婚約破棄2
時は結婚式を控えた半年前に遡る。
この日、私は定例のお茶会のため、王城に来ていた。
「やぁ、ローザベル。」
「殿下、お久しぶりでございます。」
私は、殿下に一声かけて椅子に座る。
殿下は私が座ったのを確認すると、すぐに本題に入った。
「今日は話があるんだ。俺たちの結婚式が半年後に予定されているだろう?
だが、その結婚式を延期にしたいんだ。」
私は内心驚きつつも、長年の王妃教育のお陰で顔には出さず、続きを促す。
「準備をしている最中なのに、突然言ってすまない。
まだ、招待状自体は出していないだろう?だから、まだ取り返しは付く。」
「殿下、なぜ延期にするのか理由を聞いても?」
「あっ、あぁ。理由を言ってなかったな。
友好国で、招待状を送る予定だったナイン王国が今年干ばつにあったそうで、食料が不足しているらしいんだ。
で、俺は食料支援のために貴族に掛け合い、ナイン王国へ出向かなければならない。
加えて、そんな事が直近で起こったのに結婚式を挙げて籍を入れるってなんだか縁起が悪いだろう?
だから、延期にしたいんだ。」
縁起が悪いかどうかはよく分からないけど、ナイン王国は友好国だし、そこへ殿下も行くなら仕方ないわよね。
「はぁ。まぁ、分かりました。
では、延期にするとして、次の予定はいつになさいますか?」
「あぁ、それなんだが、陛下たちの都合が中々合わずだな、元々の予定日のちょうど一年後でどうだろうか?」
「えっ、そんなに先延ばしになさるのですか?」
「あぁ。予定が中々合わなくてな。申し訳ない。」
私は溜め息をするのをぐっとこらえて、返事をする。
「承知しました。」
「それと…」
まだ、続くのですか、殿下…
「ローザベルには、明日から王城に住んでほしい。
そして、執務を徐々に行っていって欲しいんだ。」
「えっ?執務は婚姻後に行う決まりではなかったですか?」
「そう堅いこと言うな。
元々半年後には、王宮入りして、仕事をする予定だったんだし。
どうせ、結婚するんだから別に問題ないだろう?」
「はぁ…承知しました。」
「じゃあ、今日は以上だ。明日からよろしく頼む。」
そう言い残すと殿下はその場から立ち上がり去っていった。
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それから私は"殿下に結婚式を先延ばしにされた令嬢"として、肩身の狭い生活を王城で送ることになった。
仕事は決裁こそ回されないものの、書類整理や計算、計画書作成など、誰にでもできるが作業量が多くて面倒くさいもの、事前準備がかなり多くて手間がかかるものなどが依頼される。
そして、それらの仕事は日に日に多くなっていった。
これ私がすべきことかしら?本来はお茶会とか夜会の準備とかを担うはずなんだけど…とか思いつつ。
かと言って、言われたことはやる。きちんと任されたからにはやりきりたいじゃない?
でも、より良くなると思って法案に口を挟んだり、意見を出したり、内容について申し立てたりすれば、各部署の代表に"婚約者の分際で口出しするな"と言われる日々。
あと1年後には結婚できるから、それまでの辛抱。と黙々と作業をする事にし、耐えていた。
だが、結婚式の半年前に殿下に呼び出され、またも結婚先延ばしを伝えられる。
今度の理由は、主要な街道で盗賊が発生して、大規模な事件に繋がっており、縁起が悪いからだった。
私は結婚式が延びたことよりも、まだ人に侮られる日々が続くことに絶望を覚えた。
別に実害はないが、ネチネチと言われるから鬱陶しいのである。
まぁ殿下の決定に婚約者が口を挟むことはできないから、承知したのだが…
その後も、1年後に結婚式を延期して、半年前にさらに延期宣言。が、7年も続いた。
延期2回目が決まったあたりから、貴族達の間で殿下は結婚する気がないのでは?と噂される始末。
延期3回目からは、噂が国外にも広まり始め、4回目以降からは、婚約者がいるにも関わらず内々に殿下へ釣り書が届いていた。
まぁ、その度に婚約者がいるからと、断っていたらしいが…
そして、延期の理由も徐々に適当になっていって、去年の理由は、対外的には延期とだけ伝えていたが、私には王妃の指にささくれができて縁起が悪いからという、かなり適当な理由で説明された。
もう3回目あたりから、またか…と思いながら延期の知らせを聞いていた。




