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8-5 王女の距離と、絵札の売り上げと


昼前


薬草採取から帰ってくると


ちょうどバルキリーの面々が起き出してきたところだった。


だらしなく朝食を食べているところに


コンコン、と扉がノックされた。


「王女殿下の使いの方がおいでになっております」


一同、顔を見合わせる。


(みんなが起きてきたのを見てたみたいだ)


「通してくれ」


剣士が言う


「バルキリーの皆様おはようございます――」


王女が報告事項があるので、


王城へ赴くようにとの事だった



――


王城。


通されたのはいつもの部屋だった。


王女が満面の笑みで迎える。


「本日はお集まりいただきありがとうございます!」


「で、今日は何の話だ」


剣士が足を組みながら言う。


そして腕を組み、


「つーか、王女はこんなにオレらと絡んでて、王家的に問題はないのか?」


「王家と民の距離が近いのは、いいことですわよ」


王女が微笑む。


「それでも、家老連中はいい顔しねえだろ?」


「わたくしの望む、王家と民の在り方ですから、

 好きに言わせておけばいいんですの」


「それに」


王女がちらりと剣士を見る。


「世の中にはもっと近い国だって、あると思いますわ」


「……」


剣士は黙った。


「では、本題に入りますわね」


王女が姿勢を正す。


「この度、王都公式アンバサダーショップが始動いたしました」


「資料店は王家公式となりましたわ」


「あ、なんか看板が変わってるのを見ました」


「もうご覧になられましたのね」


「通りすがりでしたけど、なかなか賑わってました」


「そうですわ、」


「売上は初日より好調」


「順調な滑り出しですわ」


「ちなみに」


「絵札の売上ですが、」


「特にタイチさんの絵札の売上が好調なんですの」


「え、なんでですか…」


思いもよらぬ報告に聞き返す


しかし王女の返答は


「それはよく分かりませんの」


(まさか、薬草採取のおっちゃん達が買い占めたとかじゃないよな?)


背中に嫌な汗が出てくる


「タイチすごいにゃ」


「なんにせよ素晴らしい事ですわ」


王女も素直に喜ぶ


「とにかく、公式ショップは大成功、

 あとはいかに盛り上げていけるかですわ」


「やっぱり限定なんじゃない?」


「いや、レア絵札にゃ」


「まずは三枚購入のアピールじゃろ」


みんなが口々に次の展開を言う


「あの」


タイチが口を開く。


「概念なんてどうですか?」


「概念?」


「えっと、うまく説明できないんですけど」


「ワイバーンが好きな子が」


「青い服を着て」


「ワイバーンになったつもりになるのが」


「概念、みたいな感じで」


王女はしばらく考えた。


「……なるほど」


「そのものではなく、それを形容する代わりのもの」


「タイチさんと言えばパン、みたいな感じですわね」


「…確かに…」


「タイチと言えばパンにゃ」


「名人パンと言えばタイチさんですよねぇ」


(え、そうなの?)


「人は元々偶像崇拝で神に模したものを、崇めたと聞く」


「そして神に似ても似つかぬものにも神の姿を感じていたとも聞く」


「まさに原点回帰じゃな」


エルフが言ったその言葉に


「わたくしもまだまだだと思い知らされましたわ」


「そういった方向には全く思い至りませんでしたもの」


「つまり、公式は公式で直接的な絵札やグッズを展開する」


「そして、間接的な要素を大々的にアピールする事で、みながそれと認知する」


王女は独り言を言いながら考え込む


「素晴らしい、まさに探していたもの」


そしてこちらを見て改まった顔をする。


「実は、」


「一つ懸念しておりましたことがありまして」


「公式で盛り上げることはできても」


「王都全体で取り組むのは難しいとは気づいていましたの」


「直接絡まない、絡ませづらい商売には、どうしても利が出にくい構造ですから」


「公式に絡まない方々をどうするかが課題でしたの」


「その概念という考え方であれば」


「それが全て解決できてしまいますわ!」


王女は目を輝かせる。


タイチが付け加える


「それに、公式の絵札やグッズを買えない人でも」


「気軽に楽しめるというか」


「面白いですわ」


「公式とは無縁の商売でも取り組みやすく」


「また、推し活に興味の薄い人たちも取り込みやすい」


「これは使えますわ」


そして付人に目をやる


「それでは早速、会議を行いますので」


「わたくしはこれで」


王女は部屋を出て行った


残されたバルキリーたち


「なんだったんにゃ」


「また一人で喋って出て行ったぞ」


――


帰り道。


屋台が並んでいる通りに差し掛かると


「タイチがいるにゃ!」


どの屋台にも、名人パンが並び


そこにタイチの絵札が貼ってあった


(あ、)


「どこもタイチさんがおすすめしてますねぇ」


「名人…おすすめ…」


(そっちだったか)


軒並み自分の顔がおすすめしてるのを見て、


恥ずかしくなり顔を伏せる。


そしてロリ猫が言う。


「で、」


「結局どれが本当のおすすめにゃ?」


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