表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
297/302

エンボロメリ(2)

入れ替わり立ち替わり、肉が盛り付けられていった。

私の分の肉はもう、皿の上に溢れんばかり、500gはありそうなくらい。

プルプルと輝く分厚い皮は厚さにして5ミリ以上はあるし、そこから溢れ出す黄金色の肉汁は、いかにも食欲をそそらせた。

しかし、こんなにはたして、食べ切れるだろうか。

さすがに巨大とはいえ村人全員の腹を満たすには心許ない。


肺魚やコロステウス類の四足動物が、よりたくさん供されていた。

それらのほうが売れ行きが良いように見えるあたりからして、そして私のところにエンボロメリの肉が500gも山積みされてしまったところからするに、ここの食べ物の中では、、、そこまで美味しいものではないのかもしれない、と不安になった。


が、もはや食べ比べて、確かめる胃の余裕はなさそうだ。


戸惑っていると、一人の若い男が現れた。

私たちと同じくらいの、山盛りの肉をもっているあたり、何か今日の式典か何かの重役だったりするのだろうか、と思う。いや、そんなことは微塵も関係ないのかもしれないが。


すると、男は語り始めた。

「ちょうど昨日、延縄を回収し切った頃だった。」

――なるほど。これを仕留めた方だった、というわけか。

「ちょうど獲物が荒らされて、食いちぎられたりしていた。その時だ、こいつが潮を吹いてるところがみえたのさ。」

…潮を吹く?クジラみたいに?

「その、潮を吹くっていうのはどういうことなんです?」

と私が聞くと、男はそのワニに似た生き物の、後頭部のあたりを指さした。

「ここから、プシャーッとな」

鼻の穴は、頭の先端にあるはずだが。

「そんでだ、ちょうど、Varagarrotteを持ってなかったもんだから、仕方なく銛を持って追いかけたわけよ。泡がしっかり見えたもんだから、もう間違えねぇ。俺はむんずと、銛を、そいつめがけて撃ち込んだ。」


…銛を持つ方が、よほど普通と思うのだけど。


ところで、Varagarrotteというのはここでよく使われる猟具で、ループさせたコシの強い紐に、弓矢ないし弩が取り付けてあるという珍奇な猟具である。獲物の頭からループさせた紐を通すと、弓矢の要領で筒を射出しループを締め付け、ホールドする。

そこから引っ張ると、獲物が暴れれば暴れるほどループが締まって動けなくなる。


筒に収まっている部分の紐には、逆棘がつけてあるためだ。


この漁具は、だいぶ変だ。

銛でつく方がはるかに簡単なはずだというのに、わざわざ縛る。

石も入手が難しく、金属はすぐ錆びる高酸素の巨大泥炭林において、縛り上げるというのは確かに合理的かもしれない。

それで納得していた。

しかし、だ。

それだけだったら――鋭くとがらせた木でもよくないか?といわれると、そんな気がしなくもない。


「そっからが大変だった、全然疲れねぇ。銛の柄が折れたときにゃ、どうなるかと思った。先に縄をつけてなきゃあ、持ってかれてたとこだな。船ごと曳かせて、ようやくばてた頃に引っ張りあげてきたんだが…もうでかいのなんの、船が壊れるかって。」

そして、彼は言葉を切った。

「明日旅人さんが来ることになってなきゃ、俺はとうに諦めてたぜ。」


…来る?という言葉に、また違和感があった。

なにせ、ずっとここにいたではないか。


そして、彼は一口目を勧めた。

ふわっとした白身魚のような味わいで、噛み締めるほどに旨みが滲んだ。

私の不安とは、裏腹に。

「…とても美味しい、です」

「だろ?」

そう言って、男は何度もうなずくのだった。


そうしているうち、ようやく骨が見えた――

肋骨が一本とれて、胸椎がむき出しになっていた。

それを見たとたん――

「どうなってるんだ、これ??」

そうつぶやかざるを、えなかった。


挿絵(By みてみん)


それは、ふつうの現生脊椎動物の骨を見慣れた私にとって、衝撃を与えるに十分なものであった。

そう、椎体が、棘突起あたり2個…つまり、普通の背骨の、倍あるように見えるのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