悲しくも愛しい記憶
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
病院内で使うスリッパの音が、俺の歩みに合わせて階段に響く。足も小さくなってたなぁ、そういや。いつも小さかったスリッパにかなり余裕があるもんな。
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
今振り返って思えば、俺の人生とやらは実につまらない人生だったと思う。あくまで振り返って見ると、だが。その頃はもちろん楽しかったけどね。
小学校の頃から強面で身長も高く、ガタイもよかった俺はみんなから恐れられていた。同級生はもちろん、先生、保護者にも腫れ物のように扱われた。少しでも怒らせたら暴れられると思ったのだろう。まぁ、実際に暴れるのだが。
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
中学生になり、好きな子に告白しようと体育館裏に呼び出したら、その子は暴力されると思ったのか。男子生徒をたくさん引き連れて俺に何の用なのかと投げかけてきた。あの時の男子生徒は「この子は俺が守る」と言わんばかりの目をしていた。説明するも納得してもらえず、挙句「誰があんたなんかと!」と言われる始末。あれにはさすがにキレかけたなぁ。
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
高校生。それまでの経験から大人しくしようと思い、黒縁メガネと長い前髪で顔を隠し、なるべく目立たないように過ごした。その結果、一番楽しいはずの高校生活は最悪と言っていいほど何もなかった。本当に。これマジで。まぁ、やることなくてずっと勉強してたから成績も良く、大手企業と言われる会社に入ることができたのだけれど。
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
大学にも行かず、毎日残業に追われながらも楽しかった仕事。あぁ、仕事は凄く楽しかったな。俺の人生の楽しみは仕事だったのか。あの嫌な上司も、今思えば愛おしい。いや、ホモじゃねぇよ?
ペタン、ペタン、ペタン、ペタン…
そして、このザマさ。
おぉ、ジーザス。俺が何をしたって言うんだ。俺に何を求めてるんだ。どうして俺なんだ。世の中には女の子になりたくて仕方のない男だっているのに。男になりたい女の子だっているのに。
俺は違う。確かにあの顔で苦労はしてきた。迷惑だと思ったこともある。だが32年も付き合ったんだ。根っこからは嫌いになれねぇよ。誰が何と言おうと、俺は好きだったんだ。
ペタン、ペタン、ペタン…ペタッ
ついた。ここを開ければ屋上だ。
未練が残るようで残らない人生だった。死ぬ時はベッドの上で「いい人生だった」と笑顔で逝きたかったんだがなぁ…それまで待つって手もあるが、あいにくこの身体じゃ俺には無理だ。
せめて、笑顔だけでも浮かべて。
この世界とおさらばしようじゃないか。
俺は、目の前にある大きくて重々しい扉に手を掛けた。
すみません、この話を入れるの忘れてました。
この次に、分岐点を設けたいと思います。
次が正規ルート。
その次が鬱ルート。
余談ですが、写る〜とと変換で出て来た時は思わず和みました。
では、次の更新までお待ちください。
これからも、どうぞよろしくお願いします。




