7-11 国家事業と、限定配布
式典も終わり、
国王が退席し、
王女や貴族も退席する。
しかし群衆は残っている。
そして群衆の後方には夥しい数の衛兵たちが並ぶ。
しばらくして壇上に係が立ち、
集まった群衆へ呼びかける。
「本日はお集まりいただきありがとうございました」
「事前に告知しておりました
会場限定王女殿下の絵札はこのあとすぐに
パルテール後方の特設テントにて配布予定になります」
「なお、本日限定衣装の剣聖と剣姫の絵札もそちらで販売されます」
「枚数は十分にご用意しております、走らず、騒がず――」
群衆が一斉に後方へと動き出す。
すると衛兵たちが隊列を組み、
群衆の流れを制する。
「順路を守るように!」
「押さないように!」
「走らないように!」
その様子に、エルフが呆れたように言う。
「そんな、告知をしておったとはほんとに食えん王女よの」
娘が声を張り上げる。
「ぼーっとしてないでこっち手伝ってよ!」
混雑ではぐれた迷子の相手をする娘。
「わ、わかっとるわい」
エルフが不安そうな子供に
「誰と来たか言えるかの?」
と声をかける。
娘も、
「パパやママは分かるかな?」
すると迷子は聖女を指差し、
「こっちのお姉ちゃんがいい」
聖女の方に行く。
娘が舌打ちする。
「何よそれ」
――
護衛終了後の控え室。
「約束通りあの服を着たんだから、
王国の騎士団と手合わせさせろ」
(いつの間にそんな約束を)
王女に詰め寄りながら外に出て行く剣士。
剣姫と二人放置で気まずい。
「あ、えっと、その節はどうも」
「…何が?」
「前に、その、森で、介抱してもらって」
「こっちが…斬りつけたのに?」
「…そうでした」
「…面白いね」
「何がですか?」
「殺そうと思ったのにね…」
と笑みを浮かべる。
(え、)
そんな会話が続くはずもなく、
再び沈黙。
王女と剣士が戻ってくる。
剣士が満足そうな顔をしているので、
話はついたらしい。
そこに絵札配布が終わり、
控え室へ戻ってきたバルキリーたち。
一気に控え室が賑やかになる。
「あやつら、いつまでも湧いてきおって」
エルフが額を押さえながら言う。
「子供たちがずっと追いかけてきてぇ」
聖女が疲れたように椅子へ腰掛ける。
ロリ猫はお尻を気にしながら、
「ウチなんて尻尾を触られ放題の大安売りだったにゃ!」
それぞれが、次々と愚痴を言う。
魔法使いは肩を落とし、
「我は……誰にも気づかれず……」
「「「「あぁ…」」」」
ロリ猫は机を叩き、
「大体、聞いてた護衛の話と全然違うにゃ!」
娘が勢いよく頷く。
「ホントそれ!」
その様子に、
王女は小さくため息をついた。
「わたくしもあんな餌で民衆を釣るなんて不本意ですわ」
そう言いながらも、その表情に迷いはない。
「でも、隠謀や思惑の渦巻く王都では、まず民衆の目を向けさせることが必要ですの」
「わたくしのような若輩者が、
注目してもらうには、あの方法が一番早かったのですわ」
「この国家事業がどれだけ有益なものなのか、
いち早く多方面に知らしめる事が先決ですの」
そして王女は目元に指を添え、
「わたくしだって、趣味に走…、好き好んでお姉様にあんな格好をさせたわけではありませんわ」
涙を拭うような仕草を見せた。
ふと、付き人を見ると白い目で王女を見つめていた。
(好き好んでやったんだ)
「お姉様方にもご迷惑をおかけしましたわ」
王女はバルキリーにねぎらいの言葉をかける。
「あんなのあるなら、先に言ってくれてれば、
もっと、やりようがあったのに」
と娘が言う。
すると王女は、
娘に近づき囁く。
「これからお姉様方は公式アンバサダーとして活動が予想されますわ」
「今後もあのような事はあるでしょう」
「剣姫様にも公式アンバサダーをお願いする予定なので」
「また、あの組み合わせの仕事もあるかもですわ」
「えっ!!!」
そして限定絵札を娘に手渡し、
「これは報酬とは別ですがお納めくださいですわ」
「…」
「ま、まぁ協力しても、いいかな」
(チョロいな)
――
宿に戻る。
剣士がソファーに勢いよく座り、
「なんか長い1日だったなー」
「しかしまさか、あの森の迷子が王女だとは」
「迷子で不安な時に」
「救いの手を差し伸べられたら」
「まさに…救世主」
「王女が剣士推しなのも頷ける」
「え、そうなのか?」
「え、気づいてないの?」
(え、そうなの?)
そんなやり取りにロリ猫が割り込んで剣士に言う。
「それはそうとちょっとそこへ座るにゃ」
「座ってるが?」
「キミはウチになんて言ってたかにゃ?」
「なんか言ってたっけ?」
「言ったにゃ」
「なんだっけ」
「忘れるなんて最低だ!にゃ」
「確かにウチは物覚えが悪いにゃ」
「そこを突かれると思わず信じてしまうにゃ」
「だからウチが忘れてたと思ったにゃ」
「でも実際はどうだったんにゃ?」
剣士は軽く手を上げて、
「あー、それはすまん謝るごめん」
「いーや許さんにゃ」
「ウチの心は著しく傷つけられたにゃ!」
「あー、今度、何か甘いものを奢るから許せ」
「許すにゃ」
(こっちもチョロいな)




