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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
開戦の狼煙

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神様! その種族スキルは初体験です!

「ミコちゃん。夕ご飯美味しかった?」


「大変美味しゅうございました!!」


「それは良かったわ。」


 今日で監禁生活3日目。といっても初夜はリディアさんが現れてどっと疲れて眠ってしまったから初夜という感覚がなく、2日目は自分でリディアさんを呼んで話し終わったらどっと疲れて寝てしまったから、本日3日目が初めてゆっくり休めた監禁生活なんだけど。そう。3日目で昼間ゆっくり休んでてようやく気が付いたことがあるんだよね!


「ところでセシリアさん。今更なんですけど。この独房って言うか隔離小屋って言うか。ここって、ゼーレンのどこのあたりにあるんです? 私、よく地形わかんないんですけど。」


 覚えているのは城門をいくつかくぐったな、ぐらいで、後は森だったな~ ぐらい。でも森にしては明るいよね、ってイメージかな? しょうがないよね。目の前にセシリアさんという女神がいたんだもん。かすんで周りが見えなかったんだよ。決して動揺して見えていなかったわけじゃないよ! うん。


「ああ。ここね。第三区画……という言い方で貴方ってわかるのかしら?」


 そういえば私、公国にはそこまで詳しくない設定にしたっけ。この説明でわかるかと言われればわかる。公国はわき役ではあるけれど、TRPGの性質上、わき役だろうとNPCが話を持ち出す理由とかを作り込む必要性があるから例に漏れず設定がしっかりしている。城塞都市ゼーレンの構造はシナリオの舞台にできるようにしっかりルルブに書いてあったから、ざっくりなら大丈夫! ただ、この3日間でこの世界で見て話してルルブはあくまで概要としてしか役に立たないのも知ってるから、それをしっかりセシリアさんに伝えれる言葉にしないと。


「あ、はい! 大丈夫ですよ! えーっと、第一区画が山側にあるダムとかの治水領域、第二区画が外壁のある森側と市街地の間の区画、第三区画が市街地、第四区画が騎士団の防衛要塞ですよね!」


 城塞都市、というだけあってゼーレンは街そのものが要塞みたいな作りになってて、その一部が市街地、っていう感じなんだよね。第三区画は市街地と言っても畑とかもあって、現代日本の近郊都市のような風景って言う記述があった気がする。少し興味あるなぁ。


「概ねあってるわ。で、ここは第三区画と第二区画の間にいくつかある見張り小屋の内、比較的第三区画に近い小屋の1つなの。一応はね、私、ゼーレンの第三区画の防衛を任されてる小隊の小隊長ではあるから。だからそのうちの1つを独断で使わせてもらってるのよ。」


 あれ? セシリアさん、小隊長? というかゼーレン騎士団の防衛体制なんてルルブには書いてないから知らないよ! これは追加サプリでしょ、絶対! それにしても、セシリアさん、今まで結構誠実そうに見えてたけど、意外と使えるものは使っちゃうタイプ……?


「あ、私でもこういうことするんだって思ったわね? するわよ。そうじゃないとスパイなんてやってられないでしょ。」


 顔に出てました? でもまあ、それはごもっともで……でも第二区画かぁ……記述の内容だけだと少し不安かな……聞いてみよう。


「でもそうなると、本格的に戦争が始まっちゃうとここも危なくなっちゃうんじゃないですか? 外壁突破されたら第二区画で戦うことになるんですよね?」


 そう。私がゼーレンの記述を読んで、あっ、この都市は外壁が破られたら第二区画で戦って市街地だけは守る、きちんとした街としての機能を維持するためのシステムが作られた「人」が計画的に作った都市なんだな、とは思った。でも逆に言えば、第二区画はいつでも放棄できるように作られている、ともいえる。そこにある見張り小屋だと、ちょっとね。


「その点は大丈夫よ。第二区画の一番外側の城壁は第四区画とつながってるから、防衛面ではかなりしっかりしてるのよ。ここ。例え城壁を抜けられても第二区画が十分広くとってあるから第三区画に侵入者が入ることは稀だしね。第三区画に近い見張り小屋ってかなり安全なのよ。」


「なるほど……」


 ……こうして聞くとゼーレンってきちんと10万の兵力で攻められても勝てる要素はあるのか。あのテキストだと、え? どうやって? ゼーレン防衛隊、そんなに強いの? としかならなかったけど、ゼーレン自体がしっかり防衛に適した作りになってて、公国にとって守る価値のある場所として確立させる都市運営をしているから、本国の加護も受けやすくなってるのか……ここを管理してるのは確か、騎士団支部長のゲルドさん。10年だっけ? この都市にきてから権限握って防衛体制整えてるみたいな文章だったような。独裁者、って書いてはあったけど、守れる体制にしてる凄い人なのかも。


「そうだわ。百聞は一見に如かず。小屋の外の様子だけでもじっくり見てみる? 今は夜だし、リディア様には実質許可が取れてるようなものだから少しぐらい貴方の姿が見られても何とかなると思うし。もちろん、私から離れないことが条件だけれどもね。」


「え! いいんですか! やったーーーー!!」


 正直嬉しい! セシリアさんと2人きりのスイートな生活もなかなか良かったけどやっぱり外の空気はたまには吸いたいもんね! セシリアさんが檻の鍵開けてくれ……ん? セシリアさん? もしかして……


「どうしたの? 出ないの?」


「あの。鍵は?」


「昨日は小屋にはかけたけど、ここにはかけていないわよ?」


 セシリアさんの私への信頼度たっか! え? 私が何か仕込むとか考えなかったの?


