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1-5 朝と、街の音と、最低ランク


「ーーーーーーーー!!」


なんだかよく分からない、変な鳥の声で目が覚めた。


「……なんだ……?」


甲高くて、間の抜けた鳴き声。

聞いたことがあるような、ないような。


天井を見上げながら、しばらくぼんやりする。


(……朝、か)


体を起こすと、少しだけだるい。

寝不足というほどじゃないのに、

妙な疲れが残っている。


(昨日、変なことあったしな……)


白黒の世界。

動かなかった身体。

息ができなかった感覚。


思い出して、軽く頭を振った。


簡単に身支度を整え、一階に降りる。


階段を下りると、

食堂はもう朝の空気になっていた。


簡単な朝食を済ませる。


他の客の片付けをしている女将と目が合う。


「行ってきます」


「気をつけてな」


外に出る。


今日、やることは一つ。


ギルドだ。


――


朝の街は、昨夜よりもはっきりして見えた。

商人が店を開き、冒険者らしき人影が通りを行き交う。


看板。

壁の掲示。

あちこちに文字。


(……やっぱり、読めない)


分からない、という事実が、

昨日よりも現実として胸に残る。


それでも、足は自然とギルドの方向へ向いていた。


剣と盾の紋章。

昨日と同じ建物。


扉を押す。


――


中は、朝だというのに人が多い。

酒の匂いは薄れ、代わりに鉄と革の匂いが強い。


サインプレートの置かれたカウンターに向かう。


昨日の受付嬢が、こちらを見た。


「おはようございますタイチさん」


(……ちゃんと覚えられてる)


「おはようございます」


受付嬢は事務的に頷く。


「仮登録の件ですね」


「はい」


彼女は、昨日渡した札を確認し、手元の帳面に何かを書き込む。


「現在のランクは最低ランクですので、受けられる依頼は限られてます。」


淡々とした声。

予想通りだった。


「最初は皆さんそうです」


続けて、数枚の紙を取り出す。

当然、文字は読めない。


「こちらが、初心者向けの依頼です」


カウンターの横を示す。


依頼掲示板。

紙が何枚も貼られている。


(……読めないけど)


「内容は口頭で説明できます」

「危険度の低いものをおすすめします」


(……助かる)


「まずは、薬草採取や簡単な運搬ですね」


彼女はそう言って、いくつか候補を挙げた。


(戦え、とは言われないんだな)


少しだけ、ほっとする。


受付嬢は顔を上げて、


「運搬は街の地理に詳しくないと少し難しいかもしれません」


と、こちらを見る。


昨日来たばかりだ。選択の余地はない。


「薬草採取でお願いします」


「分かりました」


彼女は手早く手続きを進める。


地図と籠を出し、


「では、こちらの籠いっぱいになるまで薬草を採取してきてください」


「地図の丸印は、ギルドが安全と判断している採取ポイントです。

 丸印以外でも薬草は採取できますが、命の保証は出来かねます。

 決して無理はしないように」


その言葉が、昨日の「お大事に」と重なった。


――


ギルドを出る。


朝の光が、街を照らしている。


(……少しずつだ)


昨日は、生き延びるだけで精一杯だった。

今日は、ほんの一歩だけ前に進んだ気がする。


そう思いながら、

地図を頼りに歩き出した。

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