女神の信託
翌朝。
澄み切った青空の下、彩乃と百合はレオンに案内され、王城の隣に建つ大神殿へと足を運んだ。
純白の大理石で造られた神殿は、朝日を浴びて神々しく輝いている。
巨大な扉が静かに開くと、中には厳かな空気が流れていた。
長い礼拝堂の先には、円形の祭壇。
その中央には、淡い光を放つ巨大な魔法陣が刻まれている。
周囲には神官や巫女たちが並び、国王やレオンも見守っていた。
神殿長が一歩前へ出る。
「彩乃様、百合様。」
「祭壇の中央へお進みください。」
二人は静かに歩き、祭壇の中央へ並んだ。
「それでは、儀式を始めます。」
神殿長が杖を掲げる。
祭壇全体が白く輝き始めた。
淡い光が床から立ち上り、彩乃と百合を優しく包み込む。
神官たちは一斉に祈りを捧げた。
「女神よ。」
「どうか、この者たちをお導きください。」
次の瞬間。
神殿中がまばゆい光に包まれた。
誰もが目を細める。
やがて、優しく透き通る声が神殿いっぱいに響いた。
『我が愛しき子らよ。』
その声に、神官たちは驚きの表情を浮かべる。
「女神様のお声だ……。」
『彩乃。』
『百合。』
『あなたたちは、確かに私が選びし者。』
彩乃と百合は自然と跪いた。
『聖騎士。』
『聖女。』
『そして、二人が力を合わせる時、この世界を導く勇者となる。』
国王は静かに目を閉じた。
「間違いなかったか……。」
その瞬間だった。
祭壇の奥に置かれていた二つの台座が、淡く輝き始める。
カタ……。
ひとりでに震え始めた武器は、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。
一振りの剣。
一振りの杖。
剣は、まるで澄み渡る空をそのまま閉じ込めたような、透明なブルー。
刀身の向こう側が見えるほど透き通り、内部には光が静かに流れている。
美しく、神秘的な聖剣だった。
もう一つの杖は、桜色にも似た透明なピンク。
杖全体が宝石のように輝き、先端には光の結晶が浮かんでいる。
幻想的な聖杖だった。
二つの武器は、まっすぐ彩乃と百合の前へ飛んでくる。
「えっ……!」
彩乃が思わず両手を伸ばす。
聖剣は吸い寄せられるように彩乃の手へ収まった。
同時に、聖杖も百合の手へ優しく舞い降りる。
握った瞬間。
ブワッ!
眩い光が神殿中へ広がった。
彩乃の周囲には蒼い光。
百合の周囲には桃色の光。
二つの光は天井へ昇り、やがて一つに重なり合う。
神殿中が静まり返った。
神殿長は震える声で告げる。
「聖剣が……。」
「聖杖も……。」
「自ら主を選んだ……。」
神官たちが一斉に跪く。
「奇跡だ……。」
「本当に女神様がお選びになった。」
彩乃は手にした聖剣を見つめる。
軽い。
まるで何年も使い続けてきたように手に馴染む。
「すごい……。」
百合も聖杖を見つめ、優しく微笑んだ。
「なんだか、温かい……。」
その時、再び女神の声が響く。
『彩乃。』
『百合。』
『あなたたちには、まだ長い旅が待っています。』
『悲しみも、喜びも、数え切れないほど経験するでしょう。』
『ですが、どうか忘れないでください。』
『あなたたちは、一人ではありません。』
『互いを信じ、支え合う限り、その光が消えることはありません。』
優しい声は、ゆっくりと遠ざかっていく。
神殿を包んでいた光も、静かに収まった。
国王は玉座の間とは違う、柔らかな笑みを浮かべる。
「彩乃。」
「百合。」
「改めて、この国は二人を歓迎する。」
「そして、勇者候補として、魔王討伐の旅を託したい。」
彩乃は百合と目を合わせる。
二人は同時に頷いた。
「「はい。」」
こうして、聖騎士・彩乃と聖女・百合は、女神に認められ、聖剣と聖杖を授かった。
世界の運命を変える旅が、いよいよ始まろうとしていた。




