8-11 猫耳のフードと、お小遣い帳
ギルドの二階。
タイチの報告に、
ギルドマスターが少し言いにくそうに口を開く。
「実は」
「同行する職員の待遇については前から気になってはいるんだが」
「しかし、割り当てられた予算から捻出するとなるとどうしても少額で、」
「経費もろくに出せなくて、申し訳ない限りだ」
ギルドマスターは頭を垂れた
「例えば同行するパーティーに少し負担してもらうとか」
「難しいな、皆自分たちの事で手一杯だろうよ」
案を出してはみるが、どれも現実的ではなく却下される
「それなら」
今まで黙っていた王女が口を開く
「情報集約に、ギルド職員の方にも動いていただいておりますし」
「追加予算、もしくは国からの補助を、考えましょう」
その提案に、ギルドマスターは
「王女殿下、ご配慮痛み入ります」
王女に頭を下げる
そこへ、扉が開いて、
ギルド職員が慌ただしく顔を出した。
「緊急クエストです」
「また、オークが」
「数は未確認ですが」
「今、バルキリーは別任務だ、滞在してるパーティーに振っとけ」
ギルドマスターが言う。
「いえ、その必要はありませんわ」
王女が手を挙げる。
「困ってる人を見過ごすことはしませんわ」
「ね、お姉様方」
王女は剣士を見る
「お、おう」
「じゃあ早速、オークを蹴散ら…討伐しに行きましょう」
(絶対、王女が行きたいだけだ)
そうして、バルキリー一行はクエストを受けることになった。
馬車に乗り込み、
オークが出没した場所まで移動する。
「あれ、猫さんそのナイフ」
「買っちゃったにゃ」
ロリ猫は腰の新しいナイフを見せびらかす。
「ここ、ここの装飾に一目惚れしたにゃ」
そんな会話をしつつ向かったオーク討伐は、
あっという間に終わった。
王女は剣士の戦いぶりに終始ご満悦だった。
――
帰り道。
街の商店の前で、ロリ猫が足を止める。
「これいいにゃ」
猫耳のフード付きのマントを手に取る。
そして店に入り、しばらくして、
包みを抱えて出てくる。
「買っちゃったにゃ」
「まだ、今のマントも綺麗じゃないですか」
「甘いにゃタイチ、ここを見るにゃ」
「猫耳ですね、あっ!今のフードだと耳が当たっちゃうんだ」
「違うにゃ、ウチみたいなキュートな獣人がこんなフード被ってるの想像するにゃ」
想像する。
「可愛いですね」
「それにゃ!」
「アンバサダーとして活動する以上、仔猫のようなあざとさも必要なんにゃ」
(猫って言われるの嫌がってませんでしたっけ)
そうして、ギルドに戻る。
ロリ猫はギルドの窓に映る新しいマントの自分を見ながら、
嬉しそうにくるくる回っている。
それを横目に、
「猫さん、なんか買い物ばっかしてますけど」
「ああ、ちょっと目につくのう」
「…普段、そんなにお金…使わない…」
「あのマント可愛いですぅ」
「悔しいけど似合ってんのよね」
「可愛いは正義ですわ」
「仔猫は、可愛い…」
「でもあいつ、そんなに使える金持ってるはずないんだけどな」
剣士が呟く。
「明らかに使い方がおかしい」
「おい、あいつのお小遣い帳出せ」
「…うん…」
魔法使いがパッとメモ帳のようなものを取り出す。
(お小遣い帳付けてるんだ)
「直近の収入は布告の警備の報酬のみか」
「今月はまだ仕送りしてないのう」
「極端な支出は昨日からだな」
「まずナイフ」
「あ、こいつ、まだ他にも色々買ってやがる」
「あとブーツも新調してましたね」
「マントはさっきだから付けてないね」
「ここに書いてない分も含めると結構な額じゃな」
「間違いなく仕送り分を使い込んでるな」
「昨日、こいつに何があったんだ?」
「昨日……」
すると、
王女の付き人がおずおずと口を開いた。
「もしかしたら……」
「なんだ?」
「思い当たることが……」
「言ってみろ」
「実は……」
「途中の馬車で、印税収入を聞かれまして」
「現時点でわかってる売り上げから、最低これくらいは貰えるのでは、という話をしたんですよ」
「……」
「「「「「それだ!」」」」」
「じゃあ収入はあるんだから問題ねーか」
剣士が言う。
「それが……」
付き人が言いにくそうにする。
「売り上げ集計型ですので……」
「すぐに入るわけでなく……」
「一応それも説明したんですが……」
「あー、絶対聞いてないな」
「聞いてませんねぇ」
「聞いてないわね」
「聞いてないじゃろ」
「…聞いてる…はずも…なく」
(満場一致で信頼されてない猫さんって…)




