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昇格試験

 オーガ討伐から三日後。


 王都冒険者ギルドは、朝からいつも以上の賑わいを見せていた。


「聞いたか?」


「オーガ二体を倒した新人だろ?」


「あの長い技名を叫んだ子か。」


「いや、強さの方に驚けよ。」


 彩乃と百合は顔を見合わせ、苦笑する。


「なんだか有名になっちゃったね。」


「技名のせいじゃない……?」


 百合の一言に、彩乃は少しだけ目を逸らした。


「……気のせい。」


「絶対違うよ。」


 二人が受付へ向かうと、受付嬢が笑顔で迎えた。


「お待ちしていました。」


「ギルドマスターがお呼びです。」


「またですか?」


「はい。」


 二人はギルドマスターの執務室へ向かった。


 扉をノックすると、中から声が聞こえる。


「入ってくれ。」


「失礼します。」


 ギルドマスターは椅子から立ち上がると、二人に一枚ずつ書類を差し出した。


「君たちには、昇格試験を受けてもらう。」


「昇格試験?」


 百合が首をかしげる。


「本来なら新人はEランクから始まり、依頼を重ねて少しずつ昇格する。」


「だが、君たちの実力は明らかにEランクではない。」


「そこで特例として、ランクを一気に上げるための試験を受けてもらう。」


「受けます!」


 彩乃は即答した。


 百合も頷く。


「お願いします。」


 ギルドマスターは満足そうに笑う。


「よし。」


「試験内容は単純だ。」


「王都西部の渓谷に現れたロックベアを討伐してくること。」


「ロックベア?」


「岩のような皮膚を持つ魔物だ。」


「通常ならCランクが数人で挑む相手だ。」


「討伐証明として魔石を持ち帰ってくれ。」


「分かりました。」


 リラとルラに乗り、二人は渓谷へ向かう。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


 青空の下を、二頭の地竜が軽快に駆け抜ける。


 一時間ほど走ると、岩山が続く渓谷へ到着した。


 その時だった。


 ズシン……。


 ズシン……。


 地面が揺れる。


 巨大な黒い影が岩陰から姿を現した。


 身長は三メートルを超え、全身が岩のような硬い皮膚で覆われている。


「グオオオオオッ!」


「いたね。」


 百合が聖杖を構える。


 彩乃も聖剣を抜いた。


 透明なブルーの刀身が太陽の光を受けて輝く。


「今回は一気にいくよ。」


「うん!」


 ロックベアが突進してくる。


 彩乃は前へ飛び出した。


「我が蒼き覇道よ!」


 百合が苦笑する。


「また始まった……。」


 彩乃は剣を振り上げ、思い切り叫ぶ。


蒼天覇滅断(ブルーインフィニティ)空絶剣(ブレイカー)!」


 聖剣から蒼い斬撃が放たれる。


 ズガァァァン!!


 ロックベアの硬い皮膚を真っ二つに切り裂いた。


 巨大な魔物はその場に崩れ落ち、光の粒となって消えていく。


 残されたのは、大きな魔石だけだった。


「終わったね。」


 彩乃が剣を納める。


 その時、森の奥からさらに唸り声が響いた。


「グルルル……。」


「もう一体!」


 百合が前へ出る。


 聖杖を静かに掲げると、柔らかな桃色の光が集まっていく。


「聖なる光よ。」


「悪しき者を貫いて。」


「セイクリッド・レイ。」


 一本の光線が一直線に放たれる。


 ロックベアの胸を貫き、その巨体はその場で倒れた。


「すごい!」


 彩乃が振り返る。


「百合も一撃だ!」


「えへへ。」


 二人は笑い合う。


 リラとルラも駆け寄ってきた。


「キュイっ!」


「キュルルっ!」


「ただいま。」


 二人はそれぞれの相棒の頭を優しく撫でた。


 討伐した二つの魔石を手に、王都への帰路につく。


 まだ二人は知らない。


 この試験の結果が、冒険者ギルド始まって以来の"異例の昇格"へとつながることを。

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