エピローグ
サンクチュアリ人質事件
二〇××年七月×日。複合商業施設サンクチュアリで、過激派グループのラクタリストの残党(以下、犯行グループ)が人質を取って立て籠り、現在監獄に収監されているラクタリストの元指導者エヴァン・ペンドリーの解放を要求するという事件が起きた。
死者は七名。うち三名はサンクチュアリで雇用されている警備員であり、犯行グループが拳銃により殺害した。残りの四名は犯行グループの構成員であり、現場に偶然居合わせたヘンシェル教会のソニア・ヘンシェル氏と戦闘になった際、犯行グループの首謀者であるフィリップ・ギランが意図的に爆発を起こし、その爆発に巻き込まれたことによるとされている。
負傷者は三名(犯行グループを除く)。サンクチュアリの支配人であるコリー・ダグラス氏と二名の警備員であった。いずれも拳銃による負傷だが、命に別状はなかった。その他の人質には怪我人はなく、全員が無事救出された。
犯行グループについては、ソニア・ヘンシェル氏と有志の活躍により、フィリップ・ギランを含む九名(死者を除く)が全て捕縛された。今後は、拳銃や爆発物の入手経路などを犯行グループから尋問して調査を進めていくと連盟警察は方針を表明している。
また、今回の事件では犯行グループのみならず、犯行グループに抵抗したソニア・ヘンシェル氏達も拳銃を使用したことが判明している。ソニア・ヘンシェル氏本人は威嚇のために拳銃を構えるに留めたが、事件解決に協力したソニア・ヘンシェル氏の友人とされる人物は実際に発砲しており、また犯行グループの一人に拳銃で怪我を負わせたとのことだ。とはいえ当該二名による拳銃の使用は、虚空間であるにもかかわらず魔術及び霊能力が使えないという特殊な状況下においては事件解決及び人質の救出には必要な手段の一つであった。また彼女達が連盟警察の捜査に対して非常に協力的であったことも考慮し、今回は不問とすると連盟警察は発表した。
さて、この協力者についてだが、ソニア・ヘンシェル氏は正体を明かさず、またヘンシェル教会の教会員であることを否定した。連盟警察の会見においても当該人物の詳細は伏せられた。
取材により、救出された人物から証言を得たところ、ジェーン・ドゥと名乗るアジア系の若い女性であることが判明した。当時の彼女は全体的に黒い服装であり、剣状の警棒等で犯行グループを倒したとのことだ。彼女が事件現場の五階イベント会場に訪れた後、換気口を通じて大量の小麦粉が噴射された。粉塵爆発を誘発する銃火器の使用を犯行グループに控えさせるためだろう。
煙幕が立ち込める中、華麗な剣捌きで敵を討つ名無しの女性。彼女は遠く離れた東洋の国、日本で生まれたニンジャの末裔なのかもしれない。連盟警察や防犯組織だけでなく、ブラックニンジャガールもメイスラの治安を陰ながら守ってくれていることに感謝したい。
真守はゼーラー家でサンクチュアリ人質事件に関する記事を読み、大声を上げた。
「もうサンクチュアリに行けないじゃないですかぁ!」




