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1-7A 賑わう街と、焼きヘンネ


昨日より騒がしい街をよそ目に、

ギルドで薬草採取の依頼を受け、昼過ぎに帰ってきた。


昨日と同じように受付嬢は一瞬ギョッとしたが、

その後は事務的に報酬の銀貨五枚を出してきた。


外に出ると、通りには人が多く、

あちこちで声が飛び交っている。


店先には布が張られ、

即席の屋台が並び始めていた。


(……お祭り、か)


朝に女将が言っていた、

ツングルスクの祭り。


詳しいことは分からないが、

街全体が浮き足立っているのは伝わってくる。


ギルドでの用事を終え、

特にすることもないまま、

まっすぐ宿に戻るつもりで歩き出す。


――


香ばしい匂いが、鼻を突いた。


焼き物の匂いだ。


(……)


一瞬だけ足が止まる。


(……帰るつもりだったんだけどな)


視線を向けると、

串に刺さった肉のようなものを

炭火で焼いている屋台があった。


「焼きヘンネだよー!」


(……ヘンネ?)


よく分からないが、

匂いからして旨そうなのは間違いない。


少しだけ迷って、

結局、屋台の前で足を止めた。


「一本、いくらですか?」


「銅貨三枚だよ」


「じゃあ、二本ください」


銀貨を一枚、差し出す。


店主はそれを受け取り、

銅貨を六枚と二本の焼きヘンネを返してきた。


(……?)


一瞬、間が空いた。


「えっと……多くないですか?」


店主は気にした様子もなく笑う。


「お兄さん、見ない顔だからね。サービスだよ」


(……そういうものか)


深く考えず、焼きヘンネを受け取る。


一口、齧る。


(……うま)


塩気と肉にかかったタレがちょうどよく、

噛むたびに肉の旨味が広がる。


空気が、少しだけ軽い。


(……悪くないな)


異世界に来てから、

ずっと張り詰めていた気がする。


こういう時間があるだけで、

気持ちが少し戻ってくる。


いや、細かいことはいい。


歩きながら、串を片手に街を眺める。


笑っている人。

酒を飲んでいる人。

楽器を鳴らしている人。


日が傾き、

空の色が少しずつ変わっていく。


気づけば、通りの様子はどこか落ち着いていた。


屋台の明かりが増え、

街は昼とは別の顔を見せ始めていた。


(……そろそろ帰るか)


そう思い、来た道を引き返した。


空を見上げると、

月が出ていた。

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