ある日
それから少し忙しさが落ち着いたある日。
「ローザベル、準備はいい?」
アリアンヌは不適な笑みを浮かべてローザベルを見る。
私に問いかけているのは分かっているのですが、何ですか準備って?!
朝起きてアリアンヌ様が呼んでるからと来てみたら突然の準備いい?
うん、分からない!一体なんのことですのー
まぁ、ここは失望されても仕方ない。
認識違い起こすぐらいならきちんと聞こう!そうしよう!
「あのー、アリアンヌ様。準備とは一体なんのことでしょうか?」
「ふふっ、フフフフフ。あれよ、あれ!予想以上に早いけどこのタイミングが良さそうなの!
まぁ、行ってからのお楽しみね!」
いやいやいや。可愛くウィンクしたからって誤魔化されませんよ。
一体なんのことでしょう?
私に封筒渡したらさっさと部屋から出て行きましたよ!
多分、ついてこいってことなんでしょうけど!
それにしても概要ぐらい教えてください!
まぁ…ついて行きますけど!
えぇ、えぇどんな無茶でも私が選だ上司なので、ついていきますよ!
さぁどんこいです!
アリアンヌは部屋から出ると、ある場所まで一直線に向かう。
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「皆集まってくれてありがとう。それでは定例会議を始める。」
そこには陛下を始めとする貴族の当主達が集まっていた。
陛下の隣には一応王太子である殿下も座っていた。
これは半年に一度、貴族達が集まり、それまでの成果の共有、話し合いが行われている会議である。
一応重要な会議ではあるため、適度な緊張感と共に開幕する。
毎年一定数は居眠りをし、陛下から直々に呼び出されるが…
「それでは、ここからは私が司会進行を進めます。」
立ち上がり、指揮を取り出したのは現在宰相を務めるラインハルト公爵だ。
「まずは、各部門からの報告を。外務部門からお願いします。」
その後はそれぞれの部門の収支報告と事業成果を中心に報告が為されていく。
全部門の報告が無事に終わり、王家の収支報告が始まろうとした時、入り口のドアが勢いよく開く。
「皆様、ご機嫌よう。お邪魔しますわ!」
そこには王家の威厳を示したような、綺麗なカーテシーをしたアリアンヌ王女と
その斜め後ろに何事も無かったかのように堂々と立っているローザベルがいた。
皆は突然の乱入者、しかも王女とあって、驚きを隠せない様子だ。
「何事だ!アリアンヌ!いくら王女といえど会議に乱入するなど許される行為ではないぞ!」
「突然乱入したことについては謝りますわ。申し訳ありません。しかし、今日はどうしても皆様に聞いていただきたいことがございまして、こうして訪ねた次第です。」
「そこまでして言いたいことなんだな。もししょうもない事ならタダじゃおかないぞ。」
陛下はイライラしながらもなんとか冷静さを保ち、アリアンヌの話を聞くことにしたようだ。
「ありがとうございます。本日は私、女王になりにきました!」
アリアンヌはこれでもかというほどの満面の笑顔で堂々と言い切る。
「なっ、何を言っている!アリアンヌ!いくら娘でも言っていい事と悪い事があるぞ!」
続いて殿下が陛下に同情して声を荒げる。
「そうだぞ!アリアンヌ!そ・れ・に、お前はただの王女。俺は王太子だ!次に王になるとしてもお前じゃなくて俺だ。ついに血迷ったか!」
待って、待ってアリアンヌ様!
何するか分からずについてきたら、まさかの女王宣言!
せめて一言言ってくださいよー
長年の王妃教育でなんとか表情を崩しておりませんが、このタイミングで言うと思わないじゃないないですか…
驚きですよ。
それに周りを見てください、周りを。
陛下と殿下は声を荒げてるみたいですけど、他はみんなポカンって顔してますよ!
あの頭が切れると言われてる宰相でさえ、フリーズしてますよ!フリーズ。
まぁ、始まったからにはきちんと最後までお付き合いしますよ!
