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7-12 月夜と、それぞれの形と


宿の夜。


「またあいつ出てったわよ」


「あー今日は月夜か…」


「ウチのタイチをたぶらかしてる女はどこのどいつにゃ」


「つけていこうかしら」


「やめとけ」


「なんでよみんなも、知りたくないの?」


「本人が言わない事を知る必要あるか?」


「気になる」


「お前はタイチが好きなんだな」


「なんでその発想になるのよ」


「じゃあ嫌いなのか?」


「そう言うわけでもないけど」


「ウチは好きだにゃ」


「わたしも好きですよぅ」


「我も…」


「うーん、好きなのかなぁ」


「まあ、そっと見守るのもひとつの愛の形じゃよ」


「そうか、じゃあ見守ってくる」


「そう言う事じゃない」


「どう言うことよ」


――


スマホを取り出す


タダシからの通知が来る。


[また気づいたら連絡してくれ]


確認して通話ボタンを押した。


何回かの呼び出し音の後


「おう、すまんちょっと、立て込んでた」


「通話してて大丈夫なのか?」


「ああ、大丈夫だよ」


「良かった」


「今日は?」


「あ、三つだ、多分お祭りじゃない三つ」


――


王都でのグッズ関連の話をする。


以前タダシに教わった三枚売る商法。


保存用。観賞用。布教用。


よく分からないまま王女に話したら、


やたらと反応が良かったことを伝える。


「だから言っただろ」


「ほんとよく分からんのだけど」


「まぁ俺もよく分からん」


「タダシも分からんのか」


「でな、推し活にはまだ上があってだな」


「まだ上があるのか」


タダシがそのさらに上の話をする。


「それは"概念"。」


「ガイネン?何それ」


「なんて言うかな、色とかそんなん」


「どう言うこと?」


「タイチ、ヒーローもの好きだったろ」


「好きだ、リーダーが一番好きだった」


「あれってさリーダー赤色だろ」


「赤色だな」


「次のシリーズのリーダーも赤だろ」


「赤だな」


「じゃあさらに、その次のシリーズ始まったら赤色のキャラは?」


「そりゃ赤だからリーダーだろ?」


「概念て簡単に言うとそう言うことなんだよ」


「え、どう言うこと?」


「赤色見たらリーダー思い出すだろ」


「思い出す」


「つまり、リーダーの概念は赤色って事だ」


「え、概念て色なの?」


「まあ、色もあるって話」


「え、でも、それってキャラ関係なくない?」


「そう、関係ないけど、タイチだけが赤を見てリーダーと思う」


「公式がこの人のイメージカラーはこれですよってやると、」


「その人を好きな人はその色のものを選んだり、その色を身につけたりする。」


「あー、分かるような分からんような」


「で、概念て色だけじゃなくて」


「その人の持ち物とか好きな食べ物でも概念」


「え、じゃあ、ほんとにキャラ関係ないんだ」


「これの強みは権利を持ってなくても商品が売れる」


「国の商売が全体的にうまく行くようになる」


「それっぽく言うと経済が回る」


「あ、それっぽくなく簡単めでお願い」


二人で笑う


途中タダシが咳き込む


「どうした、体調悪いのか?」


「ちょっとな」


「悪かった通話切るか?」


「いや大丈夫大丈夫、笑いすぎてむせただけ」


「ならいいんだけど」


――


「しかし、これで通話も8回、いや7回目か」


タダシがそんな事を言う。


「そんなに話してたっけ?」


「そんなに、話してるよ」


「なんかさ、いろんな出来事がありすぎて、

 気づいたら、月が出てて」


「いいことだよ、毎日が充実してるんだな、」


「タダシは充実してないのか?」


「してるよ、毎日毎日新しいこと勉強してて充実してる」


「うわぁ俺には無理だ」


「俺にはそれが合ってるってだけだよ」


「ってか、そんなに通話してんのになんも進展ないな」


「いや、こっちはそれなりに進展してるよ」


「なにそれ」


「いや、お前すぐ無茶するから言わない」


「なんだよ教えろよ」


「却下」


即答だった。


「そう言えばこっちもステータスで分かったんだけど――」


「なんだ進展してるんじゃないか!?」


少し食い気味の、タダシ


「読めない文字でわかるとこがあった」


「うんうん、何々!?」


「俺は"男"って書いてあった」


しばらく沈黙。


「……」


「……」


「それだけ?」


「それだけ」


「なんだそれ」


「いや、読めなかったんだから大進展だろ」


「まぁ、そうなんだけど、そうなんだけどさ」


納得したような、


していないような声だった。


「あとさ、ワイバーン見た」


「ワイバーン!?」


「そういうのを聞きたいんだよ」


「そうなの?」


「そりゃそうだよ、推しとか概念とかちっとも異世界って感じがしない」


「俺にしてみたら推し活なんか異世界の文化なんだけどなぁ」


「で、ワイバーンてアレだろ空飛ぶ竜の」


「そうそうその空飛ぶ竜のアレ」


「で、どうだったんだよ?」


「投げた」


「え?いや、なんか、こう、他に」


「美味かった」


「いや、そうじゃなくて、そうか、美味いのか」


「こっちにある焼き鳥とか唐揚げの原材料だって騙された」


「そうか…騙されたか…」


――


その後も、


特に身のある話もなく


どうでもいい話をしながら通話は終わった。

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