディアを抱えたまま、エリアーナを見据えた。


「これでいいだろう。おい、エリアーナ。」


「なんでしょう、支部長……」


「お前とリディアは明日の昼までは、この部屋の隣の第二研究室で待機だ。これは命令だ。違反は許さん。」


 この命令が出た途端、リディアは大きく目を見開いた。


「え……エリアーナと!? それは……!」


「安心しろ。お前は一度、調整をしてからだ。軽めのな。」


「っ……ま、あ、いいか……軽めでもないと……もう、殺したくて殺したくて……我慢、できないもん……」


 そう呟くリディアを連れ去るようにゲルドとザメックが去っていくと、その場にはエリアーナとカイだけが残された。


「……どうして、支部長はそんなことを命令して……」


「さあな? 俺にはよくわからないけどさ……エリアーナ。お前、なんか変だぞ。リディアの事を気にしすぎだ。ミコちゃんも言ってたけどさ。一度きちんと話した方がいい。」


 エリアーナは少しの間沈黙した後、口を開いた。


「……そう、ね……でも、ごめん。カイ。リディアは、放っておけない……だから、一つ頼まれてくれる?」


「うん? なんだ?」


「……無理するのは、これっきりにするから、ってザメックに言って―――」


「……まったく、お前は……まあ、今更か。わかった。今から持ってくるから、お前は大人しくしてろよ。ほら、掴まれ。第二研究室までは連れてってやる。」


「ごめん……」


 そう言って第二研究室に入った2人とすれ違うようにトーマスが作戦会議室に入ってきた。

 普段ならエリアーナ、カイ、ゲルド、カッセル……このあたりはいる場所。しかし今日はもぬけの殻。トーマスはしばらく作戦会議室で待った後、誰もいない、こないことから、確認するように奥の部屋……第二研究室に声をかけた。


「誰もいないのかい? ザメック、奥にいるなら返事をしてくれ。」


 その声を聞いて出てきたのはカイだった。


「ああ、わりぃ、トーマス。見回りが終わった所なんだろ? すまん。エリアーナが倒れた。リディアも戻ってきて調子が悪い。ってことで、ゲルド支部長が自分が戦場に出るって言ってリディアの調整終わり次第、出撃するらしい。」


 トーマスはその話を聞き、眼鏡を掛け直す。


「……支部長直々にかい? 1人で?」


「バルドも連れてだと。」


「……なるほど。バルドか。なら僕らはいけないね。バルドを使うとなると、他は誰もついていけない……牽制が目的か。」


「まあ、そういうこった。俺はエリアーナが欲しいもんをザメックに言って貰ったあと、エリアーナの様子を見るつもりだ。お前はここに残って防衛隊に用があるやつに用事があるなら明日こいって伝えてくれないか? くれぐれもエリアーナとリディアの不調。あと支部長の不在は悟られないようにな。」


「それぐらいならいいよ。僕の通常任務1日ぐらいなら他の第四区画守備隊長でもできるしね。でも主力が3人も不在か。なかなか言い訳を考えるのが楽しそうな任務だね。」


「お前ならそう言ってくれると思ったぜ。じゃあ、任せた。」


 そういうとカイはトーマスの肩をポンと叩くと、ザメックが向かったであろう第一研究室へと向かって行った。

 それとほぼ同時だった。セシリアが足早に現れたのは。


「すみません! 緊急報告がございます!」


 セシリアは敬礼をし、はきはきとした通る声で一報を入れた。その形式に倣った報告を聞き、トーマスは眼鏡を掛け直しながら次の言葉を促した。


「君は、確か……第三区画の小隊長だね。緊急報告とは?」


「トーマス様。その。エリアーナ様かリディア様はいらっしゃいますか?」


 そのセシリアの言葉を聞きトーマスは、ふぅ、と小さくため息をついてから口を開いた。


「すまない。その2人への報告だったら明日にしてもらっていいかい? 今が重要な用があって2人ともいない。」


「……それは、体調がすぐれないので?」


 その、確認するようでいて、探りを入れるような一言にトーマスは眉を顰めると眼鏡を押し上げながら答える。


「それが報告内容に含まれるなら、少しだけ聞いておく。」


「はい、かしこまりました。本日、『ある情報源』から空への警戒が促されました。その情報の真偽について確認するため、第一区画から確認をしたところ、敵が崖上に陣を張っていることが確認されました。ただ……」


「ただ?」


「陣、というには小規模で、何かを作っている……といった様子でした。それをリディア様も確認しておりましたが、どこか体調がすぐれない様子だったので……」


 トーマスは腕組みをして、少し考えこんでから、セシリアの顔をしっかり見据えた。


「なるほどわかった。つまり、リディアが詳細を知っているという事でいいね。体調が戻り次第すぐに聞く。君の言っていることが正しいかどうかもそれでわかる。十分な報告だ。よくやった。」


「ありがとうございます。」


「まあ、君も悟ってはいるだろうが、リディアの体調不良はしばらくは機密にしてくれ。あと、エリアーナでもいい、といったな? どうしてだい?」


「偵察に出る時にエリアーナ様と会い、偵察しに行く旨をお伝えしたので……」


「ああなるほど。わかった。エリアーナにも伝えておこう。」


 セシリアはそのトーマスの返事を聞き、深い会釈をした。


「重ね重ねありがとうございます。ところで……」


「なんだい?」


「この情報を『情報源』にも報告してもよろしいでしょうか? 自分がもたらした情報がどうなったのか、について気になっているはずなので。」


 トーマスは少し考えた後、再び眼鏡を掛け直し、答えた。


「……今日はやめてくれ。そうだね。明日ならいい。」


「かしこまりました。それでは私はこれで。」


 足早に去っていくセシリアの後姿を見ながら、トーマスはふぅ、と大きくため息をついてからぼやいた。


「……今日は、面倒臭い日だな。この情報を誰に伝えればいいんだ? 支部長はまだ戻ってこないだろうし、エリアーナとリディアはしばらくダメだろう? ……ザメック? いや、意味がないな……そうなると僕がこの情報を元に指示を……? 本当に面倒臭いな……」



 そんなトーマスの一言が放たれた同時刻。

 軽めの調整をうけ多少持ち直したリディアとゲルドが第一研究室の奥にある檻の前にいた。


「ごめんね、バルド……1日だけ力借りちゃうことになるけど……まさか、私もエリアーナも一緒のタイミングでダメになるなんて思ってなかったんだよね……ほんっとごめん……」


 ゲルドが檻を開けると同時に、人とは思えない巨体をのしのしとゆっくり動かして、バルドがリディアの頭を撫でた。


「リディア、キニシナイ、バルド、オイハラウ。」


「そうだな、バルド。元々は我々だけでやらねばならなかった事。さて、リディア。お前はエリアーナと一緒にきちんと休んでおけ。あと……何を喧嘩しているかは知らんが、仲直りはしておけ。今は戦争中だ。」


「そんなこと、してませんよーだ。勝手にエリアーナが怪しんでるだけ。」


「まったく困った娘達だ。ならきちんと話をしろ。私はいく。」


 ゲルドがため息をつきながら、手甲やベルトなど、戦いのための装備を装着していく。


「リディア。ゲルド、コマッテル。イウコトキク。」


「見当違いなだけ。あ、たくさん帝国兵を殺さなくってもいいからね。私の分がなくなるから。」


「ヤダ。オレ、アイツラ、キライ。」


「そうだよねぇ。バルドは、家族みんな、殺されてるもんね。しょうがないね。でも、飲まれちゃだめだからね? 私、バルドとまだ話したいもん。」


 そう言いながらリディアはバルドの大きな手を包み込むように握ると、バルドがにこりと笑い頷いた。


「ウン。ワカッタ。」


「リディア。」


「なんですか、支部長。」


 準備途中のゲルドが不意にリディアに声をかけた。


「きちんと仲直りをするんだぞ。」


「改めて言わなくてもいいじゃないですか。エリアーナと話すことなんてありませんよーだ。私はもう寝ちゃいますから。もちろん、きちんと言いつけ通り、第二研究室で。」


 そういって拗ねて部屋から出ていったリディアを見送りながらゲルドは呟いた。


「まったく……だが、お前には本当にすまない事をした。我々の正気を取り戻してくれて、ありがとう。」


「ソウダナ。リディア、エリアーナ、カイ。アノ3ニンノオカゲ。フクシュウ、カイホウ。ヨカッタ。」


「お前もそう思うか、バルド。だからこそ……やるぞ。あの4人を、ゼーレンを守る。私の贖罪はそれでしか、成し得ない。」


「……ゲルド。」


「なんだ、バルド。」


「サイラス、ダケデイイ。アヤマルノ。オレモ、ディオンモ、ノゾンダコト。」


「……そうなることを告げずにな。」


 そうぶっきらぼうにいい、ゲルドは大剣を握り締めて出撃し、バルドはその後を追うように要塞の通用口から外へと駆けだしていった。


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