最強守護神の黒猫、犬派が増えたので魔獣をしばらく放置する
「守護神様!! 西区画に魔獣が出ました!!」
『ほう』
ふくはソファの上で丸くなったまま答えた。
「街が襲われています!!」
『そうか』
「騎士団も押されています!!」
『大変だな』
「他人事!?」
ユキトが思わず叫ぶ。
ふくは欠伸をした。
今日は朝から機嫌が悪かった。
理由は簡単。
昨日、王宮の会議で、
「最近は犬型守護獣の人気も高いですな」
という発言を聞いてしまったからである。
根に持っていた。
めちゃくちゃ根に持っていた。
「いやいやいや!!」
ユキトは慌てる。
「こんな時に拗ねるなって!!」
『犬派なのであろう?』
「違う違う違う!!」
『犬型は頼もしくて人気らしい』
「情報の受け取り方が面倒くさい!!」
その時。
ドゴォォォン!!
遠くで爆発音が響いた。
兵士が半泣きで飛び込んでくる。
「守護神様ぁぁぁ!!」
『何だ』
「城壁が!!」
『ほう』
「“ほう”じゃなくて!!」
兵士は床に頭を擦り付けた。
「お願いします!!」
『断る』
「即答ぉ!?」
ふくは尻尾をぱたんと揺らす。
『以前も言った』
「え?」
『備蓄管理が甘い』
「今その話!?」
『避難経路も悪い』
「今それどころじゃ――」
『あと犬派増えた』
「関係ないだろ!!」
ユキトが全力で突っ込む。
だが。
次の瞬間。
さらに大きな揺れが来た。
天井のシャンデリアが落ちる。
「ぎゃああああ!!」
「南門が突破されましたぁぁ!!」
王宮が一気にパニックになった。
ふくは、その様子をじっと見ていた。
そして。
『……』
「お、おい?」
『少し反省したか?』
「こんなタイミングで教育するな!!」
『人は失敗から学ぶ生き物』
「今まさに滅びかけてるんだよ!!」
兵士たちは泣きそうだった。
「お願いします守護神様ぁぁ!!」
「このままでは王都が!!」
「何でもしますから!!」
沈黙。
ふくの耳がぴくっと動く。
『……何でも?』
「えっ」
『高級ちゅーる三箱』
「安い!!」
『あと犬カフェ視察』
「まだ気にしてたの!?」
ふくは、すっと立ち上がった。
黒い神威が広がる。
空気が震える。
兵士たちが息を呑む。
そして。
『仕方あるまい』
「おっ?」
『犬派との格の違いを教えてやろう』
「擦るな!!」
次の瞬間。
ふくが猫パンチした。
轟音。
王都を襲っていた巨大魔獣が、遥か彼方へ吹き飛ぶ。
ついでに山が一つ消えた。
「加減しろぉ!!」
『整えただけ……』
「今日はノリノリだな!?」




