ライさん、仲間に
王都冒険者ギルドは、朝から異様な空気に包まれていた。
「北部の神獣、見た者がいるらしいぞ。」
「フェンリル級って噂だ。」
「出たら国家案件だろ……。」
そんな騒ぎの中、扉が開く。
入ってきたのはいつもの二人。
彩乃と百合、そしてリラとルラだった。
「おはようございます。」
受付嬢は一瞬で顔を引きつらせた。
「あ、おはようございます……。」
ギルドマスターがすぐに執務室へ呼び出す。
「実はな。」
開口一番、重い声だった。
「北部で神獣の目撃情報がある。」
「フェンリルだ。」
「フェンリル?」
彩乃が首を傾げる。
「強いんですか?」
ギルド内が静まる。
ギルドマスターはゆっくり頷いた。
「国を滅ぼせるレベルだ。」
「へぇ。」
百合の反応は意外と落ち着いていた。
「見に行ってみますか?」
「軽いな!?」
ギルドマスターが思わず声を上げる。
「危険すぎるぞ!」
しかし彩乃はもう決めていた。
「ちょっと気になるし。」
「行こう、百合。」
「うん。」
こうして二人はリラとルラに乗り、北部の雪原へ向かった。
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白銀の世界。
風が鋭く吹き抜ける。
その中心に、それはいた。
巨大な獣。
全身を青みがかった銀の毛で覆われた狼。
一歩踏み出すたびに地面が震える。
「……大きいね。」
百合が呟く。
しかし彩乃は目を輝かせていた。
「かっこいい。」
「え?」
フェンリルがこちらを見る。
赤い瞳。
だが敵意はない。
むしろ、じっと彩乃を見つめていた。
そして。
「グル……。」
ゆっくりと近づく。
リラとルラが一歩下がる。
「キュイっ……!」
「キュルルっ……!」
フェンリルは彩乃の前で立ち止まった。
そして。
すりっ。
頭を下げた。
「え?」
百合が固まる。
「今……懐いた?」
フェンリルは彩乃の手に頭を押し付けるようにして甘える。
「グルル……。」
「え、かわいい。」
彩乃が普通に撫でる。
するとフェンリルの体が一瞬光る。
次の瞬間。
その巨体が、急に縮んだ。
「えっ!?」
百合が目を見開く。
気づけば、そこにいたのは。
大型犬ほどのサイズになったフェンリルだった。
「サイズ変わるの!?」
彩乃は興味津々でしゃがみ込む。
「便利だね。」
「グルル。」
フェンリルは嬉しそうに尻尾を振る。
百合はため息をついた。
「なんか、また増えたね……。」
彩乃は真顔で頷く。
「うん。」
「家族。」
「早い。」
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王都に戻ったギルド。
ギルドマスターは報告を聞いて固まっていた。
「フェンリルが……懐いた?」
「はい。」
「しかも小さくなります。」
「そして今、名前つけてきました。」
「名前?」
受付嬢が読み上げる。
「ライ、だそうです。」
ギルドマスターは机に突っ伏した。
「神獣を……ペットにしたのか……。」
しかし次の瞬間、顔を上げる。
「いや……まあ……害がないなら……いいのか?」
受付嬢が小さく笑う。
「もうこの二人、基準が壊れてますね。」
ギルドマスターも苦笑した。
「世界の方が合わせるしかないな。」
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その夜。
王城の中庭。
彩乃の隣にはリラ、ルラ、そしてライが並んでいた。
「キュイっ!」
「キュルルっ!」
「グルル。」
百合は呆れながらも微笑む。
「賑やかになったね。」
「うん。」
彩乃はライの頭を撫でる。
「よろしく、ライ。」
「グル。」
フェンリルは静かに目を閉じた。
まるで最初からそこにいたかのように。
この瞬間、神獣は討伐対象ではなくなった。
ただの「仲間」として。




