表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/20

異例の昇格

 王都へ戻る頃には、空は夕焼けに染まっていた。


 リラとルラは軽快に石畳を駆け、冒険者ギルドの前で足を止める。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


「ありがとう、リラ。」


「ルラもお疲れさま。」


 二人は地竜を撫でると、ギルドの中へ入った。


 いつものように賑わっていたギルドだったが、彩乃たちが入ると視線が一斉に集まる。


「あ、帰ってきた!」


「昇格試験はどうだった?」


 受付へ向かうと、受付嬢が笑顔で迎えた。


「お帰りなさい。」


「討伐の証明をお願いします。」


 彩乃は袋から二つの大きな魔石を取り出した。


 ゴトッ。


「……え?」


 受付嬢の動きが止まる。


「二つ?」


「はい。」


「一体目を倒したら、もう一体出てきたので。」


 受付嬢は慌てて魔石を確認した。


「間違いありません……ロックベア二体です。」


「ギルドマスターをお呼びします!」


 数分後。


 ギルドマスターが執務室から姿を現した。


「本当か?」


 魔石を見るなり、大きく目を見開く。


「試験は一体の討伐だったはずだ。」


「もう一体いたので。」


 百合が答える。


「危なそうだったので、そのまま倒しました。」


「…………。」


 ギルドマスターは額に手を当てた。


「普通は逃げるんだ。」


「え?」


 二人は同時に首を傾げる。


「逃げるんですか?」


「いや……君たち基準で考えないでくれ。」


 ギルド内から笑い声が上がる。


「ははは!」


「さすがだ!」


「新人じゃないだろ!」


 ギルドマスターも思わず笑った。


「全く……。」


 そう言うと、受付嬢へ向き直る。


「昇格試験、合格だ。」


「二人とも、本日付でCランクへ昇格。」


 受付嬢が新しいギルドカードを持ってくる。


「おめでとうございます!」


 彩乃と百合はカードを受け取った。


 カードには、大きく「C」の文字が刻まれている。


「もうCランクなんだ。」


「早いね。」


 その時だった。


 ギルドの扉が勢いよく開いた。


「ギルドマスター!」


 息を切らした冒険者が飛び込んでくる。


「緊急事態です!」


「今度は何だ?」


「王都東の鉱山です!」


「ワイバーンが現れました!」


 ギルド内が騒然となる。


「ワイバーンだと!?」


「Bランク案件じゃないか!」


 冒険者はさらに続けた。


「しかも一体じゃありません!」


「三体です!」


 ギルドマスターの表情が険しくなる。


「騎士団へ連絡!」


「Bランク以上を招集しろ!」


 その時。


「私たちが行きます。」


 彩乃が静かに言った。


「私も。」


 百合も一歩前へ出る。


「しかし!」


「相手はワイバーンだ!」


「空を飛ぶぞ!」


 彩乃は少しだけ笑った。


「飛んでいても。」


「届けばいいんですよね。」


 百合も頷く。


「やってみます。」


 ギルドマスターは二人を見つめる。


 オーガ。


 ロックベア。


 その実力は十分見てきた。


 しばらく考えた末、小さく頷く。


「……分かった。」


「だが、危険だと思ったら必ず撤退しろ。」


「はい!」


 二人はリラとルラへ駆け寄る。


「お願い、リラ!」


「キュイっ!」


「ルラ、行こう!」


「キュルルっ!」


 二頭の地竜は勢いよく駆け出した。


 その姿を見送りながら、一人のベテラン冒険者がぽつりと呟く。


「なんだろうな……。」


「見てると安心する。」


 ギルドマスターも腕を組み、静かに頷いた。


「ああ。」


「もしかすると、本当にこの世界を変える二人なのかもしれんな。」


 夕焼けの空へ向かって、青と桃色の髪が風になびく。


 その先には、三体のワイバーンが待ち受けていることを、二人はまだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