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1 日常の終わり

 地球、日本。とある政令指定都市の中学生だった僕、伊吹 由貴。 


 とくに不満なんてない、恵まれた日常をおくっていたと思う。 

 女手ひとつで僕を育ててくれた母さんの負担を少しでも減らしたくて、スマホもゲームも持ってなかったけれど、それをバカにするような人間は周りにいなかった。

 同じマンションに住む親友の斉藤貴昭が連絡係になってくれて、クラスLINEは一緒に見せてくれていたし。


 毎朝、貴昭と学校に向かう。

 授業を受けて、家に帰って、中学生になってから一人で火を使うことを許されたから料理をして。

 部活が終わった貴昭が入り浸ったりして。


 そんな日常はある日、唐突に終わりをつげた。


 僕は突然、授業中に意識が遠くなってそのまま――。


 教室は騒然として、先生が人工呼吸と心臓マッサージを繰り返した。駆けつけた保健教諭も頑張ってくれた。貴昭たちが僕の名前を叫ぶように呼んでいた。



 僕は身体から抜け出した魂のような状態で、俯瞰してそれを見ていた。


 身体にはどうやっても戻れなかった。


 途方に暮れていると、急に、僕自身に見えない何かがぐるぐると巻きついた感覚がした。魂なのに、息苦しいほどに、きつく。


 そのまま、ぎゅんっと引っ張られる。


 教室も校舎も街も、何もかもが、もの凄い速さで置き去りにされていく。


 何も見えない。いや、目を開けていられない。


 そして。


 

 次に瞼を開いた時には、そこは薄暗く透明な。


 海のなかだった。




 

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