しますけど!せめて心の準備はさせてくださいよー
「あらあら。そんなに声を荒げなくても聞こえておりますよ。それに私、本気ですよ。」
周囲はようやく正気に戻ったのか、少しずつ動揺が会場に広がっていく。
「まぁまぁ、皆さんもそんなに動揺しないで。これから王位が変わりますよ。ただそれだけなのですから。」
「なっ!何を言っている!父上に失礼だぞ!それに次の王は私だ!どう頑張ってもお前が王位を継ぐことはない!」
「あら?何を言っているのお兄様?お兄様はもう王太子ではなくてよ?」
「なっ!何を言っている!俺は王太子だ!」
「お兄様、落ち着いてください!説明しますから。まずは王太子の定義ですが、王太子は王宮内の権利を有し、執務を円滑に行い、国の発展に貢献する義務がある。ですわよね。」
「あっ、あぁそうだな…」
「じゃあ、質問です。お兄様、王宮内の権利持っていますか?先日、ジュリアと過ごせるからって喜んで私に譲渡してくれましたよね?それに今までも仕事はサボり、ローザベルに押し付けるばかり。国の発展に貢献どころか、何も携わっていないですよね。」
「なっ、何を言いたいんだ…」
殿下は先程の勢いがなくなり、顔を青くしつつもなんとか言い返す。
「えぇ、ですので義務を果たしていないお兄様はもう王太子ではないと言いたいのです。それこそ私に権利を渡したその日から。」
アリアンヌはなんてことないことを言うように、軽く言い渡す。
「なんだと…というかあれはお前が持ちかけた話じゃないか!俺が王になってもアリアンヌがやればなんの問題もない。だから権利を譲ってと。」
「えぇえぇ、私が言いましたよ。だって私が女王になりたかったんですもの。お兄様は不要ですよね。
そ・れ・に私が言ったことはあくまで可能性。そんな絶対私が手伝うとか契約書に書いてなかったでしょ?」
「そっ、そんな…あの時には既に女王になるつもりで……なら、俺に権利を返せ!アリアンヌ!俺が今までに国の発展に貢献していないはずがないだろう!なら俺に権利を返したら元通り俺が王太子だ!
あっ、ようやく気づいたぞ!お前は俺に愚かさを認識させ、より良い王になるために忠告したかっだんだな!そうだろ!そのために俺から権利を奪ったんだろ!なっ!そうだよな!なら早く俺に権利を返せ!」
殿下は絶望していたが、アリアンヌが自分のために今回のことをしたと結論を出して勢いを取り戻す。
「あらあら、残念なお兄様。そんな訳ないでしょ。聞いてれば自分の都合のいいように解釈して。なんともまぁ。血が繋がっているのも恥ずかしいですわ。私が権利を渡すわけないじゃないですか。お兄様じゃあるましい。」
「なっ…」
「それにお兄様が国の発展に貢献したですって?笑わせてくれる。国に貢献してくれてたローザベルの価値にも気付かずに婚約解消したくせに。さぁ、ローザベル、皆様にその書類を配って差し上げて?」
おぅ、いきなり私に振らないでくださいよーもうー
その封筒持ってきてって言われてなんかあるんだろうなとは思いましたけど、証拠ですかー
重要書類じゃないですか!もー私片手で軽く持ってたじゃないですか。
そんな生命線の重要書類なら両手で持ったのに。
あっ、考え事してる場合じゃないな。
早く配らないと。
ローザベルはアリアンヌの指示を受け、集まっている各貴族に行き渡るように書類を配る。
「皆様行き渡りましたね?では一ページ目をご覧ください。こちらはお兄様の代わりに私のローザベルが立案し、実行した事業の一覧ですわ。」
皆は一斉に書類に目を落とす。
何!河川の氾濫対策事業はローザベル様立案だったのか!あの事業のおかげでうちの領地の作物が無事だったんだ。
水道整備の立案もローザベル様だと…衛生状況が格段によくなり、さすが殿下だと思っていたが…
待て?!最後に書いてある国内の流通を整備したあの多大な恩恵を与えた事業、アリアンヌ様が立案したらしいぞ。殿下、アリアンヌ様の功績さえ盗んでいたのか…
皆の反応はさまざまだったが、共通してローザベル、アリアンヌの評価があがり、殿下の株が大暴落した。
「まぁ、見ての通りお兄様が今まであげた功績は全て、他人のものを盗んだわけですが…続いて2ページ目もご覧ください。こちらは王太子と婚約者予算が何に使われたのかの詳細ですわ。」
皆は一斉にページをめくり、内容を見る。
これは…国の税金が殿下の愛人候補へのプレゼント代に使われてるぞ…
こっちは宰相への口止め料と賄賂だと…なんということだ…
「なっ!どこでこの帳簿を!俺はもう終わりだ…終わりだ…」
殿下は膝から崩れ落ちた。
「待ってください。私に賄賂ですと!何をでたらめを!」
反抗する気がなくなった殿下とは対照的に今度は宰相が声を荒げる。
「あら?これは全て事実ですよ。それにあなた、国家事業で親しい業者を割り込ませて、水増し請求もしているでしょ。」
「なっ、何を言っている!」
宰相を顔を真っ赤にして抗議する。
「証拠は出ていますよ。公爵ともあろうものが領民の税も絞り取り自分は贅沢三昧。見栄と欲望を満たすためにお金を集め。その結果、チカチカする装飾に腹周りについた脂肪。何ともまぁ…」
「お主それは真実か!せっかく信用して宰相につけていたのに…」
「待ってください陛下!私は、私は陛下のためを思って!」
「えぇーい、言い訳はいらん!お主は解雇だ!当主の座も譲り引退しろ!今すぐ王城から出ていけ!」
「なっ、なんてことだ……」
宰相は顔を青くし、陛下の言葉で負けを悟った。
そしてトボトボと部屋から出ていく。




