8-8 バルキリーの概念と、地方興行と
王女からまた報告があると呼び出される。
――王城
いつもの部屋に通される。
今日は剣姫も呼ばれていた。
そこに王女が満面の笑みで現れる。
「本日はお集まりいただきありがとうございます!」
「今度はなんの報告だ?」
剣士は腕を組み言う。
「早速本題に入りますわ」
「王都での事業は順調ですわ」
「概念の効果もあって、公式に絡まない商売も好調との報告が上がっています」
「それで、その概念とやらはどうなったんじゃ」
エルフが尋ねる。
「概念は自分でそれと認知する代わりのもの、でしたわよね」
「そうですね」
そしてタイチの方を見ながら。
「タイチさんは名人パンですわ」
「そんな気がしました」
「ええ、既にそうなっておりますわ」
「なので、名人パンの商標を持っていた商人から、権利を買い取りましたわ」
(あの人、商標登録してたんだ)
次にロリ猫の方を見ながら。
「お財布ですわ」
王女が付き人に目で合図する。
すると付き人が可愛い刺繍の入った財布を取り出す。
「なんでにゃ」
「世間はそういうイメージなのかと」
「なんで……にゃ」
「商品名はバルキリーのお財布ですわ」
ロリ猫は何も言えなかった。
その次は剣士の方を見ながら。
「片眼鏡ですわ」
目の前に置かれた片眼鏡を見ながら
「……なんで片眼鏡なんだ?」
「お姉様は眼帯の印象が強いからですわ」
「……そうか」
そして娘の方を見ながら。
「教材セットですわ」
「は?」
付き人が教材を並べる
娘が目を大きく見開いた。
「あたしの使ってる参考書じゃない!なんで知ってるの?!」
「調査の結果ですわ」
「どんな調査よ!」
「秘密ですわ」
王女は剣姫の方を見ながら、付き人に合図すると
小さなレイピアのようなショートソードを運んできた。
「使っているのを模したものですわ」
「確かに…似てる」
剣姫は少し目を細めた。
剣士が口を挟む。
「オレの概念も剣が良かったんだがな」
「お姉様の剣は大きすぎて誰も持てませんわ」
「そうか…持てないか…」
剣士がしょぼんとする。
次々と出される概念に
(これって概念で合ってるのだろうか)
そう考えていると
「こういう事ですわよねタイチさん」
不意に王女から話を振られる
「あ、はい、その人のイメージが、それなら、」
「…多分、」
「合ってる…かと…」
声が小さくなる
「次は魔法使いさん、聖女さん、エルフさん」
王女が少し間を置く。
「こちらの三名は衣装関係になりますわ」
「魔法使いさんはウィッチハットとローブ」
「聖女さんはエレガントなシスター服ですわ」
「エルフさんはボウガン型の弓を持った衣装」
(まだ弓を使ってるとこ見たことないなぁ)
「ってかこれ、コスプレじゃないですか」
タイチが呟く。
「こすぷれ?」
「なんですのそれ」
「あ、えっと…」
タイチが言葉を選ぶ。
「えっと、完全に衣装を再現してその人になりきる事?…です…」
王女の目が輝く。
付き人に目をやる。
付き人はすぐにメモを取る。
「素晴らしいですわ」
「これは別方向での展開が期待できますわ」
「タイチはワシの知らんことを知っておるのう」
エルフがつぶやいた
(こんな知識で勝っても嬉しくない…)
この報告内で
王女から地方での興行を依頼された。
事業が順調に進んでいることを鑑み、
支店展開の先駆けとして興行を行うとのことだった。
最初の興行地は、バルキリーの常宿や娘の宿のある東の街。
出発は後日に決まった。
――
後日。
宿の前に馬車が三台並んでいた。
「随分と大掛かりだな」
剣士が腕を組む。
「一台目が剣姫様バルキリー様御一行」
「二台目が荷物とグッズの荷馬車」
「三台目が設営スタッフと衛兵用となっております」
付き人が説明する。
「出発しますか?」
「行こうぜ」
馬車に乗り込む。
大通りを進む。
しかし、門の方向では無く、向かったのは王城の方だった。
王城の前を通り過ぎようとした時。
テラスに人影が見えた。
手を振っている。
「王女様だ」
「王女様肝入りの事業だから」
「わざわざ見送ってらっしゃる」
街頭から声が上がる。
(マメだなぁ…)




