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1-6 初めての仕事と、弱肉弱肉


森は、思ったより静かだった。


ギルドでもらった地図の最初の丸印。


森の入り口辺りでは、

同じように籠を持った子供たちや老人たちが、

腰を落として薬草を摘んでいる。


(ここは激戦区だな)


そう思いながら、

その様子を横目に木々の間を抜け、

森の奥へと進んだ。

地図を頼りに、

さらに奥の丸印を目指す。


途中、大きな動物の死骸に出くわした。

すでに日が経っているようで、

肉はほとんど残っていない。


ところどころ骨が覗いている。


何かに貪り食われた跡。


改めて思い出す。


この世界は、弱肉強食だ。


その光景を前にして、

ふと、向こうに残してきたウニのことが気にかかった。


ウニは、茶虎の子猫だった。

公園の茂みの中で、

痩せ細って、今にも消えそうに震えていた。


その周囲を、

カラスがぴょんぴょんと跳ねながら、

近づいたり、離れたりしていた。


弱肉強食の世の中だとは思った。

だが、目の前の子猫を、

見捨てることはできなかった。


助けようとして、

改めてカラスを見ると、

羽に釣り糸のようなものが絡まっている。


飛べないらしい。


「なんだ、お前も弱肉の方だったのか」


そう思って、弱肉弱肉同士、

一匹と一羽を連れて帰った。


右手に子猫を抱え、

左手にはカラスをぶら下げた姿は、

さぞかしカオスだったに違いない。


カラスの方は、

釣り糸を切ってやり、

羽が治るまでベランダに置いて世話をした。


なんでも食べたが、

特にマヨネーズをかけた唐揚げが好きなようだった。


黒い羽から、

コクウと呼ぶことにした。


じきに飛べるようになり、

いつのまにか居なくなった。


子猫は、うちの新しい家族になった。

茶虎の毛色が、なんだか雲丹みたいな色をしていたから、

名前はウニにした。


元気になってくれてよかった。


ウニはちゃんとご飯を食べれているのだろうか。

タダシが面倒を見てくれているといいんだけど。


そんなことを考えているうちに、

地図の印の場所に着いた。


足元には、

見覚えのある形の草がいくつか生えている。


(……これだよな)


葉の形。

茎の色。


ギルドで説明された特徴と一致している。


一本、摘む。

特に、何も起きない。


(……よし)


同じものを、

淡々と集めていく。


思ったより見つかる。

不思議なほど、迷わない。


籠は、

少しずつ重くなっていった。


気づけば、陽はまだ高い。


籠の中身を確認する。

十分だ。


(……帰ろう)


まだ森の入り口では、

皆が薬草を摘んでいる。


一人の老人が、

こちらを見て声をかけてきた。


「おや、兄ちゃん、もう帰るのかい?」


「ええ、まあ」


軽く会釈をして、

その場を後にした。


――


ギルドのカウンターで籠を渡すと、

受付嬢が少し驚いたような顔をした。


「もう帰ってきたんですか?」


中身を確認する。


「……一応、規定の量はありますね」


最初は驚いていたが、

すぐに表情を切り替え、

淡々と職務をこなす。


報酬は、銀貨五枚。


「お疲れさまでした」

「また明日も、無理のない範囲で」


「はい」


外に出ると、

昼過ぎだった。


――


特にすることもなく、

早々に宿へ戻る。


扉を開けると、

女将が声をかけてきた。


「おや、早いおかえりだね。

 うまくいかなかったのかい?」


「いえ、ちゃんと終わらせてきました」


「おや、意外に優秀なんだね。

 今日はまだ風呂を沸かしてないから、

 表の井戸で汚れを落としな!」


井戸の冷たい水で体を拭き、

戻ると夕食が用意されていた。


「早く帰ってくると思わなかったから、

 有り合わせで悪いけど、

 量はサービスしといたから!」


朝から何も食べていなかった。

あっという間に平らげる。


「ごちそうさまでした」


女将は、

うんうんと頷いた。


部屋に戻ってベッドに入ると、

すぐに眠りに落ちてしまった。


――


「ーーーーーーーー!!」


変な鳥の声で目が覚めた。


だが、

今日はいつもと様子が違った。


朝から街に人通りがあり、

食堂に降りると、

女将が忙しそうに料理をしている。


「おはよう、早いね。

 朝ごはんは、その辺の皿のを

 勝手に食べていいよ!」


「何かあるんですか?」


「あー、ツングルスクが近いからね。

 それのお祭りの準備なんだよ。

 だから、うちも店前に屋台を出すのさ」


お祭りか。


ツングルスクが何かは分からないけど。


お祭りで屋台が出るのはどこの世界でも一緒なんだな。


そう思いながら、

並べられた皿から

ハムのようなものとパンを取り、

朝食を済ませた。


今日も、ギルドへ向かう。

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