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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
開戦の狼煙

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12/24

神様! 差し支えなければダイスの理由を教えてください!

 リディアが武器倉庫から外に出ると、そこには爆発音を聞き駆けつけ、血だまりを見て異常に気付いたのか、まとまって集まってきた帝国兵十数人が槍を構えていた。


「た、たった1人なのか!?」


「嘘だろ! 見張りのあいつって正規だったよな!?」


「落ち着け! 1人だ! すぐ隊長も来るはずだ! 時間を稼げ!」


 怯えながら倉庫から出てきた少女……といっても22歳なので女性なのだが。女性1人を大の大人の兵士が槍を構えて囲んでいる光景は傍から見ると異常である。しかも囲まれている当人は一切それを気にしていない様子で


「うーん。流石に数が多いかな。怪我でもしたら支部長とエリアーナが困っちゃうじゃん。いい加減にしよっか?」


 そう一言呟くと。彼女が倉庫内で『マジックポッド』と呼んだ武器が形を変え、小さなクロスボウのような物を作り上げた。


「なっ!? 変な武器を持ってるぞ、この女!」


「弓か! 撃たれる前にやれ、やれっ!!」


 リディアは突撃してきた兵たちを華麗に避けると、腰のベルトポケットから矢の先に火薬が仕込まれている矢をセットし、発射した。


 シュッ


 その矢が盾を構えた帝国兵の盾に刺さると


 ドンッ!


 激しい爆発音とともに盾は爆散し、兵士がはじけ飛ぶ。そのはじけ飛んだ兵士の横には、いつの間にかリディアがおり、爆発によって受けた傷の痛みを感じる前に、喉に刺されたナイフによって絶命した。


「な、なんだあの矢は!? 当たると爆発するぞ!?」


 この一連の光景を見た帝国兵たちは怯え、一部の兵はこの場を逃げ出し始めた。その様子を見てリディアが無邪気に笑う。


「あっははっ! ザメックおじさんの言った通り、帝国軍は火薬を推進力としてしか使ってないんだね! 私達の方が一歩上だー! ほら、もっとくるよ!」


「もっとくるよ、じゃないだろ。まったく。自分も撃ってみたかったからって、爆裂矢の爆発を合図にするなんて。本当悪趣味だね、君は。」


 その声と同時に矢の雨が降り注ぎ、その一帯に爆風の嵐が吹き荒れる。


「まあまあ、そんなに怒らないでよ。いい所はトーマスにあげたじゃん。」



 その騒ぎに乗じて、リディアは自分の靴に仕込んだ爆薬を爆発させ、一気に戦場を離脱し、トーマスの隣へと着地する。彼女の装着しているブーツ、ジェットブーツ。公国軍の強化人間や鍛え抜かれた遊撃兵専用の離脱用兵器である。リディアは最初から、この兵装を使う想定でこの作戦を決行したのである。


「相手の秘密兵器はきっちりゲット! 残りはさっきので全部壊れちゃっただろうから、作戦は成功。さっさと撤収しちゃお!」


「それはいいが……」


 トーマスは爆風の嵐が吹き荒れた一帯を見る。火が起こり、このまま放置すれば延焼は免れない。


「いいのいいの。だからエリアーナが『後片付け』、なんて言ったんだろうから。私達は作戦をしっかり遂行すればいいの。ほら。怪我でもしたらみんなが悲しむよ。」


「そうだね。それは困る。本格的な戦いが始まる前に士気が落ちては大変だ。」


 トーマスが撤退の指示を出すと、爆裂矢を崖上から降らせていた遊撃兵たちが即座に散開し森へと消えた。


「じゃ、トーマス、きちんと捕まってね。」


 そしてリディアとトーマスもジェットブーツによってこの場を離脱したのであった。



 その頃。トーマス達の遊撃隊よりもさらに上の山岳地帯。そこは手つかずの森が広がり、下流へと流れていく川の源流が流れている。そのすぐそばの崖から爆発音や火の手が上がる様子を眺めている一つの影があった。


「リディアの作戦遂行を確認。相変わらず派手にやるわね。止めなかったからまあ。やるとは思ったけれど。」


 ゼーレン防衛隊の指揮官であり、騎士団支部長の副官としてゼーレンの防衛の責任者であるエリアーナがそこにはいた。


「リディアが爆裂矢を持ち出そうとした時点でこうなる確率は90%を越えていた。それなら、ほぼ確実に使うであろうトーマスも配備し、100%にしてしまい、事後処理を行うという前提で作戦を組み立てた方がシンプル。」


