7-8 絵札と、三枚と
「では」
王女が資料を閉じる。
付人たちも一息ついた。
内容自体はそこまで難しくない。
剣士は王女の護衛と警備。
バルキリーは離れたところで周辺の警備
その辺りだ。
「質問はありますかしら?」
「特にない、現場を見てからでないと」
剣士は無愛想に言う
「そうですわね」
王女は頷いた。
「あー、後なこいつは人数にカウントしないでくれ」
娘を指差す
「こいつは素人だ頭数に入れられると困る」
一瞬ムッとする娘
しかし、
「ただ、こいつは頭がいい、俺は今回別行動だから」
「バルキリー側の補佐として使いたい」
「治癒魔法も使えるし何かの時は役には立つだろう」
「お姉さま…」
潤んだ目で剣士を見つめる
「あぁやっぱりお姉さまはあたしのこと分かってくれてる…」
「別行動だからな?」
「おい?聞いてるのか?」
話を聞かない娘を無視して王女に確認する
「それで構わないか?」
「構いませんわ」
「じゃあ決まりだ。よろしく頼むぜ」
「こちらこそですわ」
付人が別の資料を持ってくる。
「ここからは別の話ですわ」
「前回お話ししたアンバサダーの件についてですわ」
「まだ続いてたんですか」
「もちろんですわ!」
即答だった。
「むしろこれからですの!」
王女は胸を張った。
「王都の文化として育てる以上、中途半端にはしませんもの」
そう言って机に並べられたのは絵札だった。
以前見たものより豪華だ。
印刷も綺麗で、紙の質も違う
「これまでの絵札は、冒険者資料店や職人が独自に作っていたものですの。
ですが、人気のある冒険者の絵札は偽物も多く、質もばらばらでしたわ」
「これからは王家認定の工房での制作、そして生産を行いますわ」
ロリ猫が一枚取る。
裏返すと裏には紋章が刻印してある
「これはなんにゃ?」
「偽造防止の王家の刻印ですわ」
王女がそう言うと、付人が補足する
「王家の紋章の偽造は死罪ですから」
「王家監修品の扱いとして管理します」
「品質管理も行い、流通に関しても王家が認可した商会を通します」
「え、じゃあ、あの資料店はどう――」
「買い取りましたわ」
「え?」
「わたくしが店ごと買い取りましたわ」
「王都の資料店はこれから公式資料店となりますわ」
「あの店に絵札を卸していた工房も絵師たちごと買い取りましたわ」
(行動早くない?)
「なるほどにゃ」
ロリ猫が頷く。
「そして今後は種類を増やしていきますの」
王女が続ける。
「通常版」
「祝祭版、季節限定版、王都限定版」
「お姉さま特別版」
(ん?)
「誰が買うんだ」
剣士が即座に言う。
「もちろんわたくしは買いますわ」
王女は真顔だった。
慣れているのか付人は遠い目をする。
「種類を増やせば売上も伸びますの」
「そうとも限らないにゃ」
ロリ猫が口を挟む。
「在庫管理も増えるにゃ」
「そこは工夫しますわ」
しばらく聞いていたが、
「同じの何枚も持つ人とかいないんですか?」
全員の動きが止まる。
王女が首を傾げた。
「何枚も?」
「はい」
「なぜですの?」
「保存用とか」
「観賞用とか」
「人に渡す…布教用?…とか」
沈黙。
王女が立ち上がった。
「あなた今なんておっしゃいましたの!?」
「あ、えっと、保存用と観賞用、あと、人に渡す用?」
「同じ絵札を複数買う理由を作る、ということですのね」
「素晴らしいですわ!!」
机が揺れた。
「その発想はありませんでしたわ!」
「大切に保管するための一枚」
「絵札を愛でるための一枚」
「そして、」
「推しの素晴らしさを他者へ伝えるための一枚!」
「いえ、推しの魅力を広めるための一枚!」
「なんという発想!」
「いや、別に――」
「素晴らしいですわ!」
「保存!」
「観賞!」
「布教!」
「同じ絵札でも意味が違いますの!」
ロリ猫が途中で手を上げた。
「質問にゃ」
全員がそちらを見る。
「それって同じ客が何枚も買うって話にゃ?」
「そうですわ」
「つまり、」
エルフが口を開く
「種類を増やさなくても売上が伸びるって事じゃな」
「絵札の種類を増やせばその分コストはかかる」
「しかし同じ絵札の枚数を増やすならコストは抑えられる」
ロリ猫が、頷く。
「これは強いにゃ。
買う理由が三つあるなら、財布の紐も三回緩むにゃ」
(…言い方)
付人たちもそこで納得する。
「購入枚数増加、販売効率向上」
「贈答需要も期待できます」
王女も別方向で盛り上がっていた。
「推し文化の発展にも!」
「殿下」
「分かっておりますわ」
付人に諭され、気を取り直すも
それでも王女は嬉しそうだった。




