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葛藤の末に

ほんの少しだけ(?)鬱展開です。苦手な方はすみません。





「治らないかもしれない」と言われてから、俺は何ひとつノブの話を聞いていなかった。いや、聞けなかった。はっ、と気づいた時には待合室で、看護師たちが俺の様子を疑わしげに見ていた。彼らは俺を見て何を思うのだろうか。まぁ、そんなことはどうでもいい。



「そうかぁ。治らないのかぁ。」と独りごちる。無論、誰に向けて言ったわけでもないので、答えが返ってくることはない。



しかし、ノブは治らないとは言っていない。治らないかもしれないと言ったんだ。頭の中の俺が、俺を励ます。

いや、末期ガンの患者にも治るかもしれないと言うぞ?と、考えたくないことを言ってくる俺もいる。

2人は勝手に争っているが、それどころではないのだ。


治るなら、それでいい。また同じ生活に戻るだけなのだから。

だけど、もし治らなかったら?俺は女として生きて行くことになる。それもまぁいい。いや、厳密には良くないが割り切ろうと思う。


だが、もし女として生きていて。数年、あるいは数十年後に男に戻ったとしたら?女の癖が身についてしまって、男の身体で女々しい行為を繰り返したら?

答えは簡単。味方になってくれる人がいなくなる。


またその逆で、男に戻れたとしても。また再発して女になった場合は?それを数十回以上と繰り返したら?

俺は、壊れてしまうかもしれない。とてもじゃないが、心が耐えられない。


支え。そう、支えが必要だ。

俺の現状を知ってなお、俺を毛嫌いせず、俺に気も遣わず、俺と対等に、かつ親身になってくれるような支えが。

もちろんそんな美味しい話があるわけではない。もしその美味しい話が落ちていたなら、俺は成り振り構わず飛びつくだろう。

悪徳商法に騙される?いいとも。それでも見捨てずにいてくれるのなら。

身体を相手に好き勝手にされる?構わない。それで満足してくれるのなら。




俺には、もう、それ以外に何もないのだから。



幸い、この身体は美しい。整った顔立ちに、女性らしい曲線。さらに、若い。これは大きい。若くて綺麗な女なら、男は黙ってないだろう。そうなれば、俺の支えになってくれる。ギブアンドテイクだ。俺は身体を差し出し、相手は俺を支えてくれる。




というか、いっそ死んでしまった方が楽なんじゃないか?




そうだ。その方が悩まずに済む。人を迷惑をかけることもない。いや、飛び降りにしても首吊りにしても死体の処理には手を焼かすことになるから、迷惑はかかるな。しかしそれでも、最善の案のように感じられた。





そうか、死ねばいいのか。簡単だったな。




あっさりと決まった。この病院は5階建てだから、簡単だろう。下は確か真っ白なタイルが地面に敷き詰められていたはず。即死とはいかなくとも、死ぬことはできるだろう。最悪、植物状態か。確か臓器提供のカードは財布に入っていたから、脳死が確認されたらすぐに機器を止めてくれるだろう。




決まった。

固く決意した俺は、病院の階段を登っていく。


目指す先は、屋上だ。






ここから次の話で1つ分岐点を作ろうと思います。

次回投稿します話が正規ルート。

その次に投稿します話がアナザールートとさせていただきます。

ちなみにアナザールートに関しましては、読まなくとも本編に支障のないように致しますので、飛ばしていただいても結構です。


では、次回の投稿日までお待ちください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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