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8-2 剣と、技と


練習場の中央。


「俺が行く」


騎士が一人、前へ出る。


木剣を脇へ置き、

拳を鳴らしながら近づいてくる。


格闘術にも自信があるらしい。


審判役の騎士が間に立つ。


「始め!」


来賓席から、騎士団長の声。


騎士が踏み込んできた。


次の瞬間。


騎士の体が宙を舞った。


どさり。


地面へ転がる。


「なっ!?」


騎士が慌てて立ち上がる。


見学席も少しざわついた。


「今の見たか?」


「何が起きた?」


「さあ……」


よく分からない。


相手の騎士と審判はしばらく固まっていたが、

やがて手を上げた。


「勝負あり」


次。


また次。


さらに次。


騎士達が次々と前へ出る。


結果は同じだった。


踏み込む。


宙を舞う。


終わる。


踏み込む。


転ぶ。


終わる。


踏み込む。


宙を舞う。


終わる。


見学席の空気が少しずつ変わっていく。


騎士団の最初の余裕も消えていた。


「なんなんだあれは」


「投げているようには見えないが……」


「力を入れているようにも見えない」


騎士達が小声で話している。


見学席。


王女は身を乗り出していた。


「わたくしの報告書にも

 これほどまでとは書かれていませんでしたわ」


隣で団長が腕を組みながら、


「なんなんだこいつは」


その言葉には焦りが混じっていた。


剣士は腕を組んだまま笑う。


「そりゃそうさ」


「剣聖になってから唯一、

 あ、負けたかもと思った相手だからな」


「「!!!」」


王女と団長が同時に振り向く。


剣士は平然としていた。


そして練習場。


タイチは次の相手と向き合う。


騎士が来る。


捌く。


騎士が飛ぶ。


終わる。


また次。


来る。


飛ぶ。


終わる。


それだけだった。


見学席の一角。


護身術の先生がじっと見ていた。


「素晴らしい」


ぽつりと呟く。


「あんな華奢な体で」


「また、投げた」


「しかも全然力を使ってないように見える」


「これは」


「護身術の極み!」


興奮した様子で身を乗り出す。


何が起きているのか、誰も説明できない。それでも騎士たちは、次々と宙を舞っていく。


組手は続く。


騎士達は困惑する。


団長も困惑する。


護身術の先生は評価する。


剣士だけは当然のように眺めている。


そしてタイチだけが、


やる気があるのかないのかわからない顔で次の相手を待っていた。


やがて最後の騎士が宙を舞う。


それまで騒がしかった空気が、

一瞬だけ止まる。


「そこまで」


審判役が手を上げる


よくわからないまま全員が負けた。


騎士団員達が顔を見合わせた。


誰も何が起きていたのか説明できない。


呆然とする騎士たちに、


「さて」


剣士が立ち上がる。


「このままだと、お前らの面目が立たねぇだろ」


騎士団員達が顔を見合わせる。


「タイチに勝った奴がいない以上、本来の約束は成立してねぇ」


「だが、それじゃつまらんだろ」


「お前らの中で一番腕の立つ奴、推薦してみろ」


「オレが特別に相手してやる」


ざわつく。


騎士団長が一人を指す。


「お前が行け」


指名された騎士が、前へ出る。


「お前が一番強いのか?」


剣士が問う。


「はっ、恐れながら、一番隊の隊長を務めさせていただいております」


腰の木剣を抜く。


向かい側で、剣士も同じように木剣を構えた。


「手加減はしねぇぞ」


「……はい」


互いに構える。


「始め!」


来賓席から、騎士団長の声が響く。


同時に踏み込んだ。


乾いた音が鳴る。


次の瞬間。


騎士の木剣が弾かれる。


剣士の木剣が首元で止まっていた。


「ま、参りました」


「勝負あり。」


一拍遅れて歓声が上がる。


騎士団員達も納得した様子だった。


剣聖はやはり剣聖だった。


手合わせが終わる。


王女が


「素晴らしかったですわ」


と賛辞し


団長は


「感服した」


と述べる


剣士は


「それほどでも無ぇ、鍛錬が足りて無いんじゃねーか?」


団長は頭を掻きながら


「いやはや、おっしゃる通り」


「まずは、うちの荷物持ちのタイチに勝てるように頑張れ」


そうやってタイチの頭にぽんぽんと手を乗せる


そこに一人が近づいてきた。


「あの」


「はい?」


「私、王都内で護身術を教えている者です」


「先ほどの技術について

 お聞きしてもよろしいでしょうか」


「技術…ですか?」


「はい」


護身術の先生は真剣だった。


「どこでその技を?」


「え」


(…地球とは言えないよなぁ)


「え、あの、昔じいちゃんに」


「なんと」


「おじいさまから」


「素晴らしいです」


護身術の先生が言う。

「あんな体格差でも」


「相手に触らせる前に終わっているように見える」


「はあ」


「護身術の理想の形を見させていただきました」


「そうなんですか」


「ぜひ、お時間がある時にご教授願えませんか?」


「でも、じいちゃんには一度も勝てませんでしたよ」


「「「「!!!」」」」


そこに居た誰もが唖然とする。


「なんだよタイチのジジイ、バケモノかよ」


剣士がポツリと呟いた。


少し離れた場所。


剣姫は黙っていた。


全てが終わっているのに、

まだ練習場の中央を見ている。


そして呟く。


「剣聖には…まだ遠く…及ばないな」


――


タイチは剣士たちと王城を後にする。


「いやー面白かったな!」


「面白く無いですよ、突然無茶振りされて」


「でも全員倒してたじゃねーか」


「だってみんな真正面から突っ込んでくるから」


「確かに戦い方だけは礼儀正しかったな」


剣士が笑う。

「何にせよ、上出来だ」


またタイチの頭をぽんぽんと叩く


「そうだにゃ」


ロリ猫は自信満々に言う。

「ウチの予想通りにゃ」


タイチも思わず笑ってしまう


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