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第31話 七宮さんに癒されたい

《次の日の朝》


「じゃあ。私は帰るわね光君。なんだか変な者も居なくなったみたいだし」


「おうっ! サンキューな。彩葉、また学校でな」


「ええ…それよりも何で葵さんはあんなに落ち込んでいたのかしら?」


 原因は彩葉に取り憑いていた何かだとは言えるわけもない。本人も葵にしていた事をいまいち思い出せないみたいだし。ここは穏便に事を進めよう。


「………さぁ? よく分からん。そのうち元気になるんじゃないか? 葵は明るい女の子だからな」


「そう。それなら安心ね。じゃあまた学校でね。光君。さようなら」


 昨日の夜。俺の部屋で彩葉の浄霊に成功した後。無気力状態になった葵は彩葉に抱き抱えられて自室へと戻って行った。


 そして、その夜は久しぶりに快眠で一夜を過ごし。早朝早くに彩葉が帰るのを見届けた。


「……夏本番の明るい陽射しだな。これも喜一と百合ちゃんのお陰か。よしっ! 今日も1日頑張るか」


 俺は1人太陽を見上げてそう告げると自室へと戻り学校へと行く支度を整え始め……


ガラガラガラガラッ!

「光……」


 始めようとした途端。制服姿の葵が俺の部屋に飛び込んで来た。どこの○ケモンだよ。


「ん~? 何だよ。葵~、朝から元気ないけど何かあったのか?」


 俺は昨日の浄霊の瞬間に見た光景など一切覚えていないかの様に振る舞う。


「…………どこまで見ちゃったの?」


「何が?」


「な、何がってっ! 私の此処ここよっ! どこまで見ちゃったのよ?」


 葵はとある一点を指差すと赤面しながら俺に質問してきた。


 ……コイツ朝から本当に元気だな。浄霊の効果か?


「………いや。何も見てな……」


「嘘よっ! 昨日の夜。光は私の全てを見ちゃたじゃないっ!」


 ……コイツ。人があえて避けている話題に自分から特効してきやがった。


「ん~、覚えてないな。それよりも制服に着替えるからあっち向いててくれるか? 着替えずらいからさ」


「嫌よっ! 私も光の全部を見せなさいっ! そうじゃないとあまりにも不公平だわ……私なんて……あんな。あんな瞬間を光に見られるなんて……一生の恥じよぉ//// 責任取りなさい。光~」


