わいばーん?ナニソレオイシイノ?
王都東の鉱山へ向かう街道を、リラとルラが勢いよく駆けていた。
「キュイっ!」
「キュルルっ!」
風を切りながら走る中、百合が地図を確認する。
「もうすぐ鉱山みたい。」
「うん。」
彩乃はどこか楽しそうだった。
「そういえば。」
「ん?」
「ワイバーンって食べられるのかな。」
「……え?」
百合は思わず聞き返した。
「いや、せっかく倒すなら食べてみたいなって。」
「えぇ……。」
「ドラゴン系のお肉って気になるじゃん。」
「そこ気になる?」
彩乃は真剣な表情で頷く。
「食材は大切。」
「なるほど……。」
百合は苦笑した。
「じゃあ、きれいに倒さないとね。」
「そう!」
「お肉が傷んじゃう!」
そんな会話をしているうちに、鉱山へ到着した。
辺りには壊れた荷車が転がり、鉱夫たちは避難している。
「来ちゃ駄目だ!」
「ワイバーンが三体いるんだ!」
鉱夫が叫ぶ。
その直後。
「ギャアアアアッ!」
大きな咆哮が空へ響いた。
三体のワイバーンが旋回しながら舞い降りてくる。
鋭い牙。
巨大な翼。
長い尻尾。
「いた。」
彩乃は聖剣を抜く。
透明なブルーの刀身が、青空を映した。
「百合。」
「うん。」
「夕飯、確保しよう。」
「うん!」
鉱夫たちは耳を疑った。
「え?」
「今……夕飯って言った?」
彩乃はワイバーンへ向かって駆け出す。
「我が蒼き覇道よ!」
百合が笑う。
「また始まった。」
彩乃は聖剣を空へ掲げ、大きく息を吸う。
「蒼雷皇絶天滅断!」
青い雷が聖剣へ集まり、一閃。
ズバァァン!!
一体目のワイバーンが真っ二つになり、そのまま地面へ落ちた。
「よし!」
彩乃はその勢いのまま跳び上がる。
「まだまだぁ!」
二体目へ一直線。
ワイバーンが火球を吐く。
しかし。
「遅い!」
再び聖剣が閃いた。
ズドォン!!
二体目もあっさり討伐。
「二体目!」
彩乃は満足そうに着地した。
「あと一体!」
最後の一体は怒り狂い、百合へ突進する。
百合は静かに聖杖を構えた。
「聖なる光よ。」
「すべてを貫いて。」
「ホーリーランス。」
無数の桃色の光槍が現れる。
「いって。」
一斉に放たれた光槍は、ワイバーンを貫いた。
「ギャアア……!」
最後の一体も地面へ落ち、光となって消えていく。
静寂が戻った。
彩乃が振り返る。
「終わったね。」
「うん。」
二人はハイタッチした。
「やった!」
「キュイっ!」
「キュルルっ!」
リラとルラも嬉しそうに駆け寄ってくる。
その時だった。
避難していた鉱夫たちが、おそるおそる近付いてくる。
「あ、あの……。」
「本当に倒しちゃった……。」
「しかも三体とも。」
彩乃は倒れたワイバーンを見つめる。
「それで。」
「解体してもいいですか?」
「え?」
「食べてみたいので。」
鉱夫たちは一斉に固まった。
「食べる?」
「ワイバーンを?」
百合は少し照れ笑いを浮かべる。
「彩乃が気になってたみたいで。」
「食べられるなら、一度食べてみたいなって。」
年配の鉱夫が吹き出した。
「はっはっは!」
「もちろんだ!」
「討伐したのは嬢ちゃんたちだ!」
「好きに持っていってくれ!」
「ありがとうございます!」
彩乃の目が輝く。
「今日はワイバーン料理だ!」
「楽しみ!」
百合も思わず笑った。
こうして、王都では「三体のワイバーンを夕飯感覚で討伐した双子」という、なんとも不思議な噂が広まり始めるのだった。