「だってあなた。この小屋に何があって何ができるのか、すらわからないでしょ? 持ち物も一番最初に確認して服が変、ぐらいで何もなかったし。だから貴方の山賊に襲われたからここに来た方法がわからない、も辻褄があってると思ったわけだし。そんな状況の人間にされたら困ることなんて、勝手に出ていかれることぐらいよ? 過度に拘束する理由がないわ。」


 た、確かに。おっしゃる通りです……


 セシリアさんが扉を開けてくれる。あ、その手招きはおいでってことですね! わかりました! あれ、とまれとまれしてる? すみません、はしゃぎすぎましたね! 歩いていきます!


「おおお! これが、これが外!」


 でも無理! 視界が広い! いや、その。広いって言うのは日本の街中みたいに建物がいっぱいで見通しが、っていう意味でだよ? そして、空気が澄んでる! 夜らしい夜!


「ミコちゃん、その、静かにはしてもらえると嬉しいかな……?」


 その気持ちはよくわかります、しかし! 木で作られて素朴なお家が窓の明かりのおかげでチラホラ見えて! 今出た小屋から向こう側はきちんと行き届いた森、というより林が広がっている光景って、今の日本では見られないんですよ!? 日本の山奥の本当の田舎って、森のお手入れが最近悪くって倒木とかそういうのも多いから! しかもしかも! こんなにすっきり木々の間から空が……うん?



「えーっと。セシリアさん。」


「どうしたの、ミコちゃん?」


「……お空のあれは何でしょう?」


 星はとてもきれいです。でも、なんか変な、うにょうにょした水の塊みたいなの何? しかも少しずつ大きくなってる。どこかから流れ込んでるようにも見えるけど、遠すぎてよくわからないなぁ……ゼーレン特有の何かなのかな? 追加サプリには書いてあるものなのかな?


「え……えええ!? な、何!? 何、あの、水の塊は!? あんなの巨大な水の塊が降ってきたら街が洗い流されちゃうわ! ……まさか……魔法!? ゼーレン防衛隊が動いたの!?」


 えええええええ!? ちょ、ちょっと待った! このアルバーン戦記TRPG2.0の世界に、魔法なんて概念あったっけ!? セッションで見た覚え全然ないぞ!? 思い出せ思い出せ思い出せ! ……ハッ!


『魔法』

 この世界では「魔力」という動力源やそれを保管する「魔石」という鉱石が存在する。しかし、他のファンタジー世界における「魔法」という超常現象は観測されていない。しかし、「魔力」を動力源にした「物理現象」そのものが行えるかどうかの実験は行われており、それらが「魔法」と呼ばれている。

 この魔法を使うためには専用の機械を使うのが一般的だが、強化人間達は自らの魔力を用いて「物理現象」を引き起こすことが可能だ。


 魔法だぁぁぁ!? そりゃそうだよぉぉぉぉぉ!! 強化人間出てくるシナリオ、私、一回も経験してないから魔法がどんな規模かなんて知るわけないじゃああああああん!! 魔法ってこんなに大規模なのぉぉぉぉぉ!?



 この大規模な水の塊がゼーレンの森の上空に現れる数時間前のゼーレンの森、帝国軍野営地の武器倉庫では別の水の塊が出現していた。


「その軍服、ゼーレンの」


「口よりも体動かすべきだね。来世に生かそうね?」


 帝国兵の喉元にナイフが付きたてられた、その次の瞬間にはその帝国兵の首と胴体は綺麗に別れ倒れ、転がる。武器倉庫の床を染める赤い水たまりがまた範囲を広げる。

 一方、この水たまりを作った主であるリディアはその水たまりや肉片に一切興味を持たず、積まれた木箱をかぱかぱと開け、中身を手に取り精査していた。

 トーマスに襲うと宣言してまもなく、彼女は暗闇に紛れて見張りの兵を一蹴し、後片付けをすることもなく、周囲に血だまりを作りながら武器倉庫への侵入をやすやすと成功させていたのである。


「あ~ これだね。帝国国内で見た銃と同型だね……ん? なんか変な物がつながってるわね。なるほど、これがあの子の言ってた改造、ね。」


 1つ1つ、木箱を開けて同じものかを確認していく。むろん、外の惨状が惨状である。異変に気付いた帝国兵が現れるが


「こ、このあく」


「はい、うるさいよ。」


 リディアはその声だけで位置を把握し、自分の足にセットしていた投擲用のナイフを投げた。そのナイフは正確にその兵の頭部を刺し、絶命させた。


「ああもう。鬱陶しいなぁ……全部一緒みたいだしこの辺のでいっか。」


 リディアは兵士の方に見向きもせずに、その『玩具』を2本、自分の背中のホルダーに収める。そして、柄に箱がついたような武器を指先で少しひねるように弄る。すると箱が付いていない方から棒が伸び、その棒から光の刃が形成され、光の手斧にも見えるような形状で落ち着いた。


「マジックポッドちゃんの斧モードだ! 実際使うと無駄だらけなんだけどやっぱりこういうのはこの形状が一番かっこいいよね。」


 リディアは大きく振りかぶり、自分がくすねた以外の武器に向かってその斧を振り下ろすと、武器倉庫は爆発音とともに煙に包まれた。


「ま、こんなもんかな? あ~ 玩具もなかなか面白そうだし、この後の楽しみがあるってのも格別だね~ あっと。そろそろトーマスに指示出さないとね。」


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