 葵は涙目になりながら俺の腹部に抱き付いて来た。


 泣くか怒るか恥ずかしがるか何れか1つに絞ってほしいな。


「……まぁ、あれだ。あれは全て妖怪のせいだ」


「はっ? 妖怪? ウォッチってこと?」


「何だそれ?……いや。俺達が罰当たりな事をしたせいでむくいを受けたってだけさ。だからあんまり気にするなよ。葵……あの姿可愛かったからさ」


「……か、可愛かった?……あんな姿が?……へ、変態っ! 光のど変態っ! 何考えてるよおぉ! 責任取りなさいよね。私に対しての全ての責任っ!」


「ん? あぁ、ずっとな。それよりもちゃんとパンツは履いとけよ。葵……昨日見たいにあんな姿で人前に……あっ!」


 余計な事を言ってしまったと今更気づく俺。


「……へ、変態~! やっぱりちゃんと覚えているんじゃないっ! 最低っ! 死ねっ! 変態幼馴染み~!」


 浄霊完了した次の日も金髪ギャルの葵さんはとても元気だった。


《黎明高校 A教室》


 俺の部屋でのやり取りの後。何故か俺が放課後は葵と共に時間を共有するという、よく分からない条件を突き付けられて和解した。


 いったい何が目的なのか全く読めんが。まぁ、葵の機嫌がそれで良くなってくれたのなら良かった。


「……光。今日からお互いのあれ確かめ合うんだからね。それで許してあげるんだから」


「まだ根に持ってるのかよ。別に俺は葵の事は変なんて全然思ってないからな」


「そ。そう。なら今日の放課後は私とファミレスで……」


「おやおや? そこに居るのは我が親愛なる親友の汐崎 光と外道ギャルビッチもどきの織姫 葵ではないか」


 大仰おうぎょう台詞せりふで登場したのは俺の親友。五月女さおとめ喜一きいちだ。


「腐れ外道五月女さおとめ喜一きいち……」


 そして、喜一の姿を確認した瞬間。葵は猫の様な鋭い目付きで喜一を見つめ始めた。


「おう。喜一。おはようっ! 昨日は色々ありがとうな。助かった」


「いやいや。我が親友たる光が困っていれば助けるなど当たり前の事よ……してギャルビッチはと……ほう。すっかり憑き物が落ちているか。やはり付いてたのは別の者の様だな。光よ」


「……そうか。やっぱり葵じゃなかったんのか。(彩葉には悪い事をしてまったな。後でお礼しないとな)」


 などと俺が考えていると葵が喜一の前に1歩前に出た。


「誰がギャルビッチ擬きよ。腐れヘタレ外道。何、私の光に気安く話しかけてるのかしら?」


「……貴様。腐れビッチ……相変わらず言葉遣いがなっていないな。七宮を見習え。貴様もあの様な可憐さを身に付ければ男が離れるぞ」


「な、何ですってえぇ?! このナンパ男っ!」


「おおっ! 始まったっ! 始まったっ! Aクラス名物。罵倒戦」

「今日のオッズは幾らかける? さぁっ! かけたかけた~!」

「葵様。素敵ですわ~!」


 そして、今日も今日とて始まったのは葵と喜一の罵倒大合戦。


 毎朝、これに始まり。うちのクラスの奴等はどちらが勝つかで賭け合いをする。昼飯のデザートをかけた賭け合いを。


 そして、俺はそんなお祭りに参加したくはないので静かに自分の席がある窓際の席へと移動した。


「……今日も始まったか。毎朝毎朝本当にアイツ等飽きないよな。全く」


「あら? おはようございます。汐崎君」


 俺に朝の挨拶をしてくれたのは俺の憧れの人。七宮ななみや・アスタナシア・雪乃ゆきのさんだ。


「おはよう。七宮さん。今日も暑いね」


「はい。そろそろ夏本番ですし。どんどん暑くなりますね……フフフ」


 清楚だ。癒される……心が浄化されるな。


 思えば6月に自分の部屋のエアコンが壊れた後、色々な事が起き過ぎていた。


 葵の奴が俺の部屋に好き勝手出入りする様になり。葵の奴がどんどん可愛いく大胆になっていき。葵の身体の隅々まで見てしまったり。


 筋骨隆々のゴリラカメラマンとやたらと密着してくる現役のトップアイドルの元でアルバイトをしたり。


 秋月神社の管理人の娘が何かに取り憑かれ。数日間葵と俺の部屋に住み着いて。今日の早朝やっと帰ったりと忙しい日々が続いたな。


「ふぅー……」


「……なんだが凄く疲れていますね。汐崎君。日頃の疲労貯まってらっしゃるんじゃないですか?」


「あー、それ。喜一にも同じ事を言われたな……最近やたらとイベントが多いからさ。そのせいかもな」


 そう。最近は本当にイベントのオンパレードだ。これも全て葵と再び仲良くなってから……楽しい日々を送れている。


「……そうなんですか。楽しい日々を」


「へ? 俺、心の声漏れてたか?」


「いえいえ。そんな事ありませんわ。(バッチリ丸聞こえでしたが)……では今週の土日のどちらかにでも私とリフレッシュしに行きませんか?」


「七宮さんとリフレッシュ?……何だ? またショッピングモールにでも行くのか?」


 以前。葵を含めた3人で行った七宮さんの巣に。


「ん~それも良いのですが。やはり夏と言えば水着。水着といえばプールです。ですので今週の土日は私と共に貸し切りで七宮プールへとリフレッシュしに行きましょう。汐崎君」


「七宮さんと俺がプールだと?」


 ……これはまた一波乱起こりそうな予感がプンプンしてきたんだが。憧れの七宮さんの誘い断れるわけがない。

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