8-1 騎士団と、剣聖と
朝、薬草採取から帰ってくると
剣士が起きて朝食を食っていた
(珍しいこともあるもんだ)
「タイチぃ待ってたぜ」
「な、何をですか?」
何かやらかしたのか不安になりながら聞く
「早速通達が来た」
「なんの?」
「騎士団だよ騎士団」
「王女のやつがすぐに手を回してくれたみたいで」
剣士が王女と交わした騎士団との手合わせの返事が来たらしい。
「そんなのってすぐ決まるもんなんですか?」
「昨日の晩お前がいない間に使者が来て」
「ご希望の日時をとか言うもんだから」
「明日って返事してたら」
「さっきまた使者が来てな」
「今日行けるらしいんだよ」
(酷いリクエストだ)
「それでもよく騎士団側がOK出しましたね」
「なんか、昨日の式典の明け休みで」
「今日は業務が入ってなかったらしい」
(あああ、せっかくの休日を…)
そこにロリ猫が起きてくる
「朝は弱いけど、うっすら聞かせてもらったにゃ」
とのそのそと着替え始める
「さ!タイチ行くぞ!準備しろ!」
(準備するのはあなた達です)
――
王城の練習場
練習場と言っても階段状の客席があり、
長方形の闘技場と言った造りだった
すでに騎士団は集まっており、数人の貴族らしき見学者も居た
そして王女が姿を現す
「本日はようこそいらっしゃいました」
「騎士団以外にも剣姫様、王家の剣術指南役、
女性貴族向けの護身術を教えている者たちも見学しております」
王女が席に座ると、老齢の騎士団長が挨拶を始める
「騎士団は軍部とは異なり――」
「騎士団には数百年の歴史が――」
「現在に至るまで――」
「騎士団は日々技術向上に努め――」
「本日は剣聖様のご厚意もあり――」
長々と騎士団の話を語る
「長ぇな」
剣士がぼそりと呟く
「――それでは剣聖と手合わせしたい者は手を挙げ、その意を示せ」
一斉に手を挙げる
「はめられた」
剣士が言う
「なんで?」
「オレは騎士団の一番強いやつと戦えればそれで良かったんだよ」
「これだと全員相手にしなきゃならん」
「なるほど」
「だからタイチお前行ってこい」
「え?」
剣士が騎士団に向き合い叫ぶ
「相手するのは構わん」
「だがオレは曲がりなりにも剣聖」
「技術の未熟な者に手加減はできん」
「まずは、うちの荷物持ちのタイチと手合わせしてもらって、
それなりの技量があると認められたものだけが、
オレとの手合わせの権利を得る」
「それでどうだ?」
騎士団の面々がざわつく
「荷物持ち…だと」
「それはさすがに我らを舐めすぎでは無いのか」
「いや、バルキリーの荷物持ちだぞ」
「もしかしたら、すごく強いのかも」
「まったく、強そうに見えないが」
「確かに」
好き放題言う
すると血気盛んな騎士団の一人が声を上げる
「おいおい、俺は剣聖と手合わせできるって言うから
休日返上でここに来てるんだ」
剣士の眉がぴくりと動く
「荷物持ちだかなんだか知らねーが、そんなへなちょこ、
俺らの相手になるかよ」
剣士の体が、少し震えている
「ほう、面白いことを言う」
「オレが、この剣聖が認めている、この荷物持ちのタイチが気に入らんと?」
(荷物持ちって言うから、ざわつくのでは?)
「タイチ」
ロリ猫が割り込むように口を開く
「やっておやりにゃさい」
「あ、てめ、オレが言おうと思ったこと言うなよ」
ロリ猫はぺろっと舌を出す
しかし、騎士団はざわついたまま、納得がいかない様子を醸し出している
すると王女が立ち上がり
「いいですわ」
「剣聖の言い分ももっとも」
「荷物持ちタイチとの予選を認めますわ」
「勝者の報酬は剣聖への挑戦権」
「これでよろしくって?」
「ああ、それでいい」
(いや、僕に決定権はないんですか?)
騎士団長も渋々納得した様子で
「王女殿下のご意向ならば仕方ありますまい」
勝手に決まっていく話に
タイチが口を開く
「あ、でも僕は剣を使えません」
「なので素手でお願いします」
ここでまた騎士団がざわつく
見学席もざわつく
「だそうですわ、騎士団は構いませんか?」
「我が騎士団は、剣技だけでなく日々の鍛錬で格闘術も行なっております」
「問題ありません」
「よろしい」
そして練習場の真ん中に押しやられる
(まぁ負けても剣士さんが相手するし…)




