表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/20

国、できちゃった件☆

 ギルドはその日から、少しだけ騒がしさの質が変わった。


 理由は単純。


 魔王が普通に椅子に座っているからだ。


「……まだいるのか、あれ」


「いるな」


「魔王ってもっと怖いものじゃなかったか?」


 冒険者たちの視線の先で、魔王は普通に水を飲んでいた。


「いや……落ち着くなここ」


「なんでだよ」


 百合が即座に突っ込む。


 彩乃は隣で魔王を見ながら、ふと呟いた。


「じゃあさ」


「ん?」


「戻る場所、ここでいい?」


 魔王が一瞬止まる。


「え?」


「いや俺魔王なんだけど」


「知ってる」


「知ってるんだ」


 彩乃は真顔のまま続ける。


「でも城、もう誰もいないし」


「手下も片付けたし」


「空っぽだった」


 百合が資料をめくる。


「あと、あの城かなり不安定だったよね」


「崩れかけてたし」


「ちょっと待って」


 魔王が手を上げる。


「俺の家、扱い軽くない?」


---


 数日後。


 北西の霧の谷。


 かつて“魔王城”と呼ばれた場所。


 そこに立っていたのは――


 白い城だった。


「……え?」


 百合が言葉を失う。


「何これ」


 魔王も固まっている。


「俺の城どこいった?」


 そこにあったのは、黒ではなかった。


 純白。


 雪のように白い外壁。


 青い魔力結晶が装飾のように輝き、庭には氷の花が咲いている。


 門の上には新しい紋章。


 青と桃が交わるような光の印。


 彩乃は普通に頷いた。


「うん、直した」


「直したって何を!?」


 百合が即ツッコミ。


 ライが横で誇らしげに尻尾を振る。


「グルル」


 リラとルラも走り回っている。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


 魔王は頭を抱えた。


「いや……え……何これ……」


 彩乃は少し考えてから言った。


「住みやすくした」


「魔王城を!?」


「うん」


 百合が冷静に分析する。


「むしろリフォームじゃなくて再設計だよね」


「それだ」


 魔王はゆっくり振り返る。


「俺の立場は?」


 彩乃は即答。


「一緒に住む?」


「急に人生設計変えないで」


---


 その夜。


 王都のギルドに報告が届く。


「魔王城が消失」


「代わりに未知の王国領域が発生」


「名称不明」


 ギルドマスターは報告書を読みながら固まった。


「……は?」


 受付嬢が静かに付け加える。


「現地住民からの報告では」


「“アイシクル王国”と呼ばれているそうです」


「誰が名付けた?」


「たぶん……あの二人です」


 ギルドマスターは天井を見た。


「もう……いいだろこれ……」


---


 白い城の中庭。


 彩乃は空を見上げていた。


「ここ、いいね」


 百合が隣で頷く。


「うん、落ち着く」


 魔王はその後ろで立ち尽くしている。


「俺の人生どこ行った……」


 ライが足元に寄る。


「グル」


 リラとルラが駆け回る。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


 その光景を見て、魔王は小さくため息をついた。


「……まあ」


「悪くはない、か」


 彩乃が振り向く。


「でしょ?」


「いや納得はしてないけど」


 百合が笑う。


「でも平和ではあるよね」


 魔王は空を見上げる。


 白い城。


 新しい国。


 そして、隣にいる彼女。


「……ほんとにさ」


「なんでこうなったんだろうな」


 誰も答えない。


 ただ、風だけが白い城を通り抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