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王都アストレア

 翌朝。


 冒険者ギルドの前には、多くの冒険者や街の人々が集まっていた。


「本当に王都へ行くんだな。」


「聖騎士様と聖女様か……。」


「まだ決まったわけじゃないって。」


 そんな声があちこちから聞こえてくる。


 彩乃と百合は新しく買った装備を身に着け、ギルドの前へ姿を現した。


 その隣には、青い地竜リラと桃色の地竜ルラがいる。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


 二頭は元気よく鳴くと、二人の前へ並んだ。


 ギルドマスターが笑みを浮かべる。


「もうすっかり仲良しだな。」


「はい!」


 百合がルラの首を優しく撫でる。


「すごくいい子です。」


 彩乃もリラの背中へ手を置いた。


「よろしくね、リラ。」


「キュイっ!」


 リラは嬉しそうに目を細めた。


「乗ってみてくれ。」


 ギルドマスターに言われ、二人は恐る恐る背中へまたがる。


「わっ……。」


「思ったより高い……!」


 しかし、リラもルラもゆっくりと立ち上がるだけで暴れる様子はない。


 むしろ、乗りやすいように姿勢を低くしてくれていた。


「賢い……。」


 彩乃が感心すると、リラは少し得意そうに鼻を鳴らした。


「キュイ!」


「それじゃあ、行ってきます!」


 百合が手を振る。


「気を付けてな!」


「また遊びに来いよ!」


 街の人々が笑顔で送り出してくれる。


 リラとルラはゆっくり歩き始め、やがて街道へ出ると少しずつ速度を上げていった。


 風が二人の髪を揺らす。


「気持ちいいね!」


「うん!」


 草原を駆け抜け、丘を越え、小さな川を渡る。


 途中では野ウサギが飛び跳ね、小鳥が木々の間を飛び交っていた。


「本当に平和な世界だね。」


 百合が空を見上げる。


「この世界を守る人たちがいるからかな。」


 彩乃も頷いた。


 その時だった。


 リラが急に立ち止まる。


「キュイ……。」


「どうしたの?」


 前方の茂みから、一匹のスライムが飛び出してきた。


「ピギィ!」


「スライム!」


 百合が少し驚く。


 だが、スライムは二人を見た瞬間に震え始めた。


「……?」


 彩乃が一歩前へ出る。


 するとスライムは、


「ピギッ!?」


 慌てて反対方向へ逃げていった。


「逃げちゃった。」


「私たち、何もしてないよね?」


 二人は不思議そうに顔を見合わせる。


 リラとルラは小さく鳴いた。


「キュイっ。」


「キュルルっ。」


 まるで「当然だよ」とでも言っているようだった。


 昼を過ぎる頃。


 遠くの地平線に、巨大な城壁が姿を現した。


「わぁ……。」


 百合は思わず声を漏らす。


「あれが……。」


「王都。」


 近付くにつれ、その大きさがよく分かる。


 高くそびえる白い城壁。


 巨大な城門。


 見張り台には何人もの兵士が立ち、町へ出入りする馬車が列を作っていた。


「すごい……。」


 彩乃も思わず見上げる。


 ルミナスの街とは比べものにならない。


 まさに、この国の中心だった。


 城門へ近付くと、衛兵が二人の前へ立つ。


「止まってください。」


 彩乃と百合はリラとルラから降りた。


「お名前を。」


「彩乃です。」


「百合です。」


 衛兵の表情が変わる。


「……お待ちしておりました。」


 城門がゆっくりと開いていく。


「国王陛下より、お二人を王城へご案内するよう命を受けています。」


「えっ。」


 二人は思わず顔を見合わせた。


「もう話が伝わってるんだ。」


「早いね……。」


 その時、立派な鎧を身にまとった一人の騎士が歩み寄ってきた。


 年は三十代ほど。


 腰には一本の長剣を下げ、堂々とした立ち姿だった。


「初めまして。」


 騎士は右手を胸へ当て、一礼する。


「王国騎士団、副団長レオンと申します。」


「国王陛下がお待ちです。」


「どうぞ、私についてきてください。」


 彩乃と百合は頷く。


「よろしくお願いします。」


 リラとルラも騎士の後ろを歩き始めた。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


 王都の大通りには多くの人が行き交い、美しい噴水や花壇が並んでいる。


 商人の威勢のいい声。


 子どもたちの笑い声。


 大道芸人の演技に集まる人だかり。


 二人は思わず辺りを見回した。


「すごい……。」


「見てるだけで楽しい。」


 やがて視界の先に、ひときわ大きな白亜の城が姿を現した。


 青い空へ向かって何本もの塔が伸び、庭園には色鮮やかな花々が咲いている。


「あれが……王城。」


 彩乃が小さく呟く。


 レオンは微笑んだ。


「ようこそ、王都アストレアへ。」


 二人はその言葉を胸に刻みながら、ゆっくりと王城への階段を上っていった。

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