 淡々とそういうとエリアーナは両手を川の水に入れる。エリアーナが目を瞑り、集中すると川の水は光を纏い、まるで流れに従って流れるように彼女の手から上方向へと流れを変え始めた。そして、大きな水の塊がゼーレンの空に浮かび上がった。


「この位置でこの事象が起きたなら、進軍は数日止めざる得なくなるはず。私も、少し派手にやらせてもらうわ。」


 そうつぶやくと、エリアーナは目を開け両手を派手に爆風が起きた場所に掲げる。そして一言。


「いけ。」


 その声とともに、水の塊は真っすぐに、そこに向かって飛んでいった。

 一方現地は悲惨なものである。突如現れた水が周りの炎を洗い流し、ついでに帝国兵も洗い流していくのだ。


「うわあああああ!」


「た、助けて! どうして!」


「逃げ……うああああ!」


 人も物も、森の木も。その場にしっかりと根付いていないものはことごとく水に洗い流されていく。帝国兵たちはその自然の驚異にただただ慌てふためくだけであった。しかし、これはまだ序章であった。


「さて。これだけでは水が街に流れ込む可能性があるわね。そもそも、貴方達が来なければこれも必要はなかった。諦めるのね。」


 その様子を見ながらエリアーナは再び、その方向に手をかざし、目を瞑る。


「凍れ。」


 その瞬間。彼女が操っていた水から冷気が立ち込め凍り始める。そして瞬く間に帝国軍が野営地としていた森が白く染まった。

 水に洗い流された兵たちは凍り付き氷像となり、助かった兵たちはこの異常事態にどうするべきなのかわからず、真っ暗な森の中を撤退していく。

 森から明かりが消えていく様子を見ながら、エリアーナはため息をついた。


「はぁ……流石にキツイ……でも、この規模のことができるのは私ぐらいだしね……」


 エリアーナは森の明かりが完全に消えるのを確認してから、ゼーレンへと戻っていった。



 そんな攻防が城壁外で繰り広げられているのを知らないセシリアと未子は水の塊がゼーレンから離れた方向に向かっていくのを確認し胸をなでおろしていた。


「ミコちゃん。こんな異常事態よ。本当は街並みの方も軽く説明してあげようかなって思ったけど、もう小屋に戻りましょう。多分、騒ぎになるわ。」


「そ、そうですね!」


 今のところはまだあまり騒ぎにはなっていないけど、向こうの方で『なんだあれは?』みたいな声が聞こえたから、様子を見るために近寄ろうとする街の人とかが見張り小屋の方まで来ちゃうかもしれないからね……そこにこんな服着た女の子がいたらさらに騒ぎになっちゃう。そうだ、今度、セシリアさんに服の話をしよう。


 カツンっ


 あれ? なんか蹴っ飛ばしちゃ……ダイスぅぅぅぅ……!?

 六面ダイス!! Youは何しにこの場所へ!? 出目! 出目の意味は!? 5ってどういう意味!? 神様!! ダイスの意味は公言すべきです! いや、確かに進行表とかだと言えないのはわかりますけどもおおおおお!


「ミコちゃん、何してるの? 早く……あら。これ、サイコロ?」


 物理。物理的にあるんですね、そのダイス。私の見間違いなんかじゃないんですね、そのダイス!


「そういえばリディア様が貴方で遊んだ時もサイコロがって言ってたわね。誰かが落として言った物かしら? でも、私が出入りする時にあったことはないし……何かしら、これ。」


 それは私が聞きたいんですよ! 何であるのか! 何の意味があるのか!


「一応、拾っておきましょうか。それにしても貴方、サイコロにトラウマでもあるの? 別になんてこともないただのサイコロだけど。」


 ええ、ええ。サイコロはサイコロです。ダイスはダイスです。何の変哲もないからこそ、公平な判定道具として用いられるものですよ。だからこそ、怖いんですよ! 私は、ここが確かに存在はしているけれど、TRPGのシステムが組み込まれた世界であると考えているし、まるで判定に使われたような出来事を経験してるから! ある意味ではトラウマっていうのは、正解!!


「ふふっ、貴方の弱点、手に入れちゃったわね。大事にしましょう。」


 いや、なんかそれも違うんですけど……ま、まあいっか。セシリアさんがさっきのことを一瞬でも忘れてそんな笑顔を見せてくれるなら。


「ほら、早く。夜も遅いし、あの水の話は明日にしましょ。」


「そうですね!」


 もしもあのダイスが。何かを起こすダイスであったとして。即時反映ならもうとっくに起きていていいはず。それがないってことはこの後に何かが起こる前触れ。身構えても仕方がない。起きた時に対処する方針で、今は休んで、明日、今日あったことをセシリアさんとまとめよう!


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