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冒険者ギルド

 重厚な木の扉を押し開けると、二人の耳に賑やかな声が飛び込んできた。


 木製の長机では冒険者たちが昼間から酒を飲み交わし、壁にはびっしりと依頼書が貼られている。


 鎧姿の剣士、ローブをまとった魔法使い、獣人やエルフまでいる。


 活気に満ちた空間だった。


「すごい……。」


 百合は思わず辺りを見回す。


「本当に冒険者がいるんだね。」


 彩乃も静かに頷いた。


「女神様が言っていた世界、そのままだ。」


 二人は受付へ向かう。


 カウンターの向こうには、優しそうな笑顔を浮かべた女性が立っていた。


「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。」


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 百合が少し緊張しながら答える。


「あの……冒険者登録をしたいです。」


「かしこまりました。」


 受付嬢は二人を見比べる。


「お二人はご姉妹ですか?」


「はい。双子です。」


「なるほど。では、こちらへどうぞ。」


 受付嬢は二人をカウンター横の小部屋へ案内した。


 部屋の中央には、透明な水晶玉が置かれている。


「これは登録用の魔導水晶です。」


「初めて登録される方は、この水晶に手を置いていただきます。」


 百合が小さく息を呑む。


「これで何が分かるんですか?」


「お名前や年齢、それから……職業などです。」


 彩乃と百合は顔を見合わせた。


「じゃあ、彩乃さんからお願いします。」


 彩乃は水晶へ右手を乗せる。


 すると、水晶が淡い青色に輝き始めた。


 受付嬢が静かに告げる。


「『ステータス オープン』と唱えてください。」


「ステータス……オープン。」


 その瞬間。


 彩乃の目の前に、半透明の青いプレートが現れた。


「えっ……!」


 思わず目を見開く。


 そこには、自分の情報が整然と表示されていた。


━━━━━━━━━━━━━━

**ステータス**

━━━━━━━━━━━━━━


名前:彩乃


種族:人族


年齢:17


職業:???


Lv:1


HP:320


MP:980


筋力:A


防御:A


敏捷:B


魔力:S


称号

・異世界転生者


━━━━━━━━━━━━━━


「すごい……!」


 彩乃が驚いていると、百合も興味津々で覗き込む。


「あれ? 私には見えない……。」


 受付嬢が微笑んだ。


「ステータスプレートは、基本的に本人しか見えません。」


「見せたい相手がいる場合は、『公開』と念じることで共有できます。」


「逆に『非公開』と念じれば、すぐに元へ戻ります。」


「それと、『ステータス クローズ』で閉じられますよ。」


「なるほど……。」


 彩乃は小さく頷いた。


「便利だね。」


「じゃあ、閉じてみます。」


「ステータス クローズ。」


 プレートは光の粒となり、静かに消えた。


「ちゃんと消えた!」


 百合が感心したように声を上げる。


「次は私ですね。」


 百合も水晶へ手を置く。


「ステータス オープン。」


 今度は淡い桃色のプレートが現れる。


━━━━━━━━━━━━━━

**ステータス**

━━━━━━━━━━━━━━


名前:百合


種族:人族


年齢:17


職業:???


Lv:1


HP:260


MP:1,180


筋力:C


防御:B


敏捷:B


魔力:SS


称号

・異世界転生者


━━━━━━━━━━━━━━


「魔力、高っ!」


 彩乃が思わず声を漏らす。


「彩乃だって十分すごいよ!」


 二人は笑い合う。


 その様子を見ていた受付嬢は、水晶の変化に気づいた。


「……あれ?」


 水晶の中心に、二つの紋章が浮かび上がる。


 一つは、翼を広げた剣。


 もう一つは、光輪に包まれた杖。


「こ、これは……!」


 受付嬢の表情が一変した。


 慌てて奥の部屋へ駆け込む。


「ギルドマスター!! 至急お願いします!」


 数秒後。


 奥から大柄な男性が姿を現した。


 白髪混じりの髪に鋭い眼光。


 歴戦の冒険者という風格を漂わせている。


「騒がしいな……。」


 しかし、水晶を見た瞬間、その目が大きく見開かれた。


「馬鹿な……。」


 彼は信じられないものを見るように、二人へ視線を向ける。


「君たち……名前は?」


「彩乃です。」


「百合です。」


 ギルドマスターはゆっくりと頷く。


「間違いない。」


「君は……**聖騎士**。」


 彩乃が目を丸くする。


「え?」


「そして君は……**聖女**だ。」


 百合も息を呑んだ。


 ギルド内のざわめきが、いつの間にか静まっている。


 誰もが固唾をのんで、その言葉を聞いていた。


「聖騎士……?」


「聖女……?」


 二人は顔を見合わせる。


 まだ、その肩書きがどれほど特別なものなのかを知らない。


 だがギルドマスターだけは確信していた。


(まさか、この時代に二人同時とは……。)


 彼は静かに息を吐く。


「受付。二人の冒険者登録を進めてくれ。」


「ただし、この件は私から王都へ直接報告する。」


「は、はい!」


 こうして、彩乃と百合は正式に冒険者としての第一歩を踏み出した。


 そして、その知らせは王都へ向けて、早馬よりも速い魔法通信によって送られようとしていた。

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