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第13話 大聖女の魔力と真の力

「やっぱりね」

「そうさ、これは時間稼ぎ(・・・・)。フィセル、お前に復讐する為のな!!」


「なんですって……!?」



 手を広げ、笑う将軍は背を向ける。

 逃げる気なの……?



「逃がすか!!」



 エドワード様は槍を投げる。見事に直線に飛んでいくけれど、木の影から『アンリエッタ』が現れ将軍をかばった。



「…………かはっ」



 槍がアンリエッタの胸を貫く。



「……なっ、アンリエッタ。どうして!」

「……ふふ、ふふふ……。将軍との約束なの。辺境伯領にいるフィセルのいる場所を教える代わりに彼女を殺してくれるってね……」



 そうか。先週のあの晩、逃げ出した彼女は将軍と会っていたのね。でも、命を投げ出してまで……そんな男を守る価値なんてないというのに。



「よくぞ俺を守ってくれた、アンリエッタ! お前は最高の女だ。死なせるには惜しい……」

「いいんですよ、将軍。フィセルを殺せるなら、わたしは地獄に落ちます」

「そうか、先に逝っているがいい。後で俺も追ってやる」

「……ありがとう」


 血を吐き出し、絶命するアンリエッタ。

 ぱたっと動かなくなった。



「くっ……」

「エドワード様、あなたのせいではありませんよ。あれはアンリエッタが自ら飛び出したのですから、事故のようなものです」


「……そう、だな。フィセル、あとでアンリエッタを弔ってやってくれ」

「分かりました。ですが、今は将軍を何とかしないと……」



 槍はアンリエッタに突き刺さったままだから、エドワード様に武器はない。ならば、わたくしが立ち向かうしかない。


 この場所を守る為なら……。



「フィセル……!」

「大丈夫です。エドワード様。わたくしがなんとかします。いつまでも守ってもらってばかりではいられませんし、今こそ力を使う時です」



 ずっと『プロセルピナ共和国』を守る為に力を注いできた。だから、その分の魔力も消費し、ずっと低下したままだった。守護の力はそれほど多くの魔力を必要とした。けれども、今はもうあれから一週間が経過していたし、十分な魔力も回復していた。



 ……きっと今なら。



 守護だけではなく、大切な人を守る為に力を行使できるはず。守護の力を解放しようとした――その時。



 ごうっと、火の手が上がる。



「……えっ」



「ふははははははは……!! フィセル、何かしようとしていたようだが、遅かったな。どうだ、この光景! お前へのプレゼントだ」



 辺境伯領全体に炎が広がっていた。

 誰かが火を放った?



「果樹園や畑が燃えている……」



 ショックを受けるエドワード様。彼と一緒に頑張って育ててきたのに……将軍は、無断で領地に踏み入れただけでなく――火も放った。



 メラメラと燃えていく光景に、わたくしは怒りさえ覚えた。自分が国を失ったからって、わたくしの居場所まで奪おうとするの……!



 絶対に許せない。



 守護の力を転換させ、右手に魔力を込める。


 きっと今なら出来る。

 わたくしなら出来る。



「ウィリアム……あなたは消えるべき存在よ!!」


「黙れ、フィセル。この領地を奪って帝国を支配してやるッ!!」



 掴みかかって来ようとする将軍。

 対し、わたくしは今までの怒りと悲しみをぶつけた。




「この火も将軍(あなた)も消し去ります」



「そんな事が出来るわけ……なっ!!」




 聖なる力が瞬く間に広がっていく。

 太陽のようにまぶしく、強烈な光を放ち将軍を吹き飛ばしていく。彼は一瞬で遠くへ跳ね飛ばされて見えなくなった。



「………………ぁぁぁあああぁぁ…………!!!」



 微かに断末魔が聞こえた。



 更に光は火を鎮火させ、被害にあった作物さえも元通りにした。……わたくしに、こんな力があっただなんて。



「……なんと神々しい光だ。フィセル、君は奇跡そのものだったんだね。領地を……畑を守ってくれてありがとう。感謝する」


 エドワード様は感謝し、涙を流していた。

 ……良かった。守れて。




 ▼△▼ △▼△  △▼△ ▼△▼



 ――辺境伯領は、フィセルの『力』によって守れた。将軍・ウィリアムは、領地から追い出され、その身を激しく打ちつけてようやく静止していた。



「…………ぐぉ!!」



 大岩に頭をぶつけ、がくんと力を失う将軍。

 全身の骨が複雑に折れてしまい、身動きは不可能。内臓も深いダメージを追って、瀕死だった。このままでは確実に死ぬ。



 だが、将軍を待ちわびていた人物がいた。



『――待っておりましたよ、将軍殿』


「…………キ、キサマ。なぜここに! キサマは、辺境伯領で火を放っていたのではないのか……仕事はどうした、カーマイン」


『いやいや、よくぞ私をこき使ってくれましたね、将軍』


「キサマ……何だ、その笑みは! さっさと俺を助けろ!」


『助けろ? 馬鹿ですか、あなた。そんな事より紹介しましょう……』


「紹介、だと?」



 空から降りてくる禍々しい影。黒いローブを羽織っており、素顔が見えない。少なくとも、その異様な力でそれが何者であるかくらい将軍にも理解できた。



「彼女は『大魔女アレクサ』です」


「カーマイン……キサマあああああああああああ……!!! よりによって大魔女と取引をしたなァ!!! この裏切り者があああああああああッ!!!」

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