まおうじょうに行こう!
王都アストレアの朝は、いつも通りだった。
いつも通り……のはずだった。
だがギルドの空気だけは、明らかに違っていた。
「魔王城への調査依頼、最終確認だ」
ギルドマスターの声は重い。
机の上には一枚の古い地図。
中央に黒く塗りつぶされた場所。
“魔王城”
「調査隊は誰も戻っていない」
「最後の記録は“城が動いた”だ」
「動いた?」
百合が首をかしげる。
「城が?」
ギルドマスターは頷く。
「魔力で構築された城だ。生きていると言われている」
彩乃はその言葉を聞いて、少しだけ目を細めた。
「面白いね」
「面白いで済ませる話じゃない」
ギルドマスターは即答した。
だが。
その隣で。
「魔王城って……ご飯あるのかな」
彩乃がぽつりと言った。
「今そこ?」
百合が突っ込む。
ライが横で尻尾を振る。
「グルル」
ルラとリラも同意するように鳴いた。
「キュイっ!」
「キュルルっ!」
ギルドマスターは一度天を仰いだ。
「……お前たちの基準はもう分かった」
そしてため息。
「行くんだな」
百合は少しだけ真剣な顔になる。
「行きます」
彩乃も頷く。
「魔王城、見てみたい」
ギルドマスターはしばらく黙っていたが。
やがて諦めたように笑った。
「なら止めん」
「ただし条件がある」
全員が顔を上げる。
「これは討伐依頼じゃない」
「確認依頼だ」
「魔王が生きているかどうか、それだけでいい」
彩乃は一瞬だけ止まり。
「じゃあ軽いね」
「軽くない」
百合が即否定。
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その日の午後。
王都の門の前。
リラ、ルラ、ライが並ぶ。
そして彩乃と百合。
背後には王都が広がる。
「行こうか」
彩乃が言う。
「うん」
百合が頷く。
ライが一歩前に出る。
「グルル」
その目は、いつもより少しだけ鋭かった。
リラが鳴く。
「キュイっ!」
ルラが続く。
「キュルルっ!」
そして一斉に走り出す。
王都の外へ。
まだ誰も知らない場所へ。
魔王城へ。
その先に“何が待っているか”も知らずに。




